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Caravanはさらに充実の時を迎えているーーバンド編成で新たな試みも取り入れた川崎チッタ公演

2018年02月12日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Caravanが、昨年11月にリリースした4年ぶりのフルアルバム『The Harvest Time』を携え、全国ツアー『Caravan “The Harvest Time” TOUR』を開催中だ。近年のCaravanの作品は、“自らの手で丁寧に作品を届けたい”との思いからCDショップなどにはあえて流通しておらず、自身が出演するライブでの物販と通販サイトのみで販売するスタイルをとっている。そのため、新作の完成にあわせて、Caravanは作品を届けるための旅に出るのだ。今ツアーは、1月28日に迎えた初日のCLUB CITTA’川崎公演『Caravan “The Harvest Time” TOUR 2018 Release Party』をバンド編成で行い、その後2~3月は弾き語りスタイルで各地を巡る。


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 例年、Caravanの1月のCLUB CITTA’川崎でのライブは「新年祭」として開催されており、今回のツアー初日はその「新年祭」を兼ねたものとして行われた。会場ロビーにはCaravanが筆をとった書き初めの展示や振る舞い酒などが用意され、2018年一発目を飾るライブ、そして待望のリリースを祝うムードで賑わった。


 この日のライブは、まさにリリースパーティと呼ぶにふさわしい『The Harvest Time』の曲を中心に披露する新曲づくしの内容だった。アルバムの1曲目を飾るインスト「Astral Train」をSEに登場すると、ギターとブルースハープのシンプルな弾き語りで高らかに歌われた「In The Harvest Time」、堂々たる歌声とバンドのグルーヴで圧倒した「Retro」とアルバム収録曲を次々と披露していく。そんなCaravanのステージを支えるのは、宮下広輔、高桑 圭、椎野恭一、堀江博久といった手練れのプレイヤーたち。宮下と堀江は『The Harvest Time』のレコーディングにも参加していたメンバーだが、本作における大きなサウンドの変化は宮下のペダルスティールギターが加わったこと。やわらかく響くペダルスティールの音色は、Caravanの音楽が持ち合わせる郷愁の雰囲気にぴったりだ。過去曲もその音色が一つ加わることで一層深みが増して聞こえた。


 Caravanはこの日、中盤で新たな試みにも挑戦。それは、各メンバーとの1対1のセッションだ。宮下とはライブに欠かせない一曲「サンティアゴの道」を披露。2人が奏でるハーモニーが<さぁ君は君の道を進め>と歌うメッセージソングをより味わい深いものにした。続けてベースの高桑と演奏したのは「ハミングバード」。高桑はドラムの椎野とともにYUKIの「ハミングバード」のレコーディングに参加したメンバーでもある。ギターとベースの掛け合い、高桑のコーラスが加えられたアレンジが楽曲に豊かな響きをもたらした。そして2人編成を度々経験している堀江とは、アルバム収録時にはチェロが演奏に参加していたSMAPへの提供曲「モアイ」をしっとりと披露。伝え方を少し変えることで各曲の新たな魅力を引き出せるというのは、ライブならではの醍醐味であり、どんな編成でも柔軟に対応することができるCaravanの強みでもある。


 そんなCaravanのライブは楽しみ方も千差万別。心地よいサウンドに身を委ねる者もいれば、楽曲にこめられたメッセージに熱心に耳を傾ける者もいる。しかし、全員に共通しているのは、音楽を愛し、Caravanというシンガーソングライターに魅了された者たちであるということ。会場一体が“この時を待っていた”というような幸福感に包まれるのだ。音楽と誠実に向き合い、どんな場所であろうとも、一対一で音楽を届けようとするCaravanのまっすぐな思いがそんな素晴らしい一つの空間を作りだしているのだろう。


 ライブの終盤には弾き語りツアーの後、4月から再びバンドでツアーを開催すること、5月20日にはEXシアター六本木でツアーファイナルを行うことがアナウンスされた。全国各地をまわって再び東京に戻ってきた時、『The Harvest Time』の楽曲たちはどのように響くのか。独立から10年、さらに充実の時を迎えているCaravanのライブを今こそ多くの人に体感してほしい。(久蔵千恵)