2018年02月16日 10:22 弁護士ドットコム
援助してもらったお金は、返さなくてはいけないのか。シングルマザーの女性が、「お金に困った時に出会い系で助けて」もらった男性と別れようとしたところ、「彼女だからあげた。別れるなら一括で返せ」と言われたと、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。
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この女性によれば、妻子があるこの男性は「いわゆる売春のような形」で援助をしてくれたほか、「家賃がきつかったので8万ほど助けて」くれたそうだ。この際「お金がないからいつ返せるか分からないと話したら、彼女だから貸す訳ではない、あげるとLINEがありました」。
しかし、別れようとしたところ、冒頭のように揉めたという。一方は「あげた」と思い、一方は「貸した」と考えている。贈与なのか、借金なのか、どのように証明すれば良いのか。白土文也弁護士に聞いた。
「結論から言えば、今回のケースは、借金ではなく、贈与と考えられます。男性の請求は認められないでしょう」
法的には、なぜそのように言えるのか。
「この男性は、相談者の女性に対する『貸付金』であると主張して金銭の返還を求めています。しかし、男性の請求が認められるためには、法的には、女性との間で『金銭消費貸借契約』が成立している必要があります」
金銭消費貸借契約が成立していると言うためには、何が必要か。
「民法上、金銭消費貸借契約が成立するためには、(1)返還の約束と(2)金銭の授受が必要とされています。今回のケースでは『(1)返還の約束』の有無が問題になります。
まず、他人にお金を貸す場合は、借用書等の書面を交わすのが通常と考えられますので、書面がないという事実からは、返還の約束はなかったと認定される可能性が高いと思います」
親子や親しい恋人との間では、書面を交わさずに貸付をするケースもありそうだ。
「親子など一定の関係にある当事者間においては、貸付の趣旨であっても書面を交わさないことも多く、判例上も、契約書以外の事実から、返還の約束を認定しているケースがあります。具体的には、人間関係、金銭の授受に至る経緯、動機などの事実から個別具体的に判断されます」
今回のケースでは、贈与と言えるのか。
「出会い系で売春のような形で援助をしてもらったのがきっかけであること、家賃8万円を援助してもらった際、男性から『彼女だから貸す訳ではない、あげる』とLINEがあったこと、別れた際に初めて返還を求められたことなどからすれば、継続的な男女関係を維持することを期待した援助、すわなち贈与であり、返還の約束は認められないと考えられます。
借金ではなく、贈与と考えられ、男性の請求は認められないでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
白土 文也(しらと・ぶんや)弁護士
第二東京弁護士会所属。平成17年、司法試験合格。合格後、ベンチャー企業で2年間勤務。司法修習を経て都内法律事務所に勤務。中国上海市の法律事務所で1年間の研修の後、平成26年、白土文也法律事務所開設。相続・遺言と中小企業法務を中心に取扱う。
事務所名:白土文也法律事務所
事務所URL:http://www.shirato-law.com/index.html