打倒恋愛資本主義を掲げる団体「革命的非モテ同盟」が2月12日、11回目となるバレンタイン粉砕デモを開催した。例年と同じく「恋愛資本主義反対!」「ゴディバの炎上商法に騙されるな!」などと叫びながら、渋谷を約40分に渡り練り歩いた。
今年は、大手チョコレートメーカーのゴディバが、義理チョコをやめようという趣旨の新聞広告を出して話題になったが、団体はこれを
「義理チョコを止めようなどという安っぽいキャッチフレーズが世間の注目を浴びたが、この宣伝文句は粉砕しなければならないと思っている」
「幾度となく繰り返されてきた炎上商法といったい何がちがうんですか」
と批判する。「義理チョコを止めようという主張も恋愛資本主義に結びついている」と言う。
菓子店の店員「本音を言うと自分もバレンタインには反対」
団体は「義理チョコを止めるとか、そういう次元の話をしているのではない」と語る。
「バレンタインという、恋愛資本主義と非モテに対する蔑視が結びついた風習自体を止めなければいけない。本命チョコだってなくさなきゃいけない。ゴディバは高級チョコを扱う会社だ。本命チョコを買ってくださいという魂胆が透けて見える」
デモの参加者は約20人で、ほとんどが10代から40代までの男性だった。沿道からは「うけるんだけど」という嘲笑や「警察も大変だなあ」といった声が出る。
渋谷に遊びに来ていた中学二年生の女の子2人は「デモは初めて見た。バレンタインはあった方がいいと思う。楽しいから」と、デモには否定的な感想を述べた。高校1年生の女の子4人組も、
「かわいそうだと思う。貰えないからやってるのかな。意味がわからない。くだらない」
「バレンタインに恋愛のイメージは持っていない。お菓子交換のイベントだと思っている。共学校でもそのようです。あの中で交換すればいいのに」
と、冷ややかな感想を述べた。一方、デモを見ずに店頭の商品を並べていた菓子店のスタッフは、違った意見を持っていた。
「本音を言うと、実は個人的にはデモには賛成です。仕事だから仕方なく売っているだけ。あるお菓子メーカーが始めてこうしたイベントになっていますが、チョコレートのノルマは大量にあるし、店頭で発注した分より多く入荷させられるし、廃棄も大量に出る。ちょっとおかしい世の中になっているなと思っています」
デモが敵視する「恋愛資本主義」側の企業も、一枚岩ではないらしい。
「異性に受け入れられて当然、という価値観がおかしい」
デモの参加者にも話を聞いた。今まで数回参加したことがあるという40代の会社員男性は、「女性が気を遣うのも大変だと思うし、男性も、貰ってもお返しに困るだけ。会社での義理チョコの風習は無くなるといいと思う」と話す。職場での義理チョコは今のところないそうだが、「渋谷、新宿、どこを歩いていても商業施設ばかり。消費のために働いているようでおかしいと思う」と、働き方についても疑問を呈していた。
「チョコの数≠人間の価値」というプラカードを手に歩いていた18歳の男性参加者は、学校や社会だけでなく、家の中にも恋愛資本主義が入り込んでいると憤る。高校1年で好きな人に振られたとき、40代の母親にバカにされたという。
「異性に受け入れられて当然、という価値観がそもそもおかしい。余計なお世話なんですよ。モテなくても別にいいでしょう? 僕の他にもそう思っている人がいると思いますよ」
横にいた会社員の男性はこれに、「もしかしたら、青春時代がバブル真っ只中だった人は、テレビで青春=恋愛って刷り込まれているのかもしれない。最近はそこまでのプレッシャーではなくなっていると思うから、これから世の中変わっていくのではないか」と答えていた。
代表代行は報道陣の取材に「義理チョコも、恋愛と結びついた消費になっている。義理チョコ文化も徹底的に粉砕していかなければ我々の悲願は達成できない」と答えていたが、筆者がコンビニで購入した袋入りチョコレートは、「非常に困るんですねそういうのは。チョコを買ったという時点で恋愛資本主義に汲みしたことになる」と言いながらも、デモ終了後には受け取ってもらえた。バレンタイン粉砕を掲げてのこの行動は矛盾しているのではないかと聞いたが、「恋愛資本主義を憎んでチョコを憎まず」と、参加者同士で分け合っていた。