この世で一番嫌いなもの。僕にとってそれは"行列"だ。
何かのサービスを受けようというとき、理不尽に待たされることほど無駄なものはない。だから繁忙期のディズニーランドなんて出向く気がしないし、新春初売にわざわざ出向く人の気が知れない。コンビニですら、数人並んでると馬鹿らしくなって何も買わずに帰ってしまう。
時は金なり。待たされた分だけメリットを得られるのならそれも良し。だけど現実には、割に合わないことの方が多い。
2月2日。ソフトバンクはスマホユーザーを対象に、吉野家で並盛が食べられるというクーポンを配布していた。並盛の価格は380円だが、これが無料になったわけだ。(文:松本ミゾレ)
「LINEモバイルに変えて節約して好きなもん食えば?」
僕は「こんな寒い時期に、わざわざ380円分得するからって牛丼なんか食べに行く奴がいるかよ」と思っていたのだが、現実は違った。この日吉野家のあるチェーン店では、無料の牛丼を求めて、1時間待ちの行列ができたというのである。たかが並盛1杯の牛丼が無料になるだけでこの騒ぎ……。
ソフトバンクはかねてより、「SUPER FRIDAY(スーパーフライデー)」キャンペーンと称してミスタードーナツやサーティワンアイスクリームなどの店舗で使えるクーポンを発行してきた。今回は、2月の2日、9日、16日、23日に牛丼並盛が無料になる。
ネット上、とりわけTwitterを覗いてみると、
「並んでまで無料で牛丼貰おうってなるもんかね。行列見て撤収しました」
「ソフトバンクで無料の飯もらうよりLINEモバイルとかに変えて節約して好きなもん食えば?」
と様々な反応が見受けられた。入店待ちの車のせいで渋滞が発生したというツイートもあった。まさに大混乱。混沌である。
寒い中1時間も行列に並んで、380円分の牛丼をゲットするというのは、ちょっと割に合わないように思えてならないんだけどなぁ~それが楽しめるなんて、羨ましい。
盛り上がるのは大いに結構。だけど現場の人員はどうなるの?人件費は?
当の吉野家のスタッフだって大変だ。仮に。もしも仮に当日の繁忙を見込んで、時給が多少アップしていたと考えても、労力の割に合わないのは考えるまでもない。
なんかこう、サービスを提供する側(この場合ソフトバンクね)が、別のサービスを提供する店舗の末端(吉野家のバイトさん)に、本来不要な負担を強いているという構図が妙に腹立たしい。
だってソフトバンクなんて携帯料金はサービス内容の割に対して安くもない。こんな意味不明なサービスを他社を巻き込んでやるぐらいなら、自社のサービスの価格改定でもすればいいのに。
どうしても僕には、毎月数千円ぐらい巻き上げられているユーザーが、たかだか数百円の牛丼がタダでもらえるというクーポンに踊らされているように見えてならない。そりゃ中には「そういう喧騒も含めて楽しんでるんだよ」というユーザーもあるかもしれない。
だけど、楽しむにしたって大した時給でもないのに理不尽な行列に対応を強いられる吉野家の店員や渋滞ぶちかまされたドライバーが可哀想だ。
固定ユーザーに繋がるかも分からない、無料の時だけ押し寄せるような人たちがもたらすものなんて、現場の混乱と疲労だけでしょ。