2018年02月16日 13:23 弁護士ドットコム
名物の「立て看板」(タテカン)の撤去や、100年以上の歴史がある「吉田寮」からの退去など、自由な学風で知られる京都大学が「管理強化」でゆれている。この問題について考えるシンポジウムが2月13日、同文学部(左京区吉田本町)で開かれた。吉田寮生や現役教員らが登壇。「京大の体質がブラック企業化している」など、含蓄に富んだ発言も飛び出し、終始熱気にあふれた。
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シンポではまず、吉田寮の立ち退き問題が俎上にのった。大学側は昨年12月、2018年9月末までに退去するよう寮生に通知した。吉田寮の自治会は、この通知について反発を強めている。寮生たちが問題にしているのは次のような点だ。
(1)一方的に退去の通知があったこと
(2)今年3月には、科目履修生や留学生、研究生らを非正規学生として退去させること
(3)退去の根拠「耐震措置」の対象外である新棟(1913年建築の「旧棟」とは別に、2015年につくられた新しい棟)の寮生も退去しなくてはならないこと
大学側は、旧棟からの退去理由を「老朽化で安全が保てないこと」、新棟からの退去理由を「誰が住んでいるか把握できないため」としている。吉田寮で演劇活動をおこなっている劇団員は「自由な活動の場所がなくなる」と危機感をあらわにした。
京都大学といえば、名物の立て看板が学外からも見えるところに並べられている。だが、京都市の景観条例に反しているとして、通行人の安全の観点から行政指導が強化された。こうした状況を受けて、大学側も昨年12月、これまで自由に設置できた場所を限定する規定を公表している。
しかし、この規定を決めるプロセスが明確ではなかったという。駒込武・京都大学教育学研究科教授は、このような大学側の管理強化について、「教員も管理されつつある」と打ち明けた。さらに、教員の削減や事務職員の非正規化により、現場が不安定な立場で疲弊していることも指摘した。
駒込氏によると、本来最大限に尊重されるべき「大学の自治」についても、トップダウン方式で決定される膨大な決め事のうちの一つに過ぎなくなっているという。あるべき意思決定プロセスが、疲弊した大学の中で、無し崩し的に骨抜き状態にあり、まさに「ブラック企業化しつつある」というのだ。
シンポの質疑応答では、吉田寮生から「管理強化がすすむなら、どう訴えていけばいいのか?」という発言があがると、法学研究科の学生から「情報開示請求をおこなうなど、決定プロセスを明らかにしていくべきだ」という意見が飛び出た。
すでに大学は春休み期間に入っているにもかかわらず、会場には400人以上が詰めかけた。シンポ開催について、事前報道もされていたので、学外からの参加者も少なくなかった。登壇した学生も「普段の授業でも、こんなに人が集まることはほとんどない」と驚いた表情を浮かべていた。
(弁護士ドットコムニュース)