2018年02月06日 11:02 弁護士ドットコム
厚生労働省で、労働者と使用者の双方が注目する検討会が2017年末に始まった。「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」というもので、2018年夏をメドに一定の結論を出す。要するに、給与支払いを求めることのできる期間を現行のままにするか、大幅に引き延ばすかについて議論し、取りまとめる。
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今回議論される「消滅時効」とは、権利を使うことができるのに一定期間行使しないことで、その権利が消えてしまうことを意味する。議論の結果次第では、未払い残業代の請求期間が大幅に延長され、労働者側は歓迎、使用者側に戸惑いが走るなどということもありうる。
そもそも、検討会が立ち上がったのは民法の改正による影響だ。
民法はもともと174条で給与の消滅時効を1年とし、その上で、労働基準法115条が特別に2年に伸ばしていた。「労働者の保護と取引安全の観点から、民法に定める消滅時効の特則として賃金等請求権の消滅時効期間の特例が定められて」いたためだ。(厚労省資料より)
一方、2020年4月1日から施行される改正民法166条は、「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」と規定。このため、労働基準法の「2年」をどのようにすべきかが問題になっている。
検討会での主な論点は以下のとおりだ。
(1)賃金請求権の消滅時効の期間について、どう考えるか
(2)消滅時効の起算点について、どう考えるか
(3)年次有給休暇の請求権の消滅時効について、どう考えるか
(4)書類の保存期間などその他の関連規定について、賃金請求権の消滅時効のあり方を踏まえてどう考えるか
2月2日にあった第2回会合では、労働者側と使用者側の双方の考え方について複数の弁護士が意見を述べた。なかには、使用者側の考え方をただす厳しい意見もあったという。
厚労省労働条件政策課によると、今後、労働者団体や使用者団体にもヒアリングをしていく。検討会で得た成案は、労働政策審議会に送られ、必要に応じて労働基準法が改正される見込みだ。改正する場合、「改正民法が施行される2020年4月までにするのがベストでしょう」(同課担当者)としている。
労働者側の理屈が通るか、それとも使用者側の理屈が通るのか。どちらにしても、多くの社会人にとって他人事ではない結果が待っている。
(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama
(弁護士ドットコムニュース)