2018年02月11日 10:22 弁護士ドットコム
「予算必達!」。営業などの職種を中心として、予算として決められた数字を達成するよう上からプレッシャーを受けて、苦しい思いをしながら仕事をしている人も多いだろう。営利企業である以上、売り上げや利益の予算を達成するために努力することは当然だともいえる。
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ただ、過度な目標達成を求めてしまうと、様々な問題が生じる可能性がある。「これはちょっと難しいんじゃないか」と従業員が思ってしまうような予算を策定することのメリットとデメリットはどのようなところにあるのか。久乗哲税理士に聞いた。
人は目標を置くと、その目標を意識するようになります。予算として決められた数字があれば、その数字が目標として意識する数字ということになります。したがって、無意識にその数字を達成するためにどうすればいいのかというようなことを考えるようになります。
心理学ではアンカーリングと言われたりします。予算として決められた数字が心の中のアンカーとなって、その数字を達成するために努力するということになるわけです。また、予算として決められた数字を達成することによって、自信にもつながることになりますし、より大きな目標に取り組める準備もできます。これが予算の達成を求めるメリットだと思われます。
一方、デメリットは、従業員がその数字に潰されてしまうことでしょう。過度に高い目標の場合、今の実力との差がありすぎると、努力してもその目標を達成できないということになってしまいます。そうすると、メリットの反対で、従業員は自信を失うということになってしまいます。「俺はダメなんだ」という自己否定をしたりするようになります。そうすると、ますます予算の達成は難しくなります。
予算というのは、利益を出すための予算でもあります。その予算を達成しないと利益が出ないということも多くあります。しかし、過度に高い目標の予算は、従業員のモチベーションと自信を失わせる可能性もあります。
本来であれば、その従業員の実力の110%ぐらいの目標設定というのが良いと思います。今よりも工夫して努力すれば達成できる目標設定であれば、従業員もその目標に対して頑張れますし、成長することもできますから。
過度の目標設定をしなければ、利益が出ないというような場合は、収益構造やビジネスモデルそのものを考え直す必要があると思われます。
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)