2018年02月05日 10:22 弁護士ドットコム
近年、携帯電話の校内への持ち込みについて、「授業中は教師に預ける」などの条件付きで許される学校が増えている。これまで、文科省が2001年に出した、携帯電話について「小・中学校への原則持込禁止」「高等学校の校内での使用制限」という通達で学校は指導を行っていた。
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しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災以後、災害時の緊急連絡手段や登下校中の安全性のために、携帯電話を持たせてほしいという保護者が増加。これを受けて、持ち込み自体は許可する学校が出てきている。モバイルマーケティングデータ(MMD)研究所が2017年11月に中高生2721人に調査したところ、中学生で14.5%、高校生で86.5%がスマートフォンの持ち込みを許可されていた。
一方、いまだ持ち込みが許されていない学校もあり、もし持っているのが見つかった場合、教師に「没収」されることが少なくない。一時的な「没収」は、「校長及び教員が児童、生徒、学生に懲戒を行うことができる」という学校教育法第11条に基づくとされる。しかし、中には「没収」が長引いて週末を含む1週間以上に及んだり、「強制解約」までさせられたケースもみられる。
学校や教師による没収の法的効力は、どこまで及ぶのか。畑中優宏弁護士に聞いた。
校則や指導によって生徒の携帯電話などを没収することはなぜ許されるのか?
「学校教育法第11条本文の法的効果は『児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる』というものです。この『懲戒』の一内容として、生徒の携帯電話の没収が行われているわけです。同条は、この効果が生ずるための要件として『教育上必要があると認めるとき』と定めています。
ですから、『懲戒』、つまり、携帯電話の没収が許されるかどうかは、それが『教育上必要があると認めるとき』にあたると言えるかどうかによります。例えば、平日、授業に集中させるために没収する場合、『教育上必要があると認めるとき』にあたる可能性が高いと思います」
では、もしも没収が学校が休みの日を含める長期間に及んだり、最終的に学校側が生徒に返却しなかったりした場合、違法性は生じるのか?
「授業に集中させるためという理由であれば、授業のない休日も含め長期間没収する場合、『教育上必要があると認めるとき』にあたらない可能性が高いでしょう。また、最終的に学校側が生徒に没収した携帯電話を返却しない場合、『教育上必要があると認めるとき』にあたらないので、生徒の所有権(民法第206条)を侵害することになり、違法となる可能性が高いです」
「所持を禁止する」として強制的に解約させても問題はないのか?
「先に述べた通り、授業に集中させることが目的であるならば、学校内での所持を禁止すれば十分ですから、解約させることは『教育上必要があると認めるとき』にあたらず、生徒や保護者の契約締結の自由を侵害し違法となる可能性が高いです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
畑中 優宏(はたなか・まさひろ)弁護士
公立小学校の教員を8年間勤めた後、弁護士をめざして司法試験に合格しました。学校現場の問題には詳しく、相談も多く受けています。
事務所名:弁護士法人湘南よこすか法律事務所 逗子事務所
事務所URL:http://www.sy-law.jp