トップへ

UVERworldのライブはなぜ胸を熱くする? “有言実行”を体現するバンドスタンスを紐解く

2018年02月03日 11:22  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 全国アリーナツアー『UVERworld TYCOON TOUR』の終盤戦にして、UVERworldにとって10年連続となる日本武道館でのクリスマスライブ『UVERworld Premium LIVE on Xmas 2017』が、昨年12月25日に開催された。


(参考:UVERworld、10年連続の武道館公演に見た“ミクスチャーロックバンドとしての強靭さ”


 実は私はこの日初めてUVERworldのライブを観たため、まずはじめにバンドサウンドの重さに驚かされた。日の丸の下に轟くのは、重低音の効いた刺激的なサウンド。その上に乗るのはTAKUYA∞(Vo)のクリアなボーカルだが、サウンドだけを取り出してみるとラウドロックに近いような印象もあり、例えばここでデスボイスが聞こえてきたとしても何ら違和感のないような、とてつもなく“重い”音をしている。


 ドラムセットがやや高めにセッティングされており、バスドラのビートが客席にダイレクトに届くことも、おそらくそう聴こえる一因だろう。後のMCでTAKUYA∞が、ライブの「やり方」や「見せ方」ではなく「制圧のしかた」という言い方をしていた通り、まさにそういう種類の言葉が似合うような感じだ。この日は、11月から開催されていたアリーナツアー全17公演中の15本目であり、それ以前の8~10月にも、全24公演の全国ホールツアー『UVERworld IDEAL REALITY TOUR』をまわっていたUVERworld。迫力あるサウンドは、約5カ月に及んだ全国行脚の賜物といったことだろうか。


 年に一度の特別な日ということで、「Roots」(3rdアルバム『PROGLUTION』収録)、「心とココロ」(5thアルバム『LAST』収録)などライブで演奏される機会の少ない曲も披露された同ライブ。冒頭には7曲連続で『TYCOON』収録曲を演奏しておりそのライブ構成はまるで、ここ3年でリリースされたシングル曲群“以外”を序盤に固めた『TYCOON』のトラックリストを彷彿とさせる。そんなところからも、今現在の彼らが抱く自信のほどを窺うことができた。


 そしてセットリストが進むにつれて、この重厚なサウンドがどんどんと色を変えていくから面白い。アルバムの中でも一際EDM色の強い「I LOVE THE WORLD」では、同期によるダンストラックとバンドサウンドが大胆に融合。「WE ARE GO」はTAKUYA∞以外の4名が太鼓類の打楽器を叩くことによって、音源よりも土着的な響きに変貌。「IDEAL REALITY」ではサックスの旋律とスラップベースの絡み合いが都会的な華やかさを演出し、「シリウス」ではピアノの和音による澄んだ響きとともに疾走感抜群のサウンドが鳴りわたった。スウィートなラブソング「SHOUT LOVE」では客席から女性2名をステージに上げ、時にはTAKUYA∞が彼女らへ語りかけるように唄うという演出も。そしてそのあとに続くのが、メンバーが横一列に並び、緊迫した空気の中で行われるバンドセッション(「CORE STREAM」)である。


 ご覧の通り、とにかく振れ幅が大きい。UVERworldのサウンドは元々ミクスチャー的な要素が強く、一定の音楽ジャンルにこだわっていないような節があるため、複数の楽曲が連続して演奏されるライブでの情報量は凄まじいことになる。中には洋楽的なノリを求められる曲もあるし、一曲の中でリズムがガラッと変わるような曲もあるため、決して“分かりやすい”曲を作っているバンドではないのかもしれない。しかしそれでもオーディエンスは積極的にライブについてくるし、場内では続々とシンガロングが起こり、一体感に包まれていき、大きな盛り上がりが生まれていくのだ。非常に興味深い現象だ。


 それはなぜか――ということを考える上で見逃せないのが、TAKUYA∞による“言葉”がライブのコンダクター的な役割を担っているという点である。例えば「孤独の中で見つけた唯一の生き方が自分にとってはUVERworldだった」という話をしてから「ALL ALONE」に突入するなど、この日のライブは基本的に“歌詞に登場する言葉に関連するMC→曲の演奏”という構成を為しており、また、ほとんどの曲において演奏中はスクリーンに歌詞が映されていた。そのため、オーディエンスは両者の内容が一致していることを分かりやすく確認することができる。さらに言うと、それによって浮かび上がるのが、『TYCOON』のど真ん中にある――そしてこのバンドが自らのキャリアを通じて手繰り寄せた“自分の道は自分の手で切り拓け”というメッセージであるため、バンドの“言っていること”と“やっていること”が一致しているのも一目瞭然。この、心・技・体の噛み合っている感じこそが、今多くの人々がUVERworldに胸を熱くさせている理由なのではないだろうか。


 9枚のアルバムをリリースしてきた中で離れていった人も少なくないと思う、という話をしながらTAKUYA∞は「でも、悔しいとか、そういう感情はなくなった」「さらに良い楽曲を作って迎えに行けばいい。まだまだ勝負できる」というふうに語っていた。それらの言葉が示す“来るもの拒まず、去る者追わず”的な精神が今の彼らの在り方とバンドの状態の良さを象徴しているように思えた。(蜂須賀ちなみ)