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慶介(亀梨和也)と百々瀬(藤木直人)は似ている? 『FINAL CUT』直接対決の行方

2018年02月07日 23:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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「メディアは、私の表現媒体である」。


 2月6日に放送された『FINAL CUT』(カンテレ・フジテレビ系)の第5話「疑惑を真実にした男 人気司会者の正体!」。12年前にメディアに母・恭子(裕木奈江)を女児殺害事件の犯人扱いされ、無実の罪で亡くした男・中村慶介(亀梨和也)は、母を死に追いやった番組関係者に次々と、公開されると人生が終わる映像“ファイナルカット”を突きつけていた。そんな中で、当時、恭子を犯人だと断じたのが、ワイドショー番組『ザ・プレミアワイド』人気司会者の百々瀬塁(藤木直人)であることを知った慶介は、彼の行動や経歴を洗い始める。


参考:『FINAL CUT』亀梨和也×橋本環奈×栗山千明の三角関係、ついに修羅場に!?


 第5話では、ついに慶介と百々瀬の直接対決が繰り広げられた。第1話から、自身の冠番組『ザ・プレミアワイド』に、異常なまでの情熱とプライドを見せていた百々瀬。番組のプロデューサー井出正弥(杉本哲太)が、取材者に対して事実と異なる内容に編集し放送したことを謝罪したと会議で報告すると、百々瀬は「その程度のものをよこしたのか? この俺に」と激怒し、井出の自尊心の象徴である“放送協会賞 奨励賞”のトロフィーを何度もテーブルに打ちつけ、ぶち壊す。そして、まるで舞台の上であるかのように、芝居がかった口調で「さぁ、てぇへんだ! てぇへんだ!」と瓦版屋の真似をし始めるのだった。(ちなみに、百々瀬は学生時代に劇団に所属しており、演劇をやっていたという。)その姿は、狂気そのもの。百々瀬は、『ザ・プレミアワイド』の“顔”にして、絶対の権力を持つ男。周りのスタッフが表では萎縮し、裏では「ハッキリ言ってサイコパス」「スーパー二重人格」と陰口を叩くほどの異彩を放つ、独裁者なのだ。


 チェインストーリーの中で、『ザ・プレミアワイド』のディレクター・小池(林遣都)は、百々瀬のことを「何もかも完璧すぎて人間味ない」「ミスターメディア、ミスタープレミアワイド」と口にし、カメラマン・皆川(やついいちろう)もまた、「確固たる信念と絶対的存在感」がある人と評している。さらに皆川は、百々瀬が『ザ・プレミアワイド』の司会に抜擢される前から今日までを振り返ってもいた。百々瀬は、ハードニュース寄りだった『ザ・プレミアワイド』を、お茶の間の主婦が喜びそうな柔らかいネタ重視の番組に変えたという。その改変により視聴者も付き始め、同時に、時代は高度なネタをエンタメで見せるワイドショーの流れになったのだとか。皆川は「(先を)読めてたんだろうな~百々瀬は」と呟く。


 そう、百々瀬は一筋縄ではいかない強敵だ。今回もまた、“ファイナルカット”を突きつけた慶介の先を読み、いともたやすく問題を消し去る。思えば、井出が「例の信用金庫、やはり、取材続行ということで、どうでしょうか?」と2度目の相談を持ちかけた時、百々瀬はすぐに異変に気付き、「何だ? 何があった?」と裏で何かが起きていることを想定していた。そして、井出が慶介に脅されていると知れば、不敵な笑みを浮かべ「面白いじゃないか」と全く動じない。むしろ、「君の特集なら、いくらでも組むよ」「親子揃って、うちに貢献してくれるってわけか」と“食われる前に食う”宣言までしていたのだ。


 その宣言通り、“ミスターメディア”の百々瀬は、“みんなが見て喜ぶ、透明な檻の中に”入る危険性を回避している。『ザ・プレミアワイド』という全国ネットを使って、アメリカで有名なマスコミ騙し人であるジョイ・スカッグスを例に挙げ、慶介の“ファイナルカット”を無効にしてみせたのだ。スカッグスは、「報道を無条件に信用する人々に警鐘を鳴らしたい」という理由で、フェイクニュースを流していたという。慶介が百々瀬に向かって放っていた言葉「報じたら事実になるんだよ! でもそれは、真実じゃない」が頭をよぎる。大半の人が報道を無条件に信用する今だからこそ、一度報じられたら、たとえ真実でなくても事実になってしまう。そして、スカッグスのもう一つの言葉「メディアは、私の表現媒体である」は、まるで百々瀬のセリフのようだ。『ザ・プレミアワイド』は、百々瀬の表現の場になっているのだから。


 余談だが、これまでのチェインストーリーのタイトル「FAKE~偽りの顔~」、「IDEOLOGY~信念~」、「NIGHTMARE~悪夢~」、「ATTRACTION~魅力~」、「LIAR~嘘つき~」はすべて慶介にも百々瀬にも当てはまるように思う。中村(早川)慶介のほかに、吉澤優と高橋守、そして山田哲也という“偽りの顔”を持つ慶介と、世間のイメージとは異なる、“偽りの顔”を持つ百々瀬。そんな慶介と百々瀬はともに人を惹きつける“魅力”も持ち、たとえ誰かを傷つけることになっても、自身の“信念”を曲げずに突き進んで行く。そう、“嘘をつき”ながら。そして、慶介は12年前に、みんなが見て喜ぶ、透明な檻の中に突然入れられるという“悪夢”を見ている。百々瀬も慶介に“ファイナルカット”を突きつけられた時に、苛立ちとともに珍しく少しの動揺が垣間見えた。ただでさえプライドが高い百々瀬。加えて、プライベートでボロがでないよう、慎重に生活していたのだから、あの映像を撮られて脅されたのは“悪夢”のような出来事だっただろう。秘めている想いは違えど、もしかしたら慶介と百々瀬はとてもよく似ているのかも知れない。(文=戸塚安友奈)