2018年02月08日 19:52 弁護士ドットコム
朝日新聞の慰安婦報道で名誉が毀損され風評被害に遭ったとして、日米の有力紙に謝罪広告を掲載することなどを求めた裁判は2月8日、東京高裁で控訴審判決があった。一審判決と同様に請求は棄却された。原告代理人の徳永信一弁護士は「最高裁への上告は今後検討する」としている。
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判決はまず、今回の裁判で問題になっている朝日新聞の記事は、「当時の旧日本軍ひいては大日本帝国ないし日本政府に関するものであって、控訴人(原告)らの名誉が毀損されたものとは認められない」と指摘。
その上で、記事の「吉田証言」が国際世論にどう影響を及ぼしたかについては、米下院決議の説明資料に吉田氏の著書が用いられておらず、韓国では既に昭和21年頃から慰安婦報道があったことなどが認められるとし、「直ちに控訴人らがいう20万人・強制連行・性奴隷説の風聞形成に主要な役割を果たしていると認めるには十分ではない」と判断した。
原告側は、記事が原因で、日本人に対する侮辱や脅迫、いじめ、嫌がらせなどがアメリカ在住の日本人らに対して行われたとも主張した。
だが判決は、「第三者がどのような思想、意思を形成してどのような行動をとるかは当該第三者の問題」とし、仮に記事を読んで日本人に対する否定的評価を持ったとしても、記事の掲載と、受けたという被害との間の相当因果関係を認めることはできないと結論づけた。
判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した徳永弁護士は、「因果関係について正面から否定するわけでもなく、相当因果関係を認めるわけでもないという中途半端な形だ。棄却されたのは残念だが、今後も問題提起を続けていきたい」と述べた。
朝日新聞社は「弊社の主張が全面的に認められたと考えています」(広報)とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)