特定非営利活動法人のアニメーター支援機構は2月1日、アニメーターに住居支援を行う「新人アニメーター寮」運営費用200万円を目標にクラウドファンディングを開始した。
アニメーター寮は、業界歴3年未満の若手アニメーターが対象。家賃・光熱費・ネット環境込みで3万円で暮らせるというものだ。
同団体は過去4回、クラウドファンディングを行い、合計1063万円を東京都杉並区の3つの寮の運営に充てている。累計25人のアニメーターに住居支援を行っており、今年3月には2つ目の女子寮がオープンする予定だ。
リターンとして、お礼のメッセージやオリジナル画像データ、同団体が運営する「新人アニメーター大賞」作品集、アニメーターの山下清悟さんのムービー、アニメーター寮での食事会などがある。2月4日11時現在、56万5000円が集まっている。
TVシリーズの作画を300枚描いても月収6万 一人前になるには時間がかかる
同団体は住居支援の他、ベテランアニメーターによる絵や作画の技術支援や仕事紹介なども行っている。過去に住居支援者を受けていた人の中には「ガンダム Gのレコンギスタ」作画監督・玉川真吾さん、「甲鉄城のカバネリ」アクション作画監督・川野達朗さんもいる。
現在、日本のアニメ産業の市場規模は2兆円を超えると言われている。しかし日本アニメーター・演出家協会が2009年に発表した実態調査によると、20代アニメーターの平均月収は約9万円、年収だと約110万円だという。
収入が極端に低い理由は、「多くの場合アニメーターは、作画の枚数単価による出来高制で雇用されているから」だという。例えばTVシリーズの枚数単価は200円程度。1か月に300枚描いても月収は6万円だ。しかし新人が300も描くのはかなり大変で、同団体は「1年目の新人アニメーターの場合、月収が3万円程度ということもある」という。
しかし作画のスピードが早くなり、それなりの収入を得られるアニメーターに育つまでには時間がかかる。その上、長時間労働のためアルバイトも出来ない。多くのアニメスタジオが東京に集中しているため、地方から上京している新人アニメーターにとって家賃は大きな負担となっているのが現状だ。
さらに動画担当のアニメーターは業務委託契約で雇われ、正社員は15%。低賃金かつ福利厚生も受けられない状況で働いており、3年以内の離職率は9割にものぼるという。
脱「製作委員会方式」? クラウドファンディングでアニメを作るプロジェクトも
また低賃金の原因の1つに「製作委員会方式」も挙げられる。多くの企業が参加する製作委員会から制作会社へ支払われる制作費は十分な額ではないことが多く、結果アニメーターの待遇が悪化する。さらに収益は全て製作委員会のものになり、アニメーターには還元されないという。
同団体はこの問題に対して、クラウドファンディングを活用して、売上利益がアニメファンから直接アニメーターを中心とした制作現場に還元する仕組み作りに取り組むという。現在、「過去の住居支援者が監督する作品1本」と「公募によって募集した企画をアニメ化する作品1本」の合計2本の作品制作を予定している。