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アーティストを“再現”するステージは増えるか? 『ハーフタイムショー』プリンスの例を機に考察

2018年02月07日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『第52回スーパーボウル』ハーフタイムショーで現地時間2月4日、ジャスティン・ティンバーレイクがパフォーマンスを行った。今回の『スーパーボウル』がミネソタ州ミネアポリスのUSバンク・スタジアムで開催されることを受け、同州出身プリンスの「I Would Die 4 U」を披露し、リスペクトの意を示したジャスティン。その際、バックに巨大なプリンスの映像を投影し、「I Would Die 4 U」を一緒に歌うという演出を行った。実はこのパフォーマンスには、プリンスが生前ホログラムを使ってほしくないと明言していたことを受け、シーラ・Eらとの話し合いの結果、直前にホログラムを使用しないパフォーマンスを行うことになったという経緯があった。


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 今回のパフォーマンスではホログラムは使われなかったが、こうした大物アーティストや故人をテクノロジーを用いて再現する動きは珍しくない。そこで、海外の動向に詳しいジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。


「ホログラムを使って亡くなった方やキャリアのあるアーティストの若い頃を再現するライブは、この1、2年で非常に増えたように思います。以前の2パックやマイケル・ジャクソンのホログラムなどでは主にCGを使っていましたが、近年はアーティスト本人や、ボディダブル(代役)をモーションキャプチャで撮影しています。実際の演奏やステージパフォーマンスの映像に、後から顔や衣装をCGで組み合わせていく、映画などで使われている技術を用いているんです。先日公開された、ツアー活動から引退を発表したエルトン・ジョンによるVR映像にも同じ技法が使われていました」


 また、ジェイ氏は、フランク・ザッパのホログラムとバンドメンバーが一緒にライブで演奏をするというパフォーマンスで、各地を回るツアー形式のショーで行なったことや、オペラ歌手のマリア・カラスのホログラムの周りでオーケストラが生演奏する世界ツアー(初日は東京)の開催にも触れ、その魅力を以下のように語る。


「プリンスもそうですが、デヴィッド・ボウイなど大物アーティストや故人のホログラムを使ったパフォーマンスを世界ツアーで観たい、と思っているリスナーは多いと思いますし、今後もこうした取り組みは増えていくと思います。人気があってライブのチケットが取れなかったり、来日が頻繁ではなかったアーティストが、ホログラムとはいえ実際にバンドメンバーと一緒に生演奏してくれるのを目撃できるのは、非常にエンターテインメント性の高い体験でしょう。最近では『LA LA LAND – IN CONCERT』のような映画音楽を再現するコンサートも増えています。そうしたコンサートで俳優がホログラムで登場して、周りで生演奏することも十分に考えられますね」


 通常の映像と異なり、より立体感のあるホログラムはライブやコンサートの新たな楽しみ方として注目を集めていきそうだ。逝去や引退など生で観ることが難しいアーティストのパフォーマンスを追体験できる技術として、さらなる進化を遂げていくことを楽しみにしたい。(村上夏菜)