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EXILE HIRO × 別所哲也が語る、『CINEMA FIGHTERS』のビジョン 「ミュージックビデオでもシネマでもない、新しいジャンルを」

2018年02月06日 12:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 EXILE HIROが率いるLDH JAPANと、別所哲也が代表を務める国際短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバル&アジア、そして作詞家の小竹正人の3者がコラボレーションしたプロジェクト『CINEMA FIGHTERS』の第1弾が、全国公開中だ。


参考:芸能事務所が映画配給を行うメリットとは? LDH picturesの可能性を探る


 三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Unfair World」をモチーフに、山田孝之主演、河瀬直美監督で映像化した『パラレルワールド』をはじめ、『キモチラボの解法』『Snowman』『色のない洋服店』『終着の場所』『SWAN SONG』の計6本のショートフィルムが製作され、これらの作品がまとめて上映されている。


 リアルサウンド映画部では今回、EXILE HIROと別所哲也の対談を行い、『CINEMA FIGHTERS』の反響や、音楽とショートフィルムの持つ可能性、さらには今後のビジョンについてまで語り合ってもらった。


■別所「“ムーブメント”を感じていただけた」


――ちょうど第2弾の制作が発表されたタイミングではありますが、まずはこの『CINEMA FIGHTERS』という企画に関しての手応えから、お聞かせください。


別所哲也(以下、別所):『CINEMA FIGHTERS』という企画は、僕が代表を務めている「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」のオープニング作品として去年の6月に披露させてもらい、すごく多くの方に興味を持っていただいたんですね。それは、LDHのアーティストを愛してらっしゃるファンのみなさまもそうなんですけど、ことさら映画に関わっている人たちからも、すごく良い反応をいただいて。そういう意味でも、こういう音楽とシネマの新しい形――いわゆるミュージックビデオではない映画とのコラボレーションというのは、きっと新しいジャンルであったり、新しい成果を作っていくんじゃないかと思っています。


HIRO:初めはすごい手探りな状況で、ただアイディアを出していくだけだったんですけど、そこからホントにたくさんの方々に関わっていただけるようになって、いろいろなものが具現化されていって……そのあいだにも、また新しいアイディアが生まれるという繰り返しだったので、それが今こうして劇場公開を迎えることができて、本当に嬉しいですし、また新たなスタートラインに立ったという感じがしています。


――この企画の発端について、HIROさんから改めてご説明いただけますか?


HIRO:ミュージックビデオでもない、シネマでもない、新しいジャンルを作りたいというか、新しいマーケットを開拓できたらなっていう思いで、この企画を始めたんですよね。もちろん、その根本にある僕の原動力は、自分の仲間たち――EXILE TRIBEのメンバーを含めたLDH所属の子たちの夢を叶えるために、いろいろなエンターテインメントを作っていきたいっていうところであって。今回の企画を通じて、LDH所属のみんなもすごくステージが上がったと思いますし、何よりも、そういう「場所」を作れたことが、僕としてはすごく嬉しいんですよね。ただ、これからが本当に勝負だとは思っていて。こういう今までないようなアプローチのものがスタンダードなものになることを目指して、いろんなアイディアをさらに付け加えていって、多くの人たちに「LOVE DREAM HAPPINESS」を感じていただけるような、そういうシリーズにしていきたいです。


――お二方とも、この企画にかなり手応えを感じているようですが、特にどういった部分が人々の興味を引いたのでしょうか?


別所:LDHのアーティストの方々が、どのような演技をするのか、そこにどういう物語があるのかっていうことに、まずは興味を持っていただけたようです。あと、倍賞美津子さんだったり鹿賀丈史さんだったり、LDH所属の方々以外に、すごく大物の方々にも出演していただいているので、率直に「え、これって、何が動き出しているの?」っていう驚きを持っていただけたというか。そういうムーブメントを感じていただけたのが、僕としてはすごく嬉しかったですね。


HIRO:そうやって、ひとつの「お祭り」というか、多くの方々に関わっていただけたのは、やっぱり別所さんがこれまで培ってきたキャリアであったり、人柄みたいな部分も大きかったのかなと思います。だからこそ、そういう大物の方々が集まってきてくれたと思うので、そこはすごく感謝していますし、僕自身もいろいろと勉強になりましたね。僕らは僕らで、音楽であったりとか、自分たちが得意な分野は、しっかりと構築するようにして。そうやって、いろんな業界をミックスさせられたことは、ひとつポイントだったんじゃないかなって思います。


――いろんな分野をミックスすることによって、そこにさまざまな出会いが生まれたと。


HIRO:たくさんの出会いがありましたね。たとえば、今回の企画で河瀬直美監督と出会って、そこで波長が合って意気投合したことによって、今度『Vision』という河瀬監督の新しい映画を一緒に作るところまで話が繋がったり……それは監督さんだけではなく、役者さんも、今までも知り合えなかった方と、この場で知り合えたりするわけじゃないですか。自分としては「LOVE DREAM HAPPINESS」という、自分たちのど真ん中にあるものを、多くの方々と共有できたことが、すごく嬉しかったです。だから、この企画自体を継続して大きくしていくことはもちろんですけど、そこで人と人が繋がっていくことに一番の価値があるのかなと思います。


■HIRO「会った瞬間の波長が合った」


――最初の「仲間たちが活躍できる場所を作る」話もそうですが、HIROさんは、そうやってさまざまな人が集まる場所を作ることが得意ですよね。


別所:ホントにそうですね。それこそ、僕が初めてHIROさんにお会いしたときに感じたのは、もうとにかく「与える人」という感じで。しかも、「誰でもウェルカム」であるっていう(笑)。僕は、そういうHIROさんの根本的な人間性に惹かれたんですよ。僕も芸能界が長いから、いろんな人たちに出会ってきているのですが、HIROさんほど有名無名に関係なく、みんなが楽しければ、そこに絶対新しいことが生まれるんだって信じている人はいない気がして。だからこそ、何か新しいムーブメントが作れると思うんですよね。


――新しいムーブメントというと?


別所:僕らの先輩たちが作ってきた、20世紀のエンターテインメントがあって、もちろん、僕もそういうもののなかで育ってきたし、リスペクトもしているんですけど、今はもうインターネットの時代になって、否応なしにいろいろなことが変わってきているわけです。それこそ、AIスピーカーに「何か面白いショートフィルムが観たい」って言ったら、スマホに動画を送ってくる時代になっているわけで。だからこそ、作り出す側である僕らも、何か新しいことにチャレンジしていかないといけないっていうのは、常々感じているんですよね。今までのように、誰かが作ってくれた乗り物にただ乗っかっていても、もはやどこにも連れていってもらえない気がするというか。


――なるほど。最初にこの話を聞いたときは、少し意外な組み合わせのように思いましたが、今こうして話を聞いていると、別所さんとHIROさんがタッグを組んだのは、ある意味必然だったのかなと。


HIRO:そうですね(笑)。ただ、それこそ僕は最初、別所さんがご自身で作り上げてきた「ショートショート」のおしゃれなイメージもあるから、僕らみたいなド派手なエンターテインメントをやっている人間は、ちょっと敬遠されるのかなと思っていたところがあって。でも、実際会ってお話したら、「是非一緒にやりましょう!」みたいな感じで……。


別所:そういうの、僕は大好きですから(笑)。


HIRO:もう会った瞬間の波長が合ったといいますか。僕が言うのも生意気なんですけど、役者業をされながら映画祭の代表もされて、ああいうおしゃれなブランドを確立されているにも関わらず、そこになおかつ冒険心があるというのをすぐに感じられたんですよね。


別所:最初LDHさんが映画に興味を持っていると聞いたとき、音楽業界ですでに一大ブランドになっているのに、何で映画なんだろうって思ったところがあって。だけど、実際会ってHIROさんと話したら、すごく映画愛があるし、そうやって新しいエンターテインメントの世界を切り開いていくんだっていう熱い思いが感じられたんですよね。しかも、それを日本だけじゃなくて、ボーダーレスにやりたいんだっていう。それは僕がずっと思っていたことにも共通するものであって……エンターテインメントに国境や人種は関係ないというか、むしろそれを繋ぐものなんだっていう。僕は、そういうことを根本から思っているような人間だったから、HIROさんとそういう話ができてめちゃくちゃ嬉しかったというか(笑)。他の人だと、駆け引きみたいなものがあったりするわけじゃないですか。


HIRO:ああ、それは僕も同じですね。というか、僕、駆け引きゼロなので(笑)。思ったことは、全部言ってしまうんですよね。


別所:何かを慮ったりすると、本当にいいものってできないと思うんですよね。だけど、HIROさんは、そういうところがまったくなくて、いつも本音で話し合えるんです。


――お二方とも、「アート」よりも「エンターテインメント」の人なんでしょうね。何よりも、みんなを楽しませるものを生み出したいという。


別所:それは、僕も感じますね。やっぱり、人に伝わらないと何も意味がないというか。


HIRO:僕もそうですね。ただ、僕の場合、そこにアート寄りなものを混ぜてみたらどうなるのかなって考えるのが好きなタイプかもしれないです(笑)。


――たしかに今回でいうと、河瀬監督はどちらかと言うとアート寄りの人ですよね。


HIRO:そうですね。河瀬監督、最高です(笑)。そう、河瀬監督の新しい映画に、ガンちゃん(岩田剛典)が出演することになったんですけど、その共演者であるジュリエット・ビノシュさんが、ガンちゃんのことを大絶賛してくださって……。


別所:「もう、大好きになっちゃった」って言っていて。このまま、フランスに連れて行かれちゃうんじゃないかっていう(笑)。


■HIRO「全部をミックスして楽しんでもらえる空間を」


――すでに現在制作中であるという第2弾は、どんな感じになっていきそうですか?


HIRO:第1弾は、すでにある曲から物語を作っていったんですけど、次は新曲で全部作っていきたいと思っています。映画館に行って、その映画を観て、そこで初めて新曲が聴けるというスタイルって、今までなかったと思うんですよね。作詞家の小竹正人さんには、もうすでに6曲作っていただいていて、そこに新しい監督さんを選定させてもらって、そこから主役のメンバーを選ばせてもらってという。そういう感じで、今まさに作っているような感じです。


――なるほど。第2弾は、既発曲ではなく、曲を書き下ろすことから始めたわけですね。


HIRO:はい。音楽の聴き方とかが、今、すごい変わってきているなか、映画館で映画を観ながら新曲を聴くインパクトって、どんな感じなんだろうと思っていて。第1弾は既発曲だったから、ちょっと先入観が入ってくるじゃないですか。でも、第2弾はそういう意味で、先入観がまったくないと思うんですよね。あと、監督さんたちがその曲をどう解釈するかが、僕たちとしては非常に面白くて。ミュージックビデオの場合だと、大体想像するものが一緒なんですよね。恋愛の歌だったら、こんな感じとか。だけど、映画監督の方々は、ストレートな解釈ではなくて、何周も回った表現をしてくるんです。それは僕らにとってもすごい刺激的だし、映画監督の発想っていうのは、本当にすごいと思います。


――その他に、何か考えていることはありますか?


HIRO:これはまだ未定なんですけれど、『HiGH&LOW THE MOVIE』のときに、僕らはよく舞台挨拶とかでライブをやったりしたんです。そういう感じで歌を歌ってもいいのかなと。いずれにせよ、全部をミックスして楽しんでもらえる空間を作れたらいいなって思っています。


別所:それはすごくいいですよね。映画を映画館で観るのって、すごく貴重な体験だけど、それこそ今、僕らは「1126THEATER(いい風呂シアター)」っていう、銭湯でショートフィルムを観るイベントをやっていたり、フェスみたいに森の中で映画を観る企画をやっていたりするんです。やっぱり、体験として楽しいということが大事というか……それはアトラクションムービー的なものも含めて。ディズニーランドだって、ディズニーアニメの楽しい夢を、みんなが見られる場所を作ったわけで。そういう体験の在り方っていうのは、ひとつヒントになるような気はしています。


HIRO:先日、『HiGH&LOW』のイベントで、12000人ぐらいが一緒に映画を観て、そのあとライブを観るっていうのをやって、そのライブビューイングもやったんですけど、それってつまり、一回の上映を合計3万人ぐらいの人が同時に体験したことになるんですよね。もちろん、『CINEMA FIGHTERS』の場合は、バラードが中心になってくるので、それとはちょっと違う感じになると思いますが、とにかく今までにない新しい視点で、何か観る人の心を揺さぶるようなものをやっていきたいです。


――今年6月に開催される「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2018」でお披露目する予定ですか?


別所:はい、その詳しい中身については、これから順次発表していくと思います。どんな人が、どんな楽曲で、それを誰が監督してというのを、みなさんいろいろと想像しながら、ワクワクしていただけたら嬉しいです(笑)。映画ファンは、この映画を観て、LDHさんが作り出す音楽的世界にもっと近づいて欲しいし、LDHのアーティストのファンのみなさんには、これをきっかけに「やっぱり映画って面白いじゃん」とか「ショートフィルムをもっと観たいな」って思ってもらえるような、「架け橋」のようなシリーズにしていきたいです。


HIRO:このまま第2弾、第3弾と継続していきたいですね。新しいジャンルを作りたいというのをテーマとしてやっているので、続けることはすごく大事だと思っています。もちろん、興行的にも成功できたら嬉しいんですけど、本質的な目的は、そこでいろんな出会いがあったり、そこからいろいろなものに繋がっていくことなので。だから、あまり一喜一憂して変に焦らずに、いいものはいいっていう思いで、ずっと作り続けていきたいです。(麦倉正樹)
※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記