DTMドイツ・ツーリングカー選手権でアウディのワークスドライバーとして活躍するジェイミー・グリーンは、ライバル陣営のメルセデスがシリーズを去った後、「予想される日本のスーパーGTとのタイアップこそが希望だ」と発言。それに対し、BMWワークスのティモ・グロックは「ファンを喜ばせたいなら、オーストラリアの方法論を取り入れるべき」との見解を示した。
2018年限りでDTMの活動を終了し、電動フォーミュラカーで争われるABBフォーミュラEにワークス参戦するメルセデス。この動きを受け、現状はアウディ、BMWのみが残る2019年以降のシリーズの発展に向け、長年DTMに参戦するイギリス人のグリーンは「スーパーGTとDTMのルール統合こそが、我々が進むべき道だ」とコメントした。
2014年から共通シャシーを導入し、サスペンションや車体のコンポーネントなどを共有してきた両カテゴリーは、ひと一足先にスーパーGTが導入している2リッター4気筒直噴ターボの規定をDTMでも2019年から採用することを明言しており、さらなる統合に向け大きなステップを踏むこととなる。
今後、2メーカーでの生き残りに掛けた可能性について問われたグリーンは「この動きこそ、この数年間をかけて取り組んできた正しい成果だ」と、自らの考えを語った。
「僕が初めてDTMに参戦した2005年はオペルがまだ参戦していて、3メーカーでシリーズが争われていた。でもその翌年から彼らはシリーズを去り、アウディとメルセデスだけの時代が長く続いたんだ」
「歴史が示すようにそうしたことは起こりうる。だからこそ、日本のスーパーGTとの連携は僕たちにとって最大の希望なんだ」
「この数年間、ベーシックに同じクラス1の車体規則を採用していることはポジティブだし、我々がまだ採用していないエンジン規則を採用すれば、ともにレースを戦うことはさらに容易になる。だからこそ、19年から4気筒の直噴ターボを採用することは正しい決断だったと思う」
■ティモ・グロック、クラス1規定は「オーストラリアの手法も参考にするべき」
一方、元F1ドライバーで現在はDTMでBMWの契約ドライバーを務めるドイツ人のグロックは、DTMが今後もさらに発展し、ファンに喜ばれるシリーズでありたいなら、オーストラリアのツーリングカー選手権であるVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーが採用する高出力・ローダウンフォースの車両規定を参考にする必要がある、と考えている。
この2月にBMW M6 GT3をドライブしてのバサースト12時間参戦を控えるグロックは、「正直に言って、メルセデスの撤退表明はショックだった」と、DTMの将来に関する展望を語った。
「一方で、そのショックと衝撃は、DTMが別の扉を開くためのチャンスになるとも言える。僕はDTMに参戦を始めて以降、ことあるごとにオーストラリアのやり方を参考にするべきだと発言してきた。それこそが、今必要とされている視点だと思うんだ」とグロック。
「彼らの方法は正しい。DTMのマシンと比べて、空気力学によるダウンフォースはゼロに等しい。だから彼らはライバルのマシンに接近して走れるし、オーバーテイクも、サイド・バイ・サイドでのバトルもたやすく演じることができる。それは今のDTMでは不可能なことなんだ」
「共通パイプフレームを採用しているとはいえ、VASCスーパーカーのマシンはロードカーと近しい存在に留まっている。それはコクピットの作りを見ても明らかだ。そしてダウンフォースこそが最大の違いを生んでいる。DTMも同じようにダウンフォースを取り除き、オーストラリアの彼らがやっている方法に学ぶべきなんだ」
グロック自身も、日本のスーパーGTとともにクラス1規定に準拠した統合を目指す動きを理解してはいるものの、ファンからの視点をベースに物事を考える重要性を唱える。
「VASCは、純粋なファイト、ピュアなレースが視覚的に理解しやすい。そして、それこそがファンが望んでいる最大のポイントなんだ」と続けるグロック。
「ファンを楽しませることこそ、僕らが望んでいることだ。だからこそ、クラス1規定もVASCのような方向性を取り入れるべきだと思う。そうすれば自動的にショーとしてのレースの質は上がり、それに伴ってファンも参加してくれるようになるはずだ」