東京都教育委員会は1月30日、男子児童が吐くまで無理やり給食を食べさせたとして、小学校の女性教諭(40)を戒告処分とした。毎日新聞が報じた。
こうした行き過ぎた"完食指導"がしばしば問題になるが、教育評論家の石川幸夫さんは「完食することも大切だが、生徒が吐いてしまうまで指導するのはやりすぎだ」と話す。
「一方的に指示を出して完食させるのではなく、食に対する理解を深めるべき」
石川さんが指摘するように、残さず食べること自体は大切だ
「きちんと食事を取っているように思えても、栄養が偏り、カルシウムやミネラルが不足していることがあります。給食にはそうした偏りを補う役割がありますので、残さずに食べることが大切です」
また「食品ロスが問題になっていますが、学校給食から出るものも多い」とも指摘する。環境省が2015年に発表した調査によると、小中学校における児童・生徒1人当たりからの食品ロスは年間で約17.2キログラムに上る。こうした食品ロスを削減するためにも、できることなら完食をすることが望ましい。
しかし生徒が吐くまで食べさせるのは、明らかにやり過ぎだ。石川さんは、
「一方的に指示を出して完食させようとするのではなく、生徒と教師がコミュニケーションを取って、食に対する理解を深めるべきだ」
と提案する。栄養バランスや食品ロスについてきちんと説明すれば、おのずと完食しようとする生徒も増えるだろう。
完食指導する教員は「個人的な倫理意識」が強すぎる
そもそも戦後に給食が再開された時は、食べ物に事欠いている生徒が多かったため、完食を指導する必要はなかったという。
「当時は食べるのに精一杯でしたから、完食する生徒が多かったです。しかし食べ物に困らなくなってくると、好き嫌いするようになってきます。苦手な物がどうしても食べられずに、ポケットや鞄に入れてしまう子どももいますよ」
そうした中、「平成に入るくらいまでは、完食指導が当たり前のように行われていた」という。かつて無理やり食べさせられたことがあるという人も多いのではないだろうか。
しかし近年では、こうした強引な指導は問題視されるようになってきている。2017年6月には、福島県の小学校で30代の女性教員が、「食べ物の大切さを教えるため」に、児童が残したカビの生えたパン食べさせたり、古い牛乳を飲ませたりしたことが問題となった。
また同年9月にも、岐阜県の小学校で50代の教諭が生徒に完食を指導し、5人が嘔吐していたことが発覚。教諭は厳重注意処分を受けている。こうした一部の教員は、「世界には飢餓で亡くなる子どももいるのに、という個人的な倫理意識が強いのではないか」と石川さんは見ている。