2018年02月11日 10:22 弁護士ドットコム
結婚直後に、夫の両親と「同居は絶対」と条件を告げられ、それを受け入れられずに小さな子どもを連れて別居中ーー。そんな女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。
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相談者は現在結婚2年目。別居中に、子どもも生まれた。夫は長男で、義両親との同居は「絶対」だと結婚後に知らされた。夫は、二世帯住宅の建設を計画中だというが、相談者は義両親との折り合いも悪く、同居には応じていない。ちなみに育児休業中だ。
結婚後に知らされた「同居は絶対」という条件に応じなかった場合でも、その期間の婚姻費用(生活費)の分担を請求できるのだろうか。また、もし今後も同居に応じなかった場合、相手からの申し立てや、相談者からの申し立てにより離婚が成立する可能性はあるだろうか。長瀬佑志弁護士に聞いた。
「結婚後に知らされた『同居は絶対』という条件に応じなかったとはいえ、別居に至っている以上、婚姻費用を請求することは可能です。なお、婚姻費用には、子どもの養育費用も含まれます。
夫側からは、妻側が婚姻費用の請求をすることが、権利の濫用として認められないとの反論が予想されます。
しかし、別居中の婚姻費用の権利の濫用についての判例(東京家審平成20・7・31家裁月61巻2号257頁、東京高決昭和58・12・16判時1102号66頁)もあります。夫両親との同居という重要事項が結婚前には知らされておらず、止むを得ずに別居に至ったことからすれば、婚姻費用の分担請求をしても、権利の濫用といえるほどの事情はないと思われます」
次に、今後も同居に応じなかった場合、どちらかの希望により、離婚が成立する可能性はあるのだろうか。
「まず、夫が離婚を申し立てた場合から検討します。夫の理由としては、両親との同居を拒否するということが、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当するかどうかが問題となります。
しかし、結婚前に伝えなかったことや、同居が夫側の都合であることからすれば、離婚請求が認められる可能性は低いでしょう」
妻側が申し立てた場合には、どうだろうか。
「妻側から離婚を申し立てた場合も、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当するかどうかを検討することになります。
結婚後に、夫の両親との同居を求められ、夫が妻との同居に応じなかったというだけでは、離婚が認められることは難しいかもしれません。しかし、別居期間が長期に及んだり、夫側が夫の両親との不和の解消に協力してくれなかったりするような事情があれば、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』に該当するとして、離婚が認められる可能性はあるといえます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか,交通事故,離婚問題等の個人法務を扱っている。
著書「若手弁護士のための初動対応の実務」(単著),『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著),『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著),『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:http://nagasesogo.com