節分を控え、今年も恵方巻のノルマに苦しむ人の声がネットで相次いでいる。コンビニの実名と共に「ノルマ30個だけど未だ0だわ」とノルマの存在を明かす人や、
「15本売るっていうノルマがあって売れなかったら、残りの分を自腹で払うので、買ってくれるって人いたらDMかLINEにお願いします! 1本なら500円以内です」
と、買い取りを強要されているとうかがえるツイートもある。
恵方巻ノルマ問題の背景としてはこれまで、コンビニチェーン本部が各店舗に販売ノルマを課しているためではないかと指摘されてきた。しかし、コンビニ加盟店ユニオンの執行委員長を務める酒井孝典さんによると、「5年以上前には、3日間で約100本売るよう本部に言われることもありましたが、ノルマ問題が多数報道されるようになり、昔のように完全な強要は無くなってきました」という。
ただ、分かりやすい強要はなくなっても、本部からの要望や目標という言い方に姿を変え、さらにコンビニの契約形態が影響し、実質的にノルマとなっている店舗が多いという。
本部に言い返せないオーナーがアルバイトに「最低5本は売ってください」
コンビニ店舗の多くは、チェーン本部とフランチャイズ契約を結んでいる。フランチャイズ契約とは、一定額の使用料を支払う代わりに、特定の商標や商号を決められた期間使える仕組みで、コンビニの場合は1回の契約期間は10年や15年と長期にわたる。
酒井さんによると、一度契約期間が満了した後に再度更新できるかどうかは本部の一存によるという。更新可否の基準も明かされていないため、オーナーの中には、本部の言うことに反すれば契約更新がなくなると考えてしまう人がいる。
「もし、恵方巻の販売目標値を受け入れなければ契約更新の不利益になる、と本部側が言ったとしても、そうした権力の濫用は法律違反なので無効です。でも、それを知らなかったり、強く言い返せないオーナーは、契約更新がなくなるのを恐れ頑張ってしまうのです。心理的な面が大きいと思います。脱サラしてオーナーになった人はそう簡単に辞められませんから、本部に従順になるしかないようです」
この結果、オーナーは店舗アルバイトに「目標達成のため協力してください」「最低5本は売ってください」などとお願いするようになるため、毎年のように「ノルマ問題」が顕在化する、という仕組みのようだ。
大手コンビニチェーン本部「ノルマはない。ネットの呟きは、各店舗が自主的に掲げる販売目標」
従業員にとっては、自分に売り上げ目標を伝えてきた店長やオーナーを責めたくもなるだろうが、元凶がコンビニの構造にあることを踏まえると、店長やオーナーらも板挟みで苦しんでいそうだ。
大手コンビニチェーンの担当者はキャリコネニュースの取材に対し、「ノルマを強制するようなことは一切やっていない。この時期に出てくる嘆きの呟きは、各店舗が自主的に設定している販売目標に関することだと思う」と、本部の関与を否定していた。目標値の設定が本当に自主的と言えるかどうかは、疑問の残るところである。