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ラリークロスにも電動化の波。世界ラリークロスが2020年にフルEVシリーズへ変貌か

2018年02月08日 16:12  AUTOSPORT web

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シトロエンが2008年にエネルギー回生技術のスタディとして開発した「C4 WRC HYmotion4 Concept」
WorldRX世界ラリークロス選手権が、2020年シーズンに完全なフル電動車両によるチャンピオンシップに生まれ変わる可能性が高まっていると報じられた。また、そのエレクトリック・ラリークロス参戦に向け9つのマニュファクチャラーが興味を示しているという。

 WorldRXでは、2017年8月に電気自動車で争われるEVクラス導入計画を発表しているが、あくまでサポートクラス。トップカテゴリーの“スーパーカー”は従来の内燃機関を搭載するマシンで争われる予定だった。

 しかし、最新の情報によれば、このフルEVマシンがガソリンエンジン車を押しのけ、トップカテゴリーのスーパーカークラスに取って代わる可能性が高まっているという。

 とある情報筋によれば「電動ラリークロスは世界選手権として開催する必要がある。そのため、フルEVクラスはワールドチャンピオンシップとして開催される可能性が高いだろう」と、その内情を明かした。

「2020年のシリーズ創設時には、少なくとも15台のマシンが必要になる。現時点では9つの異なるマニュファクチャラーが参戦に向けた協議や交渉の場を持っていることを把握している」

「一方で、そうしたマシンを持たず、競争力のあるEVマシンを作り上げる能力のないプライベーターに対しても、彼らが望めばフル電動マシンに必要なコンポーネントを調達し、マシンを販売するように各マニュファクチャラーに働きかけを行っているようだ」

 この新たなフルエレクトリック・ラリークロス車両は、共通のカーボンモノコックと安全構造を採用し、サスペンションやブレーキシステムなど、電動コンポーネント以外の部分に関してはシャシーキットとしての供給が見込まれている。

 モーターも単一のサプライヤーだけでなく、カーボンモノコックの上にかぶせることになるFRPコンポジット製のボディシェルに関してもフリーとなるため、参戦に際してはさまざまな車種、モデルを使用することが可能となる。

 それらのボディシェルは従来のスーパーカーよりわずかに大型化されると見られ、リヤエンドにはより大型の空力デバイスやエアロダイナミクス優先のデザイン処理が施されることになる。

 こうした流れと対照的に、従来まではトップカテゴリーの座を維持するとみられていたスーパーカーに関して、前出の関係者は「それがすぐに600馬力級の内燃機関マシンの終焉を意味するものではない」とも語っている。

「エレクトリックWorldRX(E-RX)の台頭で姿を変えることにはなるが、既存のスーパーカーも100%存続する。マーケットが望めば、欧州選手権としてだけでなく、ヨーロッパ域外でも何らかの形で国際選手権を開催することはできるだろう」

 この規定とフォーマットの構造は、昨年複数回にわたって開催されたFIAとテクニカルワーキンググループ、WorldRXプロモーターのIMGとの協議の結果によるもので、その席には数社のマニュファクチャラー幹部も参席していた。

 実際、大手マニュファクチャラーのいくつかは公式にエレクトリック・ラリークロス参戦への興味を示しており、昨年のクリスマス前にはプジョー・スポールのディレクターを務めるブルーノ・ファミンが、将来のE-RX参戦に向け2018年WorldRXシーズンでの体制強化を図ると明言。

 また、マティアス・エクストロームへの支援継続と強化の一環として、チームの名称を『EKSアウディ・スポーツ・チーム』としたアウディ・スポーツのディレクター、ディーター・ガスも「2017年はWorldRXで非常にポジティブな経験を集められた。我々としてもシリーズ成長の可能性を確信している」と、E-RXへの発展に向け興味を示している。

「中期的視点では、モータースポーツの電動化とその車両開発はアウディでもフォーカスしているトピックであり、このレースシリーズ(WorldRX)でも電気自動車が導入されることを期待している」

 また、今年6月に開催されるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)に、完全自社開発の電動マシンでの参戦を表明したフォルクスワーゲンは、この新型フルEVパイクスピーク・アタッカーが将来のE-RX参戦車両開発に向けた学習プロジェクトであることを認めている。