2018年02月05日 10:22 弁護士ドットコム
青森市に対して市民から20億円もの高額寄付があり、青森県内に動揺が広がっていることが各種メディアで報じられた。
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青森市市民協働推進課によると、寄付は昨年12月26日に申し出があり、同28日に実際に入金があった。「本人の意向」として、市は青森市在住ということ以外、氏名や年齢、性別といった情報も明らかにしていない。寄付者の意向で、市民の健康増進やスポーツ推進に関する事業に今後使う予定という。同課は「ケタ違いの金額」(担当者)と
ちなみに今回振り込まれたのは「ふるさと納税」を管理する口座だが、いわゆる「お礼の品」を贈る対象にはならない。「青森市外にお住いの方」という条件を満たさないためだという。
また、週刊新潮は、寄付者は青森有数のドラッグストアチェーン経営者の男性である可能性を報じている。記事によれば2017年4月、会社ごと大手流通グループ子会社に売却し、男性は145億円もの大金を手にしたという。
青森中がどよめく20億円もの寄付。これほど多額の寄付をした場合、寄付者は税制上、どのようなメリットを受けることが考えられるのか。冨田建税理士に聞いた。
「20億円の寄付とは凄いですね。尊い話ですが、寄付をされた方が個人とすれば所得税等の税額計算に際しての所得控除が受けられます。
個人が国や地方自治体等に寄付をした場合は、寄付をした人が特別の利益を得られる場合を除き、所得税法上の『特定寄付金』として確定申告を行うことで所得税等の減額ができる場合があります。
すなわち、その年の所得税等の計算の基礎となる総所得金額等から特定寄付金に基づく『寄付金控除額』やその他の控除額を考慮し、さらに税率等を考慮して所得税等の額を計算することとなります。
なお、『総所得金額等』とは単純化すれば、給与所得や不動産所得などの色々な所得を合算した額のことです」
「寄付金控除額は、下記の式(計算結果が0円以下の場合は0円)で計算されます。
次のいずれか低い金額-2千円=寄附金控除額
(1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額
(2)その年の総所得金額等の40%相当額
この式に青森市での寄付の場合を当てはめると、(1)は20億円で(2)はこの方の総所得金額等の額が不明ですので具体的な額は書けません。ただ、寄付金控除額は20億円か(2)の金額のいずれか低い額-2千円となります。確定申告をすればこの額が控除でき、納める所得税等が減ります」
「なお、所得税等の計算で配慮される寄付金は、一定の範囲に限られる点をご注意ください。ちなみに法人が寄付した場合も所得税とは計算方法等が異なりますが、一定の範囲で税務上の経費(損金)として法人税額等を減額させることができます。
私は業務でよく地方に行っており、青森市にも3年前に伺いましたが、やや活気が乏しく見えたので、個人的にはこれを機に活性化すればいいなと思いますね。
また、寄付金は税金とは異なり、寄付する方の意思を反映した使い道に特化して使用できる点が良い点です。この件に限らず幅広い寄付金につき、意思を反映しつつ有効活用されているかを皆で見守る社会を作る事が大切と思いますが、いかがでしょうか」
イメージがわきやすいよう、ここで、週刊誌で報道されている企業経営者説を前提として、編集部が独自に試算した結果を記す。
上記の寄附金控除額について、仮に総所得金額を会社の売却で得られた145億円とした場合に、どうなるか。もちろん、実際は売却金額がそのまま課税所得になるわけではなく、諸経費を除いたり、配当所得を加えたりする必要がある。ただそうした金額まではわからないため、145億円という額をそのまま使うことにする。
(1)は既に記載のとおり20億円(2)は145億円×40%=58億円で、(1)の方が低い。そこで20億円-2千円=19億9999万8千円が寄附金控除額となる。確定申告により、この額が控除され、所得税の課税額が減ることになると考えられる。節税メリットはきわめて大きいということがうかがえる。
【取材協力税理士】
冨田 建(とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
42都道府県で不動産鑑定業務の経験があり著書「弁護士・公認会計士・税理士のための不動産の法令・評価の実務Q&A」や雑誌・税理士会会報等に数回執筆。公認会計士協会東京会第四回音楽祭で自作曲「ふどうさんのうた」で優勝。
事務所名 : 冨田建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://tomitacparea.co.jp/
(弁護士ドットコムニュース)