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広瀬すずが語る、“青春モノ”ではない作品の届け方 坂元裕二脚本ドラマ『anone』インタビュー

2018年02月13日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在、多くの視聴者の心を鷲掴みにしているドラマ『anone』(日本テレビ系)。波乱のストーリー展開とともに描かれるそれぞれの登場人物たちの背景に、視聴者もどんどん引き込まれている印象を受ける。


 今回、リアルサウンド映画部では、本作で主演を務める広瀬すずにインタビューを行った。「大好き」と語る坂元裕二脚本の魅力や、自身と同い年である等身大の主人公・ハリカの役作りについて語ってもらった。


参考:広瀬すず ほか写真【チェキプレゼント企画あり】


■「見てる方の年齢関係なく響くものがある」


ーーかねてから坂元裕二さん脚本の作品が好きだったそうですが、『anone』への出演が決定したとき、どんな気持ちでしたか?


広瀬すず(いか、広瀬):連続ドラマの出演自体が久しぶりで、しかも坂元さん脚本の『Mother』、『Woman』がもともと大好きだったので、「やった!」と嬉しかったです。坂元さんの脚本はセリフのやりとりが面白くて、永遠に聞いてしまいます。ドラマの本筋とは直接関係のないエピソードをただひたすら語り続ける会話のシーンでも、「あ、それたまに話す!」というような友達との何気ない会話が表現されているんですよね。『anone』にも、そのような魅力がたくさん詰め込まれていると感じます。今は舵さん(阿部サダヲ)とるい子さん(小林聡美)のやりとりが多いと思いますが、聞いていて「気持ち良いな」「ほっこりするな」という要素や、「ハッ」と心を持っていかれるような部分もある。だけど、どこか切なさや寂しさも感じます。


ーー具体的に言うと?


広瀬:1話、2話では、亜乃音(田中裕子)さんが話す言葉にハリカ自身も大切なことを気付かされていましたが、その瞬間は私自身にもかなり響くものがありました。登場人物たちが語るそれぞれの過去の話からは、視聴者の方の年齢関係なく響くものがあると思います。坂元さんが生み出す素敵なセリフは、これからの方がいっぱい出てくると思うので、私自身も楽しみにしています。


ーー自身のブログでは、第1話の感想について「わたし分からない知らない気持ちになった」と投稿されていましたね。


広瀬:具体的に気持ちを表す言葉が見つからないんですけど、あまり抱いたことがない感情が湧き上がってきて、どこか切なさがあったんです。これまで出演してきた作品では、自分が涙しているシーンを観ると、その時の気持ちが蘇ってきて、もう一度同じように泣くことが多かったんです。けど、『anone』ではそれが起こらなくて。もちろんその場面で一番心を持っていかれましたし、その感覚が全くないわけではないのですが……。あまり感じたことのない気持ちになって、自分でも驚きました。


ーー今までもそういう経験はあったのですか?


広瀬:全くなかったわけではありません。分かりやすく泣ける作品、例えば青春モノは分かりやすく気持ちが盛り上がっていくけれど、そうでない作品だと人によって見え方や答えが違うなと感じていて。『anone』も同じで、観る人によっておそらく感じ方が違うのかなって。そういう意味で、私自身は感じたことのない気持ちを抱いたので、私にはそういう届き方をしたんだなと思いました。


■「喋らなくても2人の空間を気まずいと感じたことはない」


ーーハリカと亜乃音が親子に見えるくらい、2人の微笑ましい雰囲気が印象的です。実際の現場では、田中さんとはどのようなやりとりをされているんですか?


広瀬:撮影が始まってからそこまで時間が経っているわけではないので、決して会話が多いわけではありませんが、喋らなくても2人の空間を気まずいと感じたことはないです。田中さんのなかでの亜乃音さんの存在感が、私にとってのハリカと似ているんだろうなと思っていて。変に力が入ることもなく、構えることもなく、自然にその距離感が取れているのかなと感じています。


ーー心苦しい過去を持つ主人公・ハリカを演じるにあたって、どのようなことを意識していますか?


広瀬:ハリカは自分のことを「悲しい過去がある人間です」とも思っていないし、自分の本来の悲しい記憶を思い出したからといって、まだ全てを受け入れているわけでもない。だから、私は「これからハリカがそれを思い出す瞬間はどんな時なんだろう……」と想像することが多いです。今は目の前に亜乃音さんがいて、他のことに委ねている時間があるけれど、過去を思い出した瞬間にハリカの内からどんな感情が出てくるのか、いつ「お父さん、お母さん」という言葉を発するのか……。ハリカがそういったことをどう感じるのかは、今後気になってくるポイントだと思います。


ーーこれまでも様々な作品で自身と同じ年齢の役を演じていますが、ハリカという役において、これまでと違う部分だったり、役作りで特に気をつけたりしていることはありますか。


広瀬:監督に言われたのは、ハリカは、話し方にどこか幼児性があるという部分でした。時間が止まっている過去があるから、ハリカ自身もその頃のままで止まっている面がある。語尾に「ね」と付けることや好みの靴下の柄など、どこか幼さを意識している部分はあります。それと、“興味”ではなくて、“好奇心”を意識するようにしています。何に対しても、なんとなく面白いから見にいったり気になったりする感覚を持っている。それがいろいろな事件に巻き込まれていくきっかけとなる感情なのかなと思います。また、私たちが思っている“当たり前”がすぐ側になかったから、ハリカはパジャマや枕のような些細なことに対しても、素直に嬉しさを感じる。それがハリカの素だと思うので、そういう感覚は大切にしています。


■「10代のうちに主演をやらせてもらえる作品を残せるのはありがたい」


ーー20歳の誕生日を迎える6月までは、『ラプラスの魔女』や『ちはやふる-結び-』など出演映画の公開も控えていますが、『anone』は10代最後のドラマ出演作になりますね。


広瀬:10代のうちに10代の役で、しかも主演をやらせてもらえる作品を残せることができる環境があるのはありがたいです。今まではわりと高校生役が多かったので、20歳を越えるとより幅の広い年齢の役を演じることができるようになるのかなと思うと、面白そうだな思う反面、嫌だなという気持ちもあります。10代から20代になるときって、全てが一気に広がる気がして……。まだ20歳以上の役をほとんどやったことがないから分かりませんが、大人になって振り返ってみたときに、感慨深く今を思い出したりするのかなと思うと、不思議な気持ちになります。私がこの歳でこの作品に触れるのと、何年後かにこの作品を観るのとでは、おそらくまた違った気持ちになる気がします。だからこそ、この作品は観る方一人ひとり感じ方が違うと思うので、私たちの中で生まれた“生のもの”を受け取ってもらえたら嬉しいです。


(大和田茉椰)