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広瀬アリス、“作品を背負う”女優へ 『わろてんか』や『巫女っちゃけん。』でみせた実力

2018年02月10日 06:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 NHKの連続テレビ小説『わろてんか』で映画女優に女芸人と、多彩な顔をお茶の間に披露している広瀬アリス。幸先のいいこの2018年は、主演作『巫女っちゃけん。』も封切られたばかり。『偶然にも最悪な少年』(2003)や『ハードロマンチッカー』(2011)のグ・スーヨン監督による、実に7年ぶりの待望の新作である本作では、「就職までの腰掛けに、巫女をやる」という奇異なキャラクターを見事に体現。いま最も勢いのある彼女の魅力に注目してみたい。


参考:広瀬アリス『わろてんか』『巫女っちゃけん。』画像


 小学6年生の時に現在の事務所にスカウトされデビューした広瀬は、2009年に応募した『セブンティーン』(集英社)のオーディションにて見事グランプリを獲得し、専属モデルとして活動。ティーン層からの圧倒的支持を得ながら、ドラマに映画にと出演作を増やし、キャリアを積み上げてきた。その後『銀の匙 Silver Spoon』(2014)や『FLARE~フレア~』(2014)、フジテレビ系主演ドラマ『妄想彼女』(2015)でメインの役どころを担いはじめたころ、2015年に同誌を卒業し、モデル業も引退宣言。以降は女優業に専念し、『新宿スワンII』(2017)などの大作への出演や、2016年には『全員、片思い』と『L-エル-』で、2017年には山崎賢人とともに主演を務めた『氷菓』でと、主演作が相次いでいる。“モデルで女優”から、作品を背負うことができる女優へと、確実に歩を進めているのは間違いない。


 それを証明するのが現在の活躍である。“作品を背負う”というのは、なにも主役に限った話ではない。


  放送中の『わろてんか』で広瀬が演じるリリコは、伊能フィルム社長・伊能栞(高橋一生)のもとで映画スターとして活躍していたものの、藤吉(松坂桃李)の死をきっかけに、漫才コンビ「ミスリリコ・アンド・シロー」として川上四郎(松尾諭)と高座に上がることとなる。大黒柱を失った北村笑点を盛り上げるべく奮闘するヒロイン・てん(葵わかな)を支えつつ、彼女は自身の見せ場ではきっちり魅せる。四郎とコンビを組むか組まぬかで揉める場面では、まくし立てるようなセリフ回しで感情を爆発させ、周囲の者を圧倒したものの、デコボコながら笑いを生むコンビ出発。不器用な四郎との、なかなか上手くはいかぬ彼らの漫才であるが、リリコ自身それを肌で感じていながらも、いちばん近くにいる唯一の理解者として彼を支えはじめた。「笑い」をめぐる群像の中で、“出るところは、出て”、“引くところは、引く”、そうして彼女もまた『わろてんか』という作品を背負っているのだ。


 一方、オーディションにて主役の座を射止めた『巫女っちゃけん。』での広瀬は、『わろてんか』とはまた違った、新たな笑いを生み出すことに成功している。彼女の演じる“しわす”というキャラクターは、「就職までの腰掛けに、巫女をやる」と先述したように、特殊な設定下に置かれている。ここでの広瀬は、だらしなくふてぶてしい態度でメンチまで切ってみせ、見たことのない巫女の姿に柔軟にハマってみせる。ドカッと腰を据えてカップ麺をすする姿など、かなり堂に入っている。たしかに奇異な役どころではあるが、グ・スーヨン世界の住人の枠からはみ出さず、気負っている様子もなく、非常に自然体のまま彼女の“ありえない巫女の姿”は笑いを生んでいるのだ。物語の中心人物を演じる彼女の、主役としての謙虚な姿勢を垣間見ることができる。


 今後は、小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子らとともに名を連ねる『食べる女』の公開も控えている広瀬。多くのCMにも出演し、バラエティーにラジオにと活躍が続く彼女だが、インタビューでは、「楽しんでやってます、すっごく。ありがたいことに今はいろいろやらせていただいて、本当にいい環境だなって。(中略)もちろんお芝居からスタートしたので、そこが芯であることはブレたくないなと思っています」(引用:https://www.cinematoday.jp/interview/A0005845)と語っている。女優業に専念して3年目になるこの2018年、ますます勢いは大きくなっていきそうだ。


(折田侑駿)