トップへ

Charisma.comにはまだ果てしない発展の可能性がある 無期限活動休止前ラストライブを見て

2018年02月09日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 1月10日リリースのベストアルバム『Charisma.BEST』と、1月12日大阪BIGCATと1月27日Zepp Tokyoのワンマン『Charisma.comです、ごきげんよう 2018』を最後に、無期限活動休止に入ること、そして同時にDJゴンチが脱退&引退することを発表したCharisma.com。その最後の日にしてワンマン過去最大キャパ、1月27日のZepp Tokyoを観た。


 『Charisma.BEST』収録の新曲、つまり今の形のCharisma.comの最後の曲である「りぼん」のMVは、ふたりが棺桶から出てきて始まり、MCいつかが首を吊って終わる、というなかなかにエグいものだったが、このステージのオープニング演出も、それに沿ったものだった。


 ステージ後方にふたりと思しきガイコツの遺影(左がメガネをかけているのでいつか)が掲げられ、その前に棺桶がふたつ立っている。SEで木魚とリンの音(「ポクポクポクチーン」というあれです)で始まるダンストラックが響き、背後の遺影のガイコツがふたりの顔になったり元に戻ったりする中、ドカン!と特効が鳴って「りぼん」が始まり、同時に棺桶のフタが開き、赤いバラに包まれたいつか&ゴンチが現れる。ふたりともそのMVと同じ衣装を纏っているーーという。ただし、棺桶は、MVでは黒だったのが今日は白だ。


 過去のワンマン等ではダンサーたちが登場したり生バンドを従えたりしたこともあったが、この最後のライブは頭から最後まで、MCいつかとDJゴンチのメンバーふたりだけで行われた。


 2曲目「お局ロック」では、この曲でおなじみの赤い脚立がステージに持ち込まれる。4曲目、おそらく歌詞がどぎつすぎるので2ndアルバム『愛泥C』のタワーレコード限定盤にのみ収録された「豚」では、曲始まりでステージ後方にでかでかと曲タイトルが映し出され、ゴンチが「ごきげんよう!」と叫ぶ。次はいつかの「ごきげんよう!」から「999」。最初のMCでいつか、「やってまいりました。ようこそお越しくださった、終わりにして始まりのこのライブに!」と挨拶、「こっからすごいから。けっこう目を見張る。あたしはゾッとしてる」と宣言。


 久々の「とんがりヤング」では、頭の上で掌を合わせて左右に振る、いわば「とんがりダンス」でオーディエンスが左右に揺れる。7曲目「Like it」からステージ後方に効果映像の投射がスタート。10曲目「メンヘラブス」の前にいつか、「今日はいるのかな、この会場にあの子たち」というひとこと、そしてすべてのリリックがLINEのトーク形式で画面に表示されていった末に、最後は「menhera_busuが退会しました」で終わる。


 11曲目「NOW Remix」からゴンチといつかがDJブースに並んでプレイ。そのまま15曲目「ベルサッサ」までメドレーノンストップでダンストラックが続く。


 「OLHERO」でいつか、「私たちは一歩先にOLを卒業したけど、現状特に変わっておりません」。曲後半では「それでは明日からのみなさんにエールを贈ります! フレーフレーOL today!」とコール、それにオーディエンスの声が加わってシンガロングになっていく。


 いつかがキーボードを弾きながらの「グララ」、ひとりスポットの下で歌う「not not me」、ステージ右方にアグラをかいてつぶやくようにラップする「黄昏各位」の3曲が、いわゆるバラードタイム。


 「黄昏各位」が始まる前にステージから消えたゴンチを、いつかが「いでよ、ゴンチ!」と呼び込むと、ゴンチ、真っ白なウエディングドレス姿で現れてオーディエンスを驚かせる。


 そのまま2MCのフォーメーションで「婿においで」。いつかの「茶番からの『Lunch time funk』」という紹介から西寺郷太プロデュースのファンクチューン「Lunch time funk」。次の「#hashdark」と「もや燃やして」で、この日のステージで、それでなくてもうねりまくっているフロアがこれまでで最大のうねりを見せる。


「みんなそんなに疲れてないね。いつかはけっこうキてます」


「みんな元気? (返ってくる歓声に)おかしいんだよ、元気なのは!」


「(ゴンチに)見せて、(ステージドリンクの)お茶の量。……そんなに飲んだの? 私より全然飲んでんじゃん!」


 などと、オーディエンスもゴンチも均等にいじり倒すMCをはさんでから、いよいよ本編最後のブロックへ突入。ノンストップ曲間なしで曲が連なり、会場の温度が上がっていく。


 「こんがらガール」でいつかは「(手を)叩け!」「歌え!」とオーディエンスであおりまくり、ゴンチはリリックの「カメハメ波」のタイミングでハンディレーザーを発射。初期の代表曲「GEORGE」では映像でリリックが躍り、「サプリミナル・ダイエット」ではいつか&ダンサーたちが武富士ライクに踊るあのMVが流れる。


 「イイヅナケブルー」ではふたりでダンス(サビで首曲げたりするあれです)、デュオ状態に。「100%ブービー」では本日最大量のレーザーが飛んだ。


 「最後の曲になりました」という言葉に「えー!!」と返すオーディエンスを、間髪入れず「うるさい!」と一喝。といういつからしいやり取りをはさんで、「ここはみんなのパートです」と「アラサードリーミン」。シンガロングとハンドクラップに包まれてこの曲を歌い終えたいつかは、「超いい『アラサー』だったね。みんな、やれたね」とオーディエンスを賛辞し、ステージを下りる。


 アンコールを求めるオーディエンスの「メキメキmore」の大合唱を受けて、ふたり、再度ステージに。「いい『メキメキmore』だったよ」といつか。グッズの宣伝をしたあと、「今日をもってーー」と無期限活動休止のあいさつを始めるも、オーディエンスからの「えー!」の声に「もうちょっと『えー!』あってもいいんだよ?」。


 で、「休止ということは必ず動き出すということです! ……でも休止って言ってそのままの人もいるから(笑)」と、ひとこと多いコメント。いつからしい。「必ず動き出すということです!」で締めればいいのに。そのあとに「だからみんながんばって!」みたいにオーディエンスにぶん投げるのも、いつからしいし。


 続いてゴンチが最後の挨拶を始めると、感謝の言葉を綴った大きな幕を、フロアのファンが掲げた。


 「私たちはみなさんを応援してますけど、みなさんも私たちのことも応援してください。持ちつ持たれつじゃん。あの曲はみんなの曲だから」という紹介から「メキメキmore」へ。なんともセンチメンタルな気分がZepp Tokyoを満たす。


 そして。「というので終わるわけもなく! 私たちらしいこの曲で、今日を締めたいと思います!」と、最後に歌われたのは「HATE」だった。


 リハスタと自室でカメラ据え置きで撮ってYouTubeにアップしたこの曲のMVが注目を集めたことがCharisma.comが世に出るきっかけになった。僕は2013年6月30日リキッドルームのイベント『モテキナイツ』を観て彼女たちを知ったのだが、「何あのかっこいいやつ! どこで見つけたんですか!」と同イベントのオーガナイザー(大根仁監督)に聞くと、「かっこいいでしょ。たまたまYouTubeで観て知ったの」と言っていたのを憶えている。


 「りぼん」から「HATE」、アンコールまであわせて全32曲。それでもまだまだ名残惜しそうなオーディエンスに手を振り、ふたりは棺桶に戻り、フタが閉まり、いつかとゴンチふたりのCharisma.comの、最後のライブが終わった。


 ゴンチの脱退&引退は、もちろん悲しいし残念なことだが、正直、「いったいなぜ!?」とか「まったく理解できない!」とは思わない。公式コメント以外にも理由があったのかなかったのか知らないし、そもそも以前に数回インタビューしたことがあるだけなので、詳しい内部の事情とかもわからない。


 わからないが、ほとんど巻き込まれるみたいにデビューした(とそのインタビューで言っていた)彼女にとって、プロミュージシャンとしての人生が「大変すぎた」ことは、想像に難くないので。


 いつかに関しては、2月~3月に東京と大阪で行われる、屋良朝幸プロデュースの舞台『DISCOTHEQUE』への出演が決まっている他は、まだ具体的なアクションはアナウンスされていないが、メリヤス♀等でも活動をしてきた人だし、Charisma.com以外の形態で音楽を続けていくことも十分考えられるし、ゲストとか客演とかソロとかいろいろやっていくことも、全然あり得ると思う。というか、メリヤス♀がソロか、そもそも。


 なので「このままなんにも新しい音が聴けなくなるかも」という心配はしていないのだが、ただし。しばらく時間が空いてもいいし、ユニットの形が変わってもいいので、Charisma.comとしての活動がいつか再び始まることを願う、ファンとしては。


 「OLの日常生活的視点からのリリック」から始まって「今この国で普通に暮らしている人なら誰もが抱える感情を冷静にかつリアルに綴っていく」まで到達したあのリリック。ラップとメロディを自在に行き来するあの声。四つ打ちエレクトロハウスから始まって最新作では「ベースとラップだけでもOK」まで進化したあのサウンドプロダクト。それらで形作られるCharisma.comの音楽は……というか、あえて言うなら「Charisma.comというフォーマット」は、まだ果てしなく発展の可能性があると思うので。「やることはやった」とか「これ以上無理」みたいなデッドエンド感、全然ないので。ミニアルバム3枚とフルアルバム2枚では全然足りていないので。まだまだおもしろいこと、やれると思うので。


 逆に言えば、今後どんな形でも、Charisma.comはあり得る気もする。いつかひとりでCharisma.comを名乗るのもあり。ゴンチの後に誰か加入するのもあり。複数MCのグループになるのもありだし、メンバーにダンサーとかいるのもありだし、いっそバンドになったりするのもありだと思う。


 いつかまた動き出すことを、楽しみに待ちたいと思う。(文=兵庫慎司)