インディカー・シリーズは開幕まで1カ月となり、2月9~10日にニ日間の合同テスト、スプリングトレーニングが行われた。
今年レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)に移籍した佐藤琢磨は、1月末にセブリングでの初テストを終えてから、このフェニックスのオープンテストにのぞんでいた。
セブリングではニューマシンにマイナートラブルも出て一抹の不安もなくはなかったが、このフェニックスに来てからはその不安も消し飛んだようだ。
テスト前日がルーキーテストが充てられ、他のドライバーは二日目のからの参加。午後1時から4時までの3時間と、午後6時から9時までの3時間の2セッションが二日間設けられた。供給されるタイヤは1台につき1日3セットずつという設定だ。
1周がおよそ20秒足らずのショートオーバルのフェニックスを、日中と夜間に分けどのようにテストプログラムをこなすのかが注目されるところだ。
RLLRは琢磨とグラハム・レイホールの2台で周到にテストプログラムを組み、さらに走行データは逐一交換していくことにより、順調にプログラムを消化していった。その結果は明確にタイムに現れていく。
琢磨は日中のセッション2(セッション1はルーキーテスト)の最後でニュータイヤを投入し19秒6726とベストタイムをマークし、好調な滑り出しを見せる。
さらに夜間のセッション3ではチームメイトのグラハムが19秒4574、琢磨もレイホールに次ぐ19秒4600を記録。RLLRの2台が1-2というこれ以上にない滑り出しを見せた。3 番手にはサイモン・パジェノー、4番手に昨年のチャンピオン、ジョゼフ・ニューガーデンとペンスキー勢が続いている。
「テストの初日をチームメイトのグラハムと1-2で終われて気分は良いですね。チームでいろいろとデータをシェアしながら、プログラムをうまくこなせました。ペンスキーやガナッシのクルマとコンペティティブなタイム争いですから明日はどうなるかわかりませんけど……」とタイムが出ている割には謙遜気味だった。
だがそんな杞憂も吹き飛ばすように、RLLRの2台は翌日のテストも快調にタイムを刻む。特に琢磨は日中、夜間どのコンディションでも最速という安定した速さだった。
セッション4は、19秒3920で再びトップ。2番手にはペンスキーのウィル・パワー、3番手はガナッシのスコット・ディクソンとシリーズの列強たちを退ける。
テストの最後セッション5は燃料を多く積んだロングランテストなども組み込みながらのテストで最多の153ラップも周回したが、最後に19秒3790までタイムを短縮。追いかけてくるペンスキーのパワーを退けた。
両日4回のテストセッション中3回もトップタイムをマークした琢磨。しかも残りの1回はグラハムで、全セッションをRLLRが制覇したことになる。もちろん開幕前にここまで順調にタイムを出したことはかつてなく、まだシーズン前のテストではあるが、否応なしに期待が高まろうというものだ。
「こんなに順調なことは今までになかったですね、どうしちゃったんだろ(笑)。ボビー(レイホール)もエンジニアリングルームに来て、お前たちどうしちゃったんだ?ってジョーク飛ばしてましたけど(笑)」
「ライバルのチームとは本当に僅差ですけど、タイムシートのいちばん上は気持ち良いですよね。もちろん1万分の1秒で争う僅差なので、楽観はできないですけどもペンスキーやガナッシのライバルたちと同じ条件で前にいるのはうれしいです」
「グラハムも僕をリスペクトしてくれるのがよくわかりますし、エンジニアのエディ(ジョーンズ)も、僕にどうしたい?って良く話を聞いてくれて、マシンを仕上げてくれる。いろいろなことがとてもうまく働いて良いテストでした」
「このフェニックスではあまり良いリザルトがなかったし、どちらかと言えば嫌いなトラックでしたけど、今回は自分の乗りたいように乗れて自信が戻ってきました」
「この後バーバーとセブリングでテストをしてから開幕のセント・ピータースバーグを迎えますが、2回のテストでまたクルマの理解を深めて備えたいと思います」
エアロパッケージが統一されたことでチーム間格差が少なくなると見込まれた2018年だが、琢磨はチームの移籍と共にこれ以上にない盤石の態勢で開幕を迎えられそうだ。