1月25~28日に行われたWRC世界ラリー選手権第1戦モンテカルロ。週末や雨や雪が降り、ドライやウエット、スノー、アイスなどさまざまなコンディションが競技者たちを襲った。こういった過酷な条件でドライバーたちが全力を出せるようにサポートするのが、『アイスクルー』と呼ばれるチームスタッフだ。
刻一刻と路面状況が変化し、ここ数年でもっとも難度の高い状況のなか行われた2018年のラリー・モンテカルロ。この悪条件のなかでもドライバーたちが全力を注げるよう、事前にSSのどの箇所が滑りやすいか、アイスバーンが発生している可能性があるかといった情報を伝えるのがアイスクルーの役割だ。
アイスクルーはドライバーとコドライバーのペアで、各ワークスドライバーは専属のクルーを抱えている。
このアイスクルーはベテランドライバー/コドライバーであることが多く、2018年大会でモンテカルロ5連勝を飾ったセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)は、フォードやスバルのワークスドライバーを務めたシモン・ジャン-ジョセフと、経験豊富なフランス人コドライバー、ジャック・ボワイエをアイスクルーとして起用している。
各アイスクルーは競技車両が走行する1時間前にSSをレッキ(下見走行)することができ、ワークスドライバーが実際に使用するペースノートのコピーを使ってステージを走行する。
SSによっては日が昇る直前にレッキをすることもあり、レッキ時に路面が凍結している箇所も、競技車両が走行する際には気温が上がっていて氷が溶けている可能性もある。アイスクルーは、天候なども考慮し、実際に競技車両が通過する際のコンディションを予測してペースノートにメモを残す。
ちなみに、アイスクルーが使用する車両はラリーマシンではなく、ロールケージやハーネスなどの安全装備が追加された市販車両。また、どのアイスクルーもより正確な情報を与えるべく、制限時間間際にレッキを行いたがるため、出走順をめぐる攻防が繰り広げられるという。
ラリー・モンテカルロの場合、アイスクルーは朝4時に起床して、ドライバーたちに正確な情報を与えなくてはならないというプレッシャーのなか、レッキを行う。ラリードライバーが全開でSSを攻められる裏側には、こういったクルーの活躍があるのだ。
なお、ターマック(舗装路)イベントでは、アイスクルーは『グラベルノートクルー』に変身。競技参加者がレッキを行ったあとにステージを走り、コースに泥や砂利が散乱している箇所や濡れている箇所をチェックする役割を担う。