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StarcrawlerからSuperchunkまで……寒い季節にこそ聞きたいロックンロール新譜5選

2018年02月04日 13:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ロックンロールは寒風摩擦みたいなものだと思う。気合いとやせ我慢。寒い季節だからこそ、寒い時代だからこそ、アツいロックンロールを聴くべき。というわけで、今回は欧米のインディーシーンから、ロックンロールのエナジーに満ちた新作を集めてみた。


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■Starcrawler『Starcrawler』
 まずはLAから登場した話題のニューカマー、Starcrawlerのデビューアルバム『Starcrawler』。ギラギラしたギターとドタバタしたドラムは、70年代ロックのハッタリ感を現代に甦らせてグラマラスでパンキッシュ。さらに、バブルガムなポップセンスも持ち合わせている。そんな彼らに惚れ込んでプロデュースを手掛けたのはライアン・アダムス。紅一点のボーカル、アロウ・デ・ワイルドが、蜘蛛のようにひょろりと長い手足を動かしてシャウトする姿もインパクトあり。3月の初来日公演が楽しみだ。


■タイ・セガール『Freedom’s Goblin』
 そして3月には、カリフォルニアのローファイ番長、タイ・セガールも来日。今年ソロデビュー10年目を迎えるなかでリリースされた『Freedom’s Goblin』は、ガレージ、サイケ、グラムなど、ロックンロールの旨味がてんこ盛り。好き勝手にやっているようで、ポップに聴かせるワザをしっかりと心得ているのが天才肌を感じさせるところ。マーク・ボランを彷彿させる歌声やコーラスもばっちりキマっていて、StarcrawlerやThe Lemon Twigsの兄貴分的存在としての貫禄を感じさせる快作だ。


■The Liminanas『Shadow People』
 ボビー・ギレスピー(Primal Scream)が太鼓判を押すThe Liminanasは、南仏出身の夫婦デュオ。『Shadow People』には、アントン・ニューコム(The Brian Jonestown Massacre)、ピーター・フック(New Order)といった英米のロック勢や、ベルトラン・ベラン、女優のエマニュエル・セニエなどフランス勢がゲストで参加。リバーブを効かせたガレージロックと、フレンチポップ風のアンニュイな女性ボーカルが融合したサウンドはサイケデリックで官能的だ。


■No Age『Snares Like a Haircut』
 一方、No AgeはLAのアートスペース、The Smellを運営しながら活動する2人組。<Sub Pop>から<Drag City>に移籍してリリースする新作『Snares Like a Haircut』は、西海岸ハードコアパンクの遺伝子を受け継いだ轟音渦巻くロックンロールに、突然、アンビエントな音響が挿入されたりと、実験的な音作りで独自の化学反応を生み出していく。プリミティブな爆発力とクールな批評性が同居しているあたりは、Wireに通じるところも。


■Superchunk『What a Time to Be Alive』
 そして最後は、老舗インディレーベル、<Merge Records>を運営しながら、DIY精神を貫いてきたSuperchunkの4年ぶり新作『What a Time to Be Alive』。2016年の総選挙でトランプ政権になったアメリカに対する怒りや不安を原動力にして生まれた本作は、そうしたネガティブな題材を、パンキッシュで骨太なロックンロールに昇華させている。感情を叩きつけるような激しいビート、ラウドに響き渡るギター、胸が高まるメロディ。すべてがリアルで揺るぎない。USインディーのベテランが見せた底力に、あらためてロックンロールは死んでいないことを確認した。(村尾泰郎)