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ゴールデンボンバーによるユーモラスで鋭い問題提起 最新作の収録曲から読み解く

2018年02月10日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 EXOのデビューアルバム『COUNTDOWN』が初登場で1位を獲得。すでにドーム球場でのライブを展開するなど日本での人気も高い彼らだが、チャートアクションにおいても海外グループとしては史上初となる「1stシングル、1stアルバムでいずれも初登場1位を獲得」という記録を成し遂げた。EXO以外にも昨年の紅白に初出場を果たしたTWICEや最近注目度が増しつつあるBTS(防弾少年団)など様々な人気グループが次々と登場しており、韓国発のパフォーマンスグループは日本のメインストリームにおいて一過性の流行ではないポジションを確立した感がある。


(関連:ゴールデンボンバー楽曲の根底にあるもの 最新作『キラーチューンしかねえよ』から読み解く


 さて、今回取り上げるのは初登場2位にランクインしたゴールデンボンバーの『キラーチューンしかねえよ』。鬼龍院翔(Vo-karu)のソロアルバム『オニカバー90’s』の発表やシングルリリースに伴うテレビ出演など休むことなく活動を続けている印象があるが、フルアルバムとしては約2年半ぶりのリリースとなった。


 以前当連載で前述の『オニカバー90’s』を取り上げたときにも触れた通り、鬼龍院の音楽的なルーツとして歌謡曲からJポップに至る流れがあるが、今作においても彼のそういった趣味嗜好は随所に垣間見える。KAN「愛は勝つ」あたりを思い出す「やさしくしてね」、少年隊や近藤真彦といった往年のジャニーズ風ディスコテイストの「やんややんやNight ~踊ろよ日本~」、ビーイング的なギターの鳴りとメロディラインが印象に残る「スイートマイルーム」などは、日本の大衆歌の歴史の再解釈としても興味深い。また、「お前を-KOROSU-」で確認できるビジュアル系ど真ん中の曲作りのセンス(およびタイトル含めたパロディセンス)も相変わらず冴えている。


 楽曲単体をとってもJポップ好きにとっては面白い作品になっている『キラーチューンしかねえよ』。ただ、今作においてそれ以上に注目すべきは、「今の時代において音楽に値札をつけて売ること」に関する批評精神、およびそれをエンターテインメントにまで昇華するショーマンシップだろう。アルバム冒頭の「口上」(歌詞全部を引用したいところだが、ぜひ音源を聴いていただきたい)でのリスニングスタイルに応じた聴き手への感謝とちょっとした嫌味、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でのパフォーマンスも話題となった「#CDが売れないこんな世の中じゃ」における笑えるがストレートな問題提起、「何かの道具として使うための音楽」という側面をとことん突き詰めた「誕生日でも結婚式でも使える歌」など、とかく堅苦しくなりがちな「音楽をどうやって楽しむべきか」という問いに対して、彼らなりのスタンスを提示しながらもユーモアは絶対に忘れないというバランス感覚は、多くのミュージシャンが参考にすべきものとなっているように感じる。


 その出自からして「ビジュアル系という概念に、愛を持って揺さぶりをかける」という意味合いを持っているゴールデンボンバーだが、最近ではその揺さぶりをかける対象が日本のポップミュージックを取り巻く環境全体にまで拡張しつつある印象がある。この先も、鋭い問題提起を楽しい形で行い続けていってほしい。(レジー)