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NGT48の未来は青空のようだーーTDC単独コンサートを振り返る

2018年02月05日 19:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 NGT48が『NGT48単独コンサート ~未来はどこまで青空なのか?~』と銘打った単独公演を1月13日、TOKYO DOME CITY HALLにて開催した。この日はチームNIIIの荻野由佳、小熊倫実、柏木由紀、加藤美南、北原里英、佐藤杏樹、菅原りこ、太野彩香、中井りか、西潟茉莉奈、長谷川玲奈、本間日陽、村雲颯香、山口真帆、山田野絵、研究生の角ゆりあ、日下部愛菜、清司麗菜、中村歩加、奈良未遥、西村菜那子、宮島亜弥という計22名が参加。チームNIIIの高倉萌香、研究生の髙橋真生は体調不良のため公演を欠席した。


 1月10日に地元・新潟のNGT48劇場オープン2周年を迎え、その記念として8日に「1時間で押された最多手形ペイント」、9日に「100個のおにぎりを作る最速時間」と2つのギネス記録を達成したNGT48。その勢いのまま東京に乗り込んで行われた単独ライブだが、実は彼女たちの単独ライブは2017年1月20日にTOKYO DOME CITY HALLで開催された『NGT48 1周年記念コンサート in TDC ~Maxときめかせちゃっていいですか?~』以来1年ぶりのこと。この1年の間にNGT48をとりまく環境は一気に激変し、昨年1月の『AKB48グループ リクエストアワーセットリストベスト100 2017』でNGT48初のオリジナル曲「Maxとき315号」が1位に輝いたほか、4月にはシングル『青春時計』で念願のメジャーデビューを果たし、同年6月の『AKB48 49thシングル選抜総選挙』では荻野(5位)、北原(10位)、本間(13位)を筆頭にメンバー10人がランクインと着実に人気と知名度を高めてきた。そんなタイミングでの単独ライブだけに、どのような内容で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのかに注目が寄せられていた。


 荻野の影アナを経て会場が暗転すると、AKB48グループの公演ではおなじみの「Overture」のNGT48バージョンが大音量で鳴り響く。会場のファンがリズムに合わせてコールを送ると、スモークが立ち込めるステージに現れた荻野が「世界はどこまで青空なのか?」の冒頭パートをソロ歌唱。そこからリズムインと同時に、他のメンバーも歌に加わっていく。荻野がセンターに立ちグループを牽引する姿は、1年前からは想像できなかったかもしれない。しかし、今の彼女は堂々とその役割を果たし、曲の後半では後ろに振り返ってメンバーとメンバーに向けて歌うなど、頼もしさを見せた。


 続いて「言い訳Maybe」「君のことが好きだから」とAKB48ナンバーが連発され、後者ではメンバーがトロッコに乗ってフロアを移動して観客を喜ばせる。さらにチームNIII最新公演『誇りの丘』から「やさしさに甘えられない」を披露すると、会場は早くも熱気に包まれた。最初のMCでは先のギネス記録についてや、この日の公演が全国22カ所の映画館にてライブビューイングが実施されていることにも触れ、カメラに向けてアピールしてみせた。


 MCでひと呼吸置いたあとは、再びライブへ。研究生による「下の名で呼べたのは …」、チームNIIIによる「青春時計」とオリジナル曲が続く。思えば1年前の初単独公演はまだオリジナル曲が2曲しかなく、単独CDデビューを果たす前のこと。AKB48グループの楽曲や欅坂46「サイレントマジョリティー」などを歌唱することで自分たちの個性を主張したが、今回は3分の1が自身のオリジナル曲とあって、より自分たちのカラーを提示することができたはずだ。実際この日のライブを観て感じたのは、純朴そうな彼女たちの真っ直ぐな目や歌声、全力でダンスする姿から感じるひたむきさ。その様は観ていて気持ち良いものであると同時に、誰もが通過する10代の甘酸っぱさと切なさをふと思い出させてくれるもので、ライブ中何度か自身の学生時代がフラッシュバックする瞬間すらあった。もちろんこれは48グループすべてに共通する項目だし、特に初期のAKB48に強く感じていた部分でもあるのだが、その要素をNGT48が受け継いだと考えることもできないだろうか。それが総合プロデューサーの秋元康の手腕によるものなのか、それともブレイク期のAKB48を支えた柏木や北原によるものなのかはわからないが、何はともあれそういった要素が今のNGT48にとって大きな武器になっており、それがアートワークやMVにも反映されていることは間違いない事実だ。


 そんなことを考えていると、ライブはユニットパートに突入。「LOVE TRIP」では曲中、日下部と清司がアクロバットを披露したほか、「下衆な夢」では加藤がしなやかなダンスで観客の目を惹きつける。また、「カッコ悪い I love you!」(原曲は柏木が在籍したフレンチ・キス)に北原が、「ペラペラペラオ」(原曲は北原が在籍したNot yet)には柏木が参加するなど、興味深い組み合わせも見られた。


 柏木と北原が教師役で他メンバーが回答したテスト答案を発表していくミニコーナーを経て、「大人になる前に」「ぎこちない通学電車」「夕陽を見ているか?」とセンチメンタルな楽曲が連発されたあとは、メンバー22名がダイナミックなダンスをメドレー形式で披露。そこから中井をセンターに据えた「僕の涙は流れない」へと突入すると、これまでの雰囲気から一変してアダルトな世界観を展開。台座を使ったセクシーなダンスを交えつつ、そこから「佐渡へ渡る」(原曲はSDN48)へと流れる構成は、18歳以上のメンバーが半数以上を占めるNGT48の新たな一面を感じさせるものだった。最新シングル『世界はどこまで青空なのか?』に収録された「僕の涙は流れない」という楽曲で見せた新境地が、今後どのような展開を見せていくのか。この日のパフォーマンスはひとつのヒントになるかもしれない。


 セクシーテイストの2曲を経て、さらに場の空気は一転。ジャジーな曲調の「夜風の仕業」ではNGT48の中でも歌に定評のある佐藤と清司がしっとりとした歌声を響かせる。途中から、同曲の原曲歌唱者である柏木が加わると、場内からはひときわ大きな声援が上がり、3人で心地よいハーモニーを生み出しオーディエンスを魅了した。


 ライブ終盤では「未来とは?」(原曲はSKE48)、「ナギイチ」(原曲はNMB48)、「12秒」(原曲はHKT48)と、姉妹グループのシングル曲を矢継ぎ早に披露。そこに最新公演の表題曲「誇りの丘」を交えてから、ダイナミックなダンスをフィーチャーした「RIVER」にてライブ本編を終えた。


 アンコールは「ナニカガイル」「みどりと森の運動公園」とピースフルな楽曲が続く。その後のMCでは北原が1年前との環境の変化について触れつつ、「去年と同じステージ(での公演)だけど、全然違うと思いました」とメンバー個々の成長を感慨深げに語り、荻野も「皆さんが(昨年と)同じ場所に連れてきてくれたことが、本当に幸せです」と涙をにじませながら話す。


 すると、突如スクリーンにて4月13日、14日に朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターでの単独コンサート開催を発表。地元・新潟での大規模公演はこれが初めてということもあり、このサプライズにメンバーからは喜びの声が上がった。しかも、14日の公演は北原の卒業コンサートになることも明かされ、北原自身も「自分なんかが卒業コンサートをやらせてもらえるなんて……」と声を震わせながらファンに感謝の言葉を送る。その姿に荻野や柏木をはじめとするメンバーたちも涙を浮かべながら、喜びを共有した。そんな嬉しい発表とともに、ラストはNGT48にとって大切な1曲「Maxとき315号」とともに、1年ぶりの単独コンサートを笑顔で締めくくった。


 NGT48らしい個性を確立させつつある今、彼女たちが新潟でのアリーナライブをどのように展開するのか。そしてキャプテンの北原卒業後、グループがどう変化していくのか。楽しみと同じぐらい心配もあるかもしれないが、少なくともこの日の公演を観る限りでは心配は無用。荻野や中井、本間、小熊などのメンバーが個々の存在感を増し、他のメンバーもそれに負けないぐらいの魅力を付け始めているのだから、間違いなく彼女たちの未来は青空のように開けたものになるはずだ。(西廣智一)