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不足するライブ会場、興行側に求められる工夫は? 三代目 J Soul Brothersの成功例を考察

2018年02月12日 20:52  リアルサウンド

リアルサウンド

 音楽ライブ情報サービス「LiveFans」が1月25日に発表した2017年の年間推定観客動員ランキングで、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEが1位となった。三代目 J Soul Brothersは、2016年11月から行われているドームツアー『METROPOLIZ』と、その続編となるツアー『UNKNOWN METROPOLIZ』を開催。『UNKNOWN METROPOLIZ』ツアーでは、昨年BIGBANGが記録した年間動員数歴代最多記録を更新したうえ、1ツアーでの東京ドーム公演数の最多記録(10公演)に並んだ。


参考:LDH、エイベックス、吉本興業……エンタメ系企業による社会貢献の可能性


 「LiveFans」の独自調査・集計によると、三代目 J Soul Brothersの推定動員数は1,802,976人で、1公演あたりの平均人数は48,729人。2位のBIGBANGの推定動員数1,076,500人の約1.8倍となった。この結果の直接の要因となったのは、37回という公演回数だ。2位以下のBIGBANG、関ジャニ∞、嵐などは、1公演あたりの平均人数がおよそ5万人と大きな差がないものの、公演回数はそれぞれ20回前後にとどまった。


 三代目 J Soul Brothersが公演回数を増やすことができたのは、アーティスト本人の動員力もさることながら、多くの追加公演を実現できたことも大きい。特に、開催2週間前に発表された異例とも言える東京ドームでの3公演追加は、今後のライブエンタテインメントビジネスを考える上でも注目すべきポイントだろう。


 近年、ライブエンタテインメント市場は活況を迎えている。ぴあ総研がライブ・エンタテインメント白書調査委員会からの委託を受けて実施した調査によると、2011年は3,061億円だった市場規模は、2015年には5,119億円にまで成長している。音楽リスナーの消費行動がCDなどの音源を購入することから、ライブでの体験を重視するように変わっていったことに伴い、公演数や動員数が共に増加していった結果ともいえる。


 一方で、ライブ需要の高まりに対し、首都圏を中心に音楽ライブやコンサートの会場が不足する問題も表面化している。2020年の東京五輪に向けて、数千人~数万人規模を収容できる施設の改修が相次いだことが要因だ。主催者側が大型会場をどのように確保・活用していくかは、課題の残るところである。(参考:ぴあ「ライブ会場不足問題が表面化。2016年ライブ・エンタテインメント市場は微減となるも、高水準を維持/ぴあ総研が調査結果を公表」)


 そんな状況の中、三代目 J Soul Brothersの東京ドーム公演にはいくつかの工夫が見られた。東京ドームなどを会場として利用する場合、稼働率も多く競争率も高いため、通常は半年~1年前からスケジュールを組むのだが、ご存じの通り、東京ドームなどの会場は野球の試合がメインに組まれ、ライブなどの興行は野球のオフシーズンに組まれることが多い。しかし、野球の試合結果などによっては急遽、会場が空くことがある。


 とはいえ、会場の設営にも数日を要するうえ、発表が直前になるというリスクもあるため、なかなか公演の実現は難しい。三代目 J Soul Brothersの場合は、日本でも最大級のファンクラブ組織を通じて迅速にファンへの案内をし、また情報情報拡散力のあるSNSやウェブメディアを活用して追加公演の告知をしてきた。さらに所属事務所となるLDHの公式ホームページのQ&Aコーナーでは、ツアー日程の発表が直前となってしまう理由を明かすなど、きめ細やかな情報公開でファンへの理解を求めている。


 LDHが培ってきたライブエンタテインメントビジネスのノウハウが優れているのはもちろんだが、ファンとの交流を重視し、少しでも多くの公演を実現するために企業努力を続けてきたことが、今回の記録につながったと言える。(参考:LDH Q&A)


 大規模なライブ会場が不足している問題に対しては、新たな会場の建設が待たれるところだが、今回の三代目 J Soul Brothersのライブのように、大手の芸能プロダクションやレコード会社による工夫もまた重要な施策となるだろう。(松田広宣)