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赤い公園、SCANDAL、Mrs. GREEN APPLE、NCIS、凛として時雨…それぞれの“今”を感じる新作

2018年02月13日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 活動を続けるなかで、さまざまな出来事を経験し、そのたびに変化していくロックバンド。当然すべてをコントロールすることは不可能であり、“何が起きるかわからない”というドキュメント性もまた、バンドというスタイルの魅力なのだと思う。今回は2018年現在、キャリアのなかでもっともスリリングな時期を迎えているバンドの新作を紹介。赤い公園、SCANDAL、Mrs. GREEN APPLE、Nothing’s Carved In Stone、凛として時雨の“今”をぜひ感じてほしい。


(関連:SHISHAMO、ねごと、赤い公園から注目新鋭まで プレイヤー視点で見る2017年ガールズバンド


■赤い公園『赤飯』
 メジャーデビュー作『透明なのか黒なのか』(2012年2月)から最新アルバム『熱唱サマー』(2017年8月)までをまとめた、赤い公園初のベストアルバム『赤飯』。「のぞき穴」「絶対的な関係」「KOIKI」などの全シングル曲、これまでに発表された全アルバムからセレクトされた本作には、オルタナ、パンク、ファンク、ソウルといったカラフルな音楽性を自在に取り込みながらスリリングな変化/進化を続けた5年間の軌跡が詰まっている。フリーキーかつポップなソングラインティング、卓越したテクニックと破天荒な勢いを共存させたバンドグルーヴ、そして、楽曲によって表情を変える芳醇なボーカルが生み出すケミストリーはまさに唯一無二だった。2017年8月末でボーカリストの佐藤千明が脱退、3ピースバンドとして再始動した赤い公園にも大いに注目してほしい。


■SCANDAL『HONEY』
 ベストアルバム『SCANDAL』、キャリア初の47都道府県ツアーなど2017年、バンド結成10周年を駆け抜けたSCANDALから通算8作目のオリジナルアルバム『HONEY』が到着。シングル「テイクミーアウト」、デジタルシングル「恋するユニバース」を含む本作は、前作『YELLOW』に続き全曲メンバーによるオリジナル曲。性急なギターリフを軸にした「ふたり」、歌謡曲とディスコパンクが融合した「エレクトリックガール」など10曲中9曲の作曲を担当したMAMI(Gt/Vo)の覚醒ぶりがすさまじく、“シャープかつスウィートなロックバンド”としてのSCANDALのイメージを増幅させることとに成功している。メロコア、ガレージロック、ニューウェーブ、エレポップなどをナチュラルに反映させたバンドサウンドもきわめて魅力的。このバンドは明らかに新たなピークに突入している。


■Mrs.GREEN APPLE『Love me, Love you』
 EDM系ダンスミュージックと生々しいバンドサウンドを融合させた前シングル曲「WanteD! WanteD!」が配信チャートを中心にヒット、バンドシーン以外のリスナーにもアピールすることにつなげたMrs. GREEN APPLEのニューシングル『Love me,Love you』表題曲は、まるで往年のミュージカル音楽のような華々しいポップチューン。ドラマティックに展開するメロディライン、ストーリー性のあるラブリー&ブライトな歌詞、ホーンセクションを取り入れたビッグバンド風のサウンドがひとつになったこの曲は、ロックバンドの枠を完全に超え、あらゆる音楽ファンにリーチできるナンバーに仕上がっている。カップリングにはシンガーソングライターの坂口有望をフィーチャーしたソウルポップナンバー「Log (feat.坂口有望)」、卒業シーズンにぴったりのミディアムチューン「春愁」を含め、新たなチャレンジが満載。何よりもポップであることを恐れない姿勢が素晴らしい。


■Nothing’s Carved In Stone『Mirror Ocean』
 ゼロ年代前半のシーンを席捲したバンドで活躍してきた生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)、そして、当時は無名の存在だった村松拓(Vo/Gt)によって2008年に結成されたNothing’s Carved In Stone。10周年イヤーにリリースされる9枚目のオリジナルアルバム『Mirror Ocean』は、海外のエモコア、モダンヘヴィロック、ポストロックとごく自然にリンクした楽曲、個性とテクニックがせめぎ合うアンサンブル、生形のエモーショナルかつダイナミックが有機的に結びついた充実作となった。特筆すべきは表題曲「Mirror Ocean」。こんなにもスケールの大きい音をナチュラルに響かせることができるバンドは、本当に稀だと思う。2018年10月7日には初の日本武道館公演も決定。媚びず、ブレず、自分たちの感性だけを信じて進化を続けるNCISはここから、さらなる高みに向かっていくはずだ。


■凛として時雨『#5』
 ハードコア、インダストリアル、ポストロック、ノイズなどのエッセンスを振りまきながら3つの音が激しくぶつかり合い、美しくも繊細なサウンドエスケープを描き出す。1曲目の「Ultra Overcorrection」を聴いた瞬間に“凛として時雨が帰ってきた!”という歓喜が湧き上がってきた。実に5年ぶりとなるオリジナルアルバム『#5』。ここ数年はメンバー個々のソロワーク、別ユニットや別バンドでの活動が目立っていた3人だが、TK(Vo/Gt)、345(Vo/Ba)、ピエール中野(Dr)のアンサンブルはやはり別格。破壊的な衝動をリアルに伝えながら、アートフォームとしての完成度の高さ、細部にまでこだわり抜いた構築美を堪能できる、“これぞ、凛として時雨”と言いたくなる作品である。結成15周年を経て、今年は濃密な活動が期待できそうだ。(森朋之)