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『アンナチュラル』第4話が突きつけた、“何のために働くのか”という問い

2018年02月03日 16:22  リアルサウンド

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 「何のために働くんだろうな」。久部六郎(窪田正孝)が医大の友人から言われた何気ないひと言が、『アンナチュラル』(TBS系)第4話のテーマだった。ミコト(石原さとみ)の母・弁護士の夏代(薬師丸ひろ子)からの解剖の依頼により、バイク事故で亡くなった佐野(坪倉由幸)の死因を究明する場面から物語は幕を開けた。解剖を実施する当日、勤め先の工場長の松永(春海四方)、バイク屋の店長、病院の弁護士の「賠償金は払いたくない」と言い張る三銃士がUDIに訪れる。佐野の死因としては、


過労→工場
事故死→バイク屋
病気→病院


 3つ原因のどれかであると捜査されており、死因次第で責任の所在が変わる、“責任の所在”の責任をミコトたちは突きつけられた。


 佐野が亡くなったのは仕事の帰り道。「過労なんて事実はない」「バイク通勤を認めていなかった」と言う工場長だが、バイク通勤を認めないにもかかわらず、終電過ぎまで働かせていたこと、140時間を超える時間外労働が未払いであったことを妻・可奈子(戸田菜穂)が訴える。しかし、工場長から「会社への恩を仇で返すつもりですか」と詰められ、息子の祐(藤村真優)の悲しそうな表情を見ると、「裁判になったらまた夫が悪く言われる」と引き下がることを決める。


 しかし、今度は工場長が過労により倒れてしまう。実は一番残業をしていたのが、工場長だった。出荷制限をかけるか作業工程を減らすよう社長(渋江譲二)に直談判するも、跳ね返され、退勤後のサービス残業が続いた。社員が一人亡くなってもなお、社長は「残業は従業員が勝手に忖度した結果」と再びつき返す。


過労→工場(工場長)→会社(社長)


 佐野は、亡くなる30日前に社長の指示により、バイクでケーキを届け、その帰り道の事故で負った傷が引き金となり亡くなったことが判明した。夏代がバックにつき、社長を相手に、従業員全員で未払いの残業代の請求と労働環境改善を求め、裁判を起こすことになった。


 医大の友人に「お前今、何目指してるの」と問われていた六郎。「じゃ、また明日」と一度離れて歩き出したミコトを、六郎は「あっ、三澄さん」と呼び戻し、「三澄さんはどうして働いてるんですか」と尋ねる。聞くのも少し躊躇っていた様子の六郎に比べ、ミコトは「生きるため」と即答。「いや、俺、まだ夢とか見つかってないし」もじもじする六郎にミコトは「夢なんて、そんなお袈裟なものなくてもいいんじゃない。目標程度で。給料入ったらあれ買うとか、休みができたらどっかいくとか、誰かのために働くとか」と伝えた。


 何のために働くのか。工場長は、佐野の死因への責任を問われ、「私だって自分の家族を守るので精一杯なんだ」と訴えて倒れた。佐野は30日前の事故から帰宅した直後「幸せだといいな、こいつら大人になった時」と眠っている子供たちに微笑んでいた。彼らは、家族のために働いていたが、仕事に対するプライドもあり、商品への愛情だってある。しかし、それは「人を死なせてまで、やることなのか」。工場長が社長に思いの丈を伝えたこのひと言が、全てを物語っている気がした。


 物語の終盤には、いつもあらすじの内容とベストなタイミングで米津玄師が歌う主題歌「Lemon」が流れる。「未来の夢」と題名がついた作文の一文目に「お父さんみたいになりたくない」と書いていた祐。父親の同僚たちと共に、事件の手がかりを探すことに参加した祐は、会社で父親の話をたくさん聞いて「楽しかった」と母に伝える。その場面に重なった歌詞の<今でもあなたは私の光>というフレーズが、祐にとっての父親を表しているように響き渡っていた。


参考:石原さとみ、井浦新、窪田正孝が語る『アンナチュラル』の特異性 石原「初めての経験だった」


(大和田茉椰)