2018年02月10日 10:42 弁護士ドットコム
ビジネスの場でまず行う名刺交換。都内で働く営業職のマサミさん(20代・仮名)は、どこかで名刺交換した相手から度々勝手に送られてくるメールに困惑しているようです。
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「私の会社もイベントを開催するときに個人情報を集めることはありますが、イベント申し込みフォームの段階で、『協賛企業から情報が送られてくる可能性があります』と書いています。ただ名刺交換しただけなのに、全く違うメールが送られてくると、複雑な気持ちになりますね」
ネットのQ&Aサイトでも、登録した覚えのないメールマガジンが来るようになり、配信停止希望とその会社に返したところ、以前名刺交換をした人の会社だったという相談が寄せられている。
本人の許可なしに、名刺に書かれたメールアドレスを会社のメールマガジンに登録することは、法的に問題ないのでしょうか。最所義一弁護士に聞きました。
・特定電子メール法では、同意した人以外に広告宣伝メールを送信することは原則禁止
・ただし、名刺交換などでアドレスを知らせた場合は、特定電子メール法には違反しない
・通信販売などの広告メールは、名刺交換をした人でも同意を得ないとダメ
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)では、広告宣伝メールは、あらかじめ同意した以外の人に対して送信することは、原則として禁止されています(同法2条2号、同法3条1項1号参照)。
以前は受信者が受信拒否の意思表示をするまで、事前の許可なしに自由に送信することが認められる『オプトアウト方式』だったのですが、平成20年の法改正以降、日本でもこの事前にユーザーの同意を得る『オプトイン方式』が採用されています。
今回のメールマガジンも、一般的には、営業の為に広告宣伝を行うものと評価できますので、特定電子メールとして規制の対象となります」
「ただ、この法律にも、一定の例外が認められています(同法3条1項2号乃至4号)。名刺などの書面で、自己のメールアドレスを通知した場合には、その人に対してメールを送信することは、同意がなくても認められているのです。(同法3条1項2号、同法施行規則2条1項)。
そのため、名刺交換した人に対して、メールマガジンを送信することは、特定電子メール法には、違反しないということになります。もっとも、受信拒否の意思表示をすれば、以降、送信することは禁止されます(同法3条3項)」
「さらに、通信販売などの電子メール広告を個人に対して行う場合には、『特定商取引に関する法律』(特商法)の適用があります。たとえ、名刺交換した人であったとしても、原則として、承諾をえない限り、電子メール広告を送信することは禁止されます(特商法12条の3参照)。
このような規制の違いが生じるのは、特定電子メール法の立法趣旨が、電子メールの送受信上の支障を防止することであるのに対し、特商法の立法趣旨が消費者の利益保護にあって、それぞれの法律の制定された目的が異なるためです。
そのため、送信されたメルマガの内容が、通信販売等の電子メール広告に該当する場合には、たとえ名刺交換をした場合であったとしても、承諾なく送信することは禁止されます。特商法72条1項2号の罰則(100万円以下の罰金)の対象となります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
最所 義一(さいしょ・よしかず)弁護士
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専修)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人港国際法律事務所湘南平塚事務所
事務所URL:http://minatokokusai.jp/office/hiratsuka/