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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ゆれる人魚』『犬猿』

2018年02月09日 19:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。


参考:松尾スズキ、大根仁、コムアイらが絶賛 『ゆれる人魚』に各界著名人がコメント


■『ゆれる人魚』


 横浜(DeNA)ベイスターズファン歴、今年で23年目。大和のグラブさばきに興奮中の石井がオススメするのは、『ゆれる人魚』。


 今はなき映画館、渋谷シネマライズ(できれば地下のライズX)で観たかったポーランド発のダークファンタジー。アンデルセンの童話『人魚姫』を下敷きに、生きるために人間を捕食しなければいけないという人魚が、陸に上がったことをきっかけにナイトクラブのスターとなり、人と人魚の狭間で揺れ動く模様が映し出される。


 シネマライズで観たかったというのも、デヴィッド・リンチや、レオス・カラックスといった強烈な映像体験を与えてくれた作家たちの作品と通ずるものを本作に感じたからだ。 冒頭のアニメーション、ナイトクラブを彩る色彩、リアル過ぎる人魚の尾と、あらすじに置いていかれたとしても(ベースは『人魚姫』なので分かりづらい話ではないけれども)、映像と音楽だけでも十分に陶酔できる作品となっている。


 少女が口の周りを血に染めて微笑む姿がキュートに見えるほど、人魚を演じたミハリーナ・オルシャンスカ、マルタ・マズレクが魅力的だ。子供の頃、憧れた大人の世界が、大人になってみたら想像とはまったく違った……そんな思いをもったことがある方ならば、人魚姉妹に共感せずにはいられないはず。


 ミュージカル映画として、ラブストーリーとして、そして青春映画として、観る度に違う魅力を発見できる不思議な作品となっている。なお、リアルサウンド映画部では、アグニェシュカ・スモチンスカ監督のインタビューを近日掲載予定。80年代を舞台にした意図から、『人魚姫』をモチーフにした理由までじっくり語ってくれているので、こちらもぜひお楽しみに。


■『犬猿』
 喧嘩をしたときにPCにお茶をこぼされ、大事に抱えて夜の公園に逃げました。リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田がオススメするのは、『犬猿』。


 兄弟と姉妹。最大の理解者であり、似ていたり似ていなかったり、お互いにあんな風にはなりたくないと思いながらも、時には羨ましく思うことも。そんな兄弟姉妹ならではの複雑な関係を描いた物語。


 現在放送されている『アンナチュラル』(TBS系)で活躍中の窪田正孝が、本作では営業マン・和成として人間味が溢れた役を好演。ヒーローやおしゃれな大学院生、やんちゃな高校生など、奇抜な役で目立つ存在を演じている訳ではないが、一般的なサラリーマンを演じるからこそ、その表情や発言をするときのさりげない含みなどで見せる彼の一つひとつの演技に、感情や人柄のリアリティを感じ、役者としての実力を改めて見せつけられた。


 また、ニッチェの江上敬子が演じる由利亜を軸とした人物たちのやりとりが、さりげなくコミカルに描かれ、クスっと笑ってしまうポイントだ。妹・真子(筧美和子)との姉妹での蔑み合いや彼女へのいじわる攻撃はもちろん、自身が好意を抱く和成へ積極的にアプローチを仕掛けるも、和成が妹・真子と付き合い始めたことを知って一気に態度を冷たくする場面がある。由利亜のテンションの振り幅を前に、和成は翻弄されることはないが、由利亜は和成へ抱く葛藤がそのまま直に行動に現れてしまう。バランス悪く描かれる由利亜と和成の行動と反応の対比が、物語の面白さを生み出していた。


 和成と真子は互いの兄、姉に対して愚痴を言い合い、最初は同調して意見し合うものの、途中から自身の兄、姉のことを「そうでなはない」と擁護する。様々な場面において、蔑んだり、見下したりしながらも、助けたり、庇ったり……。「あんなにひどいことをされたのに、なぜ今こんな優しくしてるんだろう」と筆者も何度も思うときがあるが、そんな一言では表せないの兄弟姉妹の関係性が、本作ではうまく描かれていた。


 幼いころから喧嘩が絶えず、両親にも「あなたたちは将来助け合えないね」と言われたことが何回あったのであろう筆者であるが、つい最近も一緒に『羊の木』を観に行ったし、昨年には2人で韓国旅行に行っている。本作を観れば、ラストのシーンで描かれる兄弟姉妹の関係性の解明、そして筆者の実体験に対しても「そうだよね」と感じてくれるはずだ。


(リアルサウンド編集部)