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JUJUが語る、シンガーとしての歩みと感謝の思い 「東京のおかげで“JUJU”になれた」

2018年02月02日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 映画『祈りの幕が下りる時』のために書き下ろした新曲が表題となるシングル『東京』と、2年2カ月ぶり、通算7枚目のオリジナルフルアルバム『I』。「東京」のMVは、動画サイトでの公開から約1週間で100万回再生突破という大反響を呼び、父と娘のせつなくも愛しいストーリーに涙するファンが続出中だ。その「東京」を含むアルバム『I』は、全曲に異なるプロデューサーを迎え、R&B、EDM、歌謡スタイルなど、過去最高のバラエティに富んだ自信作。デビューから15年目、“最初にやりたかったことがようやくできてきた”と語るJUJUの、飾らない本音の言葉に耳を傾けよう。(宮本英夫)


■「巡り合わせや人との出会いに、感謝しかありません」


――「東京」は、映画『祈りの幕が下りる時』に書き下ろした新曲ということで。このシリーズには縁があって、主題歌は6年ぶりですか。


JUJU:前回、『麒麟の翼~劇場版・新参者~』(2012年公開)に続いて二度目でしたので。ご指名いただいて、非常に光栄でした。何曲かデモを作らせていただいて、この中からもし近いのがあれば、と。そしたらこの曲が選ばれて、それから歌詞をつけていただきました。


――渡したデモというのは、基本、バラード系ですか。


JUJU:そうですね。基本バラードで、ちょっとミディアムテンポのものもあったり、けっこうバラエティに富んだ形でお渡しはしたんですけど。でも「たぶんこれだろう」と。


――予感があった。


JUJU:「新参者」シリーズの最終章は絶対これが合うのではないかと思っていたら、あたりでした。映画のエンディングで舞台になる日本橋の風景とかが入ってきた時に、一番合いそうだなと思っていたので。前作の「sign」からの続きみたいな感じもしましたし、「新参者」感が統一されてる気もして。まさかタイトルが「東京」になるとは思わなかったですけど。


――ぴったりじゃないですか。


JUJU:映画自体も、「東京」がキーワードだったりするし、JUJUというものにとっても、「東京」は一つのキーワードだったりするので。ここに来て「東京」という曲を歌うんだなと思ったら、感慨深いものがありましたね。東京出身じゃないからこそ見える「東京」って、あるじゃないですか。


――そうですね。


JUJU:私もまさか、自分の人生で東京にこんなにお世話になる日が来るとは思ってなかったので。でも東京のおかげで、JUJUというものになれたなと。ソニーさんとは、アルバムを7枚出すという契約を2003年に結ばせてもらって、その7枚目のアルバムを出す直前のシングルが『東京』というのも、なんだか縁深いなと思うので。


――ということは、今はJUJUさんにとって節目の時期なんですね。


JUJU:そうですね。JUJUというのは、私がニューヨークにいる時に決めた名前ですが、東京でJUJUというものが一瞬消えそうになって、首の皮一枚でつながったところから、7枚のアルバムを作るところまで来たのは、すごいことだなと。本当にみなさんに育てていただいたなと思って、聴いてくださるファンの方も、応援してくださる方も、本当にありがたいなと思います。しかも『祈りの幕が下りる時』のお話をいただかなかったら、この曲はできていないですし。巡り合わせや人との出会いに、感謝しかありません。


――「東京」は、渾身のJUJU節、素晴らしいバラードです。


JUJU:映画もぜひ。映画を見たあとに聴くと、たぶん曲の聴こえ方も変わってくると思います。あと、ミュージックビデオもぜひご覧ください。つらいです。


――つらいですか。


JUJU:だいぶつらい。でも「こういう気持ちを歌った曲です」というビデオです。この間、テレビの収録で初めて「東京」を歌う日に、現場に向かう車の中で、「ビデオできたよ」ってスタッフに見せられて。スマホの小さい画面で見てたんですけど、気づいたら号泣してました。私自身も、身につまされます。親の反対を押し切って、東京に出て来たばかりの子が見て、「親を大事にしよう」と感じてくれたらいいなと思いますね。


――そうなんですね。ラブストーリーではなく。


JUJU:恋愛的なラブストーリーではないですね。『祈りの幕が下りる時』も、親子の関係性の絡まり合いとすれ違いが、阿部寛さんと松嶋菜々子さんにどう関係してくるか、みたいな話だったりするので。映画も非常にせつないですし、「東京」も、もちろん恋愛としてとらえていただいて全然いいんですけど、どちらかというと、離れてしまった親や家族に向けての気持ちです。


――スキマスイッチのカバー「藍」はこのシングルだけで聴ける曲ですね。このカバー、すごくいいです。


JUJU:去年の“スナックJUJU”ツアーの仙台公演のあとに、東京から来たお友達とカラオケに行ったんですね。そこにお友達のお友達が来ていて、1曲目に歌ったのがこの曲だった。私、スキマスイッチの曲はほとんど聴いているけれど、この曲はアルバム曲らしくて、知らない曲だったんですね。で、普通にぼーっと聴いて、聴き終わった時に号泣していたという。


――また号泣しちゃった。


JUJU:はい(笑)。ノーガードで聴いたせいもあって。あまりにもいい曲で、あまりにもせつないじゃないですか。もうその人のことが好きなのがしんどいから、存在自体いなくなってしまえ! と思うけど、“来週はいつ会えるんだろう”っていう気持ち。大橋(卓弥)くん、いい曲書くなぁと思って。


■「すべては自分が選び取ったものでありたい」


――そして、2月21日に発売されるアルバムが『I』というタイトルで。オリジナルアルバムは2年2カ月ぶり。本当に素敵なアルバムに仕上がりました。


JUJU:ありがとうございます。私の中でも、一番好きだと言っても言い過ぎじゃないぐらいのアルバムができたなと。今できることを全部詰め込めたし、原点回帰というか、私が1枚目のシングルの頃にやりたかったことが、7枚目のアルバムでようやくできているのかなと思うと、それもまた感慨深いです。


――具体的に言うと?


JUJU:R&Bっぽいものとか、ビートのあるものとか。歌謡から、恨み節から。


――今回、全曲プロデューサーが違うんですよね。それは意図して?


JUJU:特にそういうわけではないんですけど、みなさんお忙しい方なので、誰かと一作すべてご一緒するのが現実的じゃないというのが一つあります。あと、シングルは毎回違う方にプロデュースとアレンジをお願いしているので、「この曲だったら、誰にアレンジをお願いしたら面白いだろう?」というのを、毎回みんなで机上の空論を楽しむんです。それで、「この人は?」「あの人は?」「やっていただけるかどうか聞いてみよう」って。結果、全曲違う方になったということですね。


――しかも今回、小田和正さん(「あなたがくれたもの」)や平井堅さん(「かわいそうだよね(with HITSUJI)」)という、普段あまりプロデュースや楽曲提供をしない方が参加しているという大ニュースがありまして。


JUJU:とてもありがたく思っています。お願いしてみるもんだなと。小田さんに関しては、出会いの最初の頃に、MONGOL800が沖縄でやっている『What a Wonderful World!!』というイベントの第1回(2009年)で、私と小田さん、RIP SLYMEやキヨサクくんなど、仲のいい人ばかりが出て。普通だと終わってから打ち上げをやると思うんですけれど、そのイベントは先にやっておこうということで、前夜祭があったんです。そこのアーティストエリアがおかしくて。飲むものが、ビールか古酒の泡盛、普通の泡盛しかないんですよ。「お茶とかないんですか?」「ないです」「お水は?」「お水もないです」。でも泡盛の水割りは作ってくれるんですよ。


――水あるじゃん(笑)。おかしいなあ。


JUJU:そこでみんなベロベロのなかで、小田さんともたくさんお話することができて。その後いろんなところに呼んでいただけたり、『クリスマスの約束』(TBS系)もずっと出させていただいたり。それで、打ち上げのたびに、「小田さん曲書いてくださいよ」って、ずーっと言ってたんですよ。


――平井堅さんは?


JUJU:平井さんも、一緒に飲んでる時に、やさぐれた話をずーっとしていて。そこで「JUJUにやさぐれた歌、歌わせてみたいな」ということを言ってくださっていたらしいんですよ。それであらためてオファーしたんですけど、難しい雰囲気もあって。お忙しいし、締め切りも抱えているし。でも、降ってきたらしいんですよ、やさぐれた歌が。一番だけ出来上がったものを、平井さんのピアノと歌に、お手紙を添えていただけて。


――奇跡の1曲ですよ。


JUJU:大先輩に向かってこう言うのもおこがましいですけど、感心、感動しました。すごい切り取り方をされるんですよ。本当に落ち込んでる時、どこを見るわけでもなくぼんやり座っていて、<越えられない夜にひとりきり、床のホコリを見てた>という。<床のホコリを見てた>って、言葉にできるのはすごいと思ったんですよ。


――僕もその歌詞に震えました。


JUJU:よく考えたら、飲んでた時に私と平井さん、ピアノがあるところで横に座り込んで飲んでたんですよ。私が酔っぱらって、何かを見ているようなところを切り取ったんだろうな。すごい! と思いました。<クローゼットにはあたしを飾る布切れだらけ>というのも、平井さんはうちの中を知ってるんじゃないかって(笑)。


――小田さんの「あなたがくれたもの」も、平井さんの「かわいそうだよね」も、みなさん、“らしい曲”を提供してますね。


JUJU:みなさんの個性、“I”が、そのまま出ていると思います。


――松尾潔さんの「Love Is Like」も、歌詞がすごいですね。


JUJU:<茜色に染まってく この時間がいちばん嫌いよ/愛する人たちのもとへ家路を急ぐ人生じゃない>。なんてこと言うんだって(笑)。


――曲のストーリーが一瞬でわかる詞ですね。


JUJU:この詞もいただいた時に、「さすが松尾さん」って震えました。この曲が一番最後のレコーディングになることはわかっていたので、早く録りたいと思ってました。


――最後に「I」があるのが、またいいんですよね。JUJUさんからみなさんへの感謝の言葉で終わるという、深い思いが伝わるエンディングだと思います。


JUJU:アルバムタイトルを『I』にしたのは、ここに来るまでの人生で、いろんな人の意見を聞いたり、いろんな情報に惑わされたり、流されたりしそうになったりしても、絶対に自分ありきでここまで来ていると思うんですよ。これからもいろんなことを言われたり、いろんなものを見たりするかもしれないけど、すべては自分が選び取ったものでありたいし、その積み重ねがあったからここまで来たということを、再確認したんですね。自分の人生も、これからも年齢は重ねていきますけど、今日が、生きてる中で一番若いですから。それを踏まえて、自分が納得する人生をこれからも歩んでいきたいという。それで『I』というタイトルに決めて、表題曲でアルバムを締めくくることにしました。


――なるほど。


JUJU:選び取ってきたものがあること、巡り合えたことに感謝しながら、これからも頑張ります。


――2年ぶりのホールツアーも、楽しみにしてます。


JUJU:ありがとうございます。長いツアーですけど、すごく楽しいツアーになるだろうと確信してます。


(取材・文=宮本英夫)