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Apple HomePodは“349ドル”の価値があるのか? スペックや海外の反応から検証

2018年02月10日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 スマートフォンの次に普及するプロダクトになるかもしれないスマートスピーカー。そんなますます過熱するスマートスピーカー市場に、ついにあのAppleが参入。スマートフォンの時代を牽引してきたAppleが打ち出す「HomePod」は、iPhoneのように、未来を作ることができるのか。HomePodの基本的なスペックをおさらいしつつ、その価値について探ってみたい。


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■2月9日、ついに発売
 スマートスピーカー市場で先行するAmazonやGoogleに少し遅れを取る形でついに発売されるHomePod。 昨年の『WWDC』での発表以来、世界中のAppleファンと新しいガジェットに目が無いギークの心をそわそわさせ続けてきた。実際、マイナーチェンジ等の新機種発表を除けば、Apple Watch以来となる全く新しいプロダクトの登場となり、期待感も高まった。


■できることはそんなに多くない?
 他のスマートスピーカー同様、HomePodも声で操作するスピーカー。ということはつまり、Amazon Echoに「Alexa」、Google Homeに「Googleアシスタント」といったAIが搭載されているのと同様に、HomePodには「Siri」が搭載されている。音楽の再生やメッセージの入力など、iPhoneで行っているような基本的なアクションはHomePodでも行うことができる。


 だが、裏を返せば「iPhoneとできることはあまり変わらない」ということでもある。ただ、これはHomePodに限ったことではないが、スマートスピーカーをより効果的に使うには、結局はサードパーティ製品の充実が必要になるため少し我慢が必要そうだ。


■注目すべきはその音質。
 そうは言っても、特筆すべき部分もある。Amazon Echoは多彩なスキル、Google Homeはサードパーティとの連携、とそれぞれのスマートスピーカーに特色があるようにHomePodが差別化を図るのは「音」の部分。角が取れ、まるっとした筒状の筐体にはウーファーと高音域を司る7つのツイーターが搭載されており、単なるリスニングのためのスピーカーとしても十分すぎるスペックを誇っている。だが、HomePodのスマートさはそこではなくその優秀なソフトウェアにある。


 HomePodは鳴らした音の反射で部屋の広さや構造を、まるでソナーのように把握。これによって空間に最適化された音響を実現してくれる。Beats by Dr Dre.の買収以前からそうだったようにAppleは音へのこだわりが強い。謹製の音楽ストリーミングサービス「Apple Music」の有料登録会員数がSpotifyのそれを上回るのではないか、との報道もあったが、HomePodの登場がその数にどれだけ影響を与えるかも気になるところだ。


■海外での反応は?
 今回HomePodが販売されるのはアメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国だけ。日本での発売は今のところ予定されていない。先行して体験した海外メディアの反応は各社様々だが、共通して言及しているのはやはり音質の良さ。壁の反射を利用して音を響かせる技術は1台のスピーカーで立体感のあるステレオサウンドを生み出し、オーディオメーカー各社が出す同価格帯の製品よりも優れていると評価されている。


 ただ、互換性やサードパーティ製品の乏しさは大きな欠点となっており、音楽ストリーミングサービスの雄・Spotifyに対応していないのは、Apple得意の囲い込み戦法が裏目に出た結果となっている。


■349ドルの価値はあるか?
 349ドル、日本円にして約38,000円。現行のスマートスピーカーの価格設定と比べても、群を抜いて強気な姿勢が窺えるHomePod。ハイスペックなワイヤレススピーカーと比べてみても、Boseの最新ワイヤレススピーカー・SoundLink®より1万円ほど高額な設定になっていることから、Appleの「最高に賢く、最高の音楽体験を生み出すプロダクトを作りましたよ」という強い自信が伝わってくる。


 ただ、前述した通り、現状はSiriを搭載した音質のいいワイヤレススピーカーに過ぎない。これまで新たな未来を作るような、実際に暮らしをガラッと変えてしまうプロダクトを作り、時代を牽引してきたAppleにしてはあまりにも無難だ。AppleファンがApple製品を目の前にした時の脳波と宗教にハマっている人の脳波が同じ、というデータがあるらしいが、349ドルの製品をスペックと利用シーンの想定もなく飛びついて購入するのはまさに“信者”、もしくはガジェットフリーク、それかApple製品をいち早くライフルで撃ち抜いて脆弱性の検証をする奇特なアカウントくらいだろう。


 一つ安心できるのは、現状、日本での発売の予定がないことかもしれない。海外でのレビューが出切った後に、冷静な状態でプロダクトの良し悪しを見極めていくことができるからだ。そして、その頃にはきっといつものように、どこかのメディアから「HomePod 2」の噂がリークされているはずだ。(げんきくん)