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【特集:F1マシンの誕生】製作開始(2)バーチャル3Dモデルを使った特別なソフトで効率化

2018年02月09日 11:42  AUTOSPORT web

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実車を走らせるまで実に1年以上の歳月を必要とするF1のマシン製作
F1マシンの完成には、コンセプトの提案から冬のバルセロナテストで実車を走らせることにこぎ着けるまで、実に1年以上の歳月を必要とする。ルノーF1チームのテクニカル・ディレクター、ニック・チェスターへの独占インタビューを基に、F1マシン製作の全過程を「コンセプトを決める」「開発のスケジューリング」「F1マシンのデザインとは」「マシン製作」の4テーマにわたって紹介。

F1マシンの誕生
第4章:マシン製作
■その2:カーボンファイバー製パーツを作る
 ここからはカーボンファイバー製パーツが、どのように製造されるかを見て行こう。

 モノコック、ボディワーク、そしてウィングなどは、カーボンファイバーを加工して作られるパーツである。分厚いカーボンファイバーのシートをカットし、何層にも張り合わせ、オートクレーブと呼ばれる圧力釜で熱と圧力を掛けて、高強度のパーツに成形する。

 カーボンファイバー製パーツは何層にも張り合わせてある上に、3次元の複雑な構造を持つ。なのでバーチャルな3Dモデルからスムーズに加工成形へと進めるよう、特別なソフトが使われる。3Dモデルにデザイン変更があった場合でも、その情報は自動的にアップデートされる。

 さらにこのソフトは、製造上難易度の高い部分については、製造の際に出そうな問題を事前にエンジニアに注意喚起し、代替案まで提案してくれる。たとえばこれだけ湾曲のきついデザインだと、カーボンシートを張り合わせた際にこの部分にしわが出る恐れがある。その場合こうしたらいい、という具合だ。

 こうしてデザイナーたちはファクトリーに最終デザインを提出する前に、製造上の問題を極力回避できるのである。それは結果的に、マシン製作に要する時間と経費を節約することに繋がる。

 モノコックのカーボン製作は、フルサイズパターンの切り出しから始まる。CADデータは5軸工作機械に送られ、エポキシ樹脂の固まりからモデルを切りだして行く。この冬、イギリス・エンストンにあるルノーF1のファクトリーは、ブルトン社製の最新鋭工作機械を導入した。高さ7mものこの機会のおかげで、モノコックやフロアなどの大型パーツも完全内製できるようになった。

 エポキシ樹脂のモデルに何層ものカーボンファイバーを張り合わせて行くのは、完全に手作業である。その後オートクレーブで何段階もの焼成でパーツを作り上げて行く。

(その3に続く)