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「キスマイVR」でコンサートを疑似体験? VRと音楽表現の可能性を探る

2018年01月31日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 先日、エルトン・ジョンがVRでツアー引退を発表。CGで作られた彼が過去のライブを再現する、という試みはまさしく“VR=仮想現実”を示したものだと言えるだろう。VRという言葉が一般的に認知されるようになった今、アーティストは自らの音楽表現やパフォーマンスとどう融合し活用していくことができるのだろうか。


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 本稿では、Kis-My-Ft2が1月31日に発売したライブDVD/Blu-ray『LIVE TOUR 2017 MUSIC COLOSSEUM』初回盤に付属の「キスマイVR」に注目したい。「キスマイVR」では、初回盤のみに封入される「キスマイVRキット」を組み立て、VRコンテンツをダウンロードしたスマートフォンを設置するとVRライブ映像を体験できる。ジャニーズでは過去にV6が『Can’t Get Enough/ハナヒラケ【セブンネット限定盤】』でVRを活用。「Can’t Get Enough」のダンス映像と「足跡」のレコーディング映像をVRで視聴でき、間近で迫力ある映像を楽しめるとあり、ファンからは喜びの声が多く上がっていた。


 今回のKis-My-Ft2ではライブ映像を視聴できるため、V6以上に没入感が強いコンテンツだと言えるだろう。そこで編集部では早速同作を購入し、VR映像を体験してみた。


 まずは初回盤に封入されているVRキットを開封し、組み立てていく。付属しているのは簡易的なキットながら、マジックテープでしっかりと固定されるため、わざわざゴーグルを買わなくてもこれ一台で十分にVR映像を楽しめる。さらにスマプラVRアプリをダウンロード、スマプラムービーというサイトでPINコードを入力して該当のコンテンツをダウンロードすれば準備完了だ。若干データが重く、ダウンロードに時間がかかるのが難点かもしれない。しかしこの時の焦れったい気持ちも、映像を見始めるとすっかり忘れてしまう。


 『MUSIC COLOSSEUM』で体験できるのは、「EXPLODE」と「キスしちゃうぞ」の二曲。どちらも本編のものとは異なる2分ほどの短い映像だが、視界の上下左右を動き回り、華麗なダンスを見せるメンバー一人一人をじっくり見たくなるので、つい繰り返し再生してしまう。


 クールでセクシーなダンスパフォーマンスが見どころの「EXPLODE」では、ステージの中心でまるで8人目のメンバーになったかのような気分が味わえる。迫力満点な“ハカダンス”を披露し、手を伸ばせば届きそうな距離に近づいてくるメンバーたちについ見とれて追いかけてしまう。実際の会場では見えない一人一人の細かい表情や仕草をじっくりと見られるのが嬉しいところ。一人の“推し”を追いかけても、全体をじっくりと見渡しても楽しめるコンテンツだ。


 一方、メンバーのセリフもポイントとなるキュートな「キスしちゃうぞ」ではカラフルな衣装に身を包んだメンバーが、思い思いに動き回る様子をじっくりと楽しめる。ステージの真ん中でメンバーに囲まれているため、自分だけのためにパフォーマンスしてくれているかのように錯覚する。誰しもライブ中に「今、あの人と目が合ったかも」と感じたことがあるはずだが、「キスしちゃうぞ」ではそんな状況に何度も陥る。メンバーが視聴者の周りをぐるぐる回るパフォーマンスも見どころだ。


 表情や動きがぼやける場面も多く、画質に関してはまだ発展途上と感じる部分もあったが、薄暗い会場で激しく動いていることを考慮すれば、最低限のクオリティは保たれていると言えるだろう。“あの時、あのメンバーがどんな表情をしていたのか見たい”“あのシーンでどんな動きをしていたのか見たい”……そんな細かく、ワガママな要望も叶えてくれるのがVR映像だ。V6やKis-My-Ft2など、人気が高く、間近で姿を見たり、コンサートを体感できる機会の少ないアーティストは、VR映像を通じてコンサートを疑似体験する場を提供できる。


 またVRとは異なるが、最近では嵐がデジタルサイネージ展開でリアルな姿を見せ、ファンとの距離をぐっと近づけていたのも記憶に新しい(参考:『VS嵐』デジタルサイネージ展開は“体験型”広告の最新形? 国民性にマッチした仕組みがポイントに)。こうした例からも分かるように、今後は良質な音楽やパフォーマンスを追求するだけでなく、最新のテクノロジーを取り入れながら、新しい見せ方を模索していくことが重要になっていきそうだ。(村上夏菜)