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森川葵、川栄李奈、松岡茉優……演じ分ける“柔軟性”で躍進する若手女優たち

2018年01月30日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 子役や、モデル、あるいはアイドル、さまざまなスタート地点から女優へと進出していく逸材たちがいる。常にヒロイン役として、数ある作品の主演を総なめする女優もいれば、主役を支えるバイプレイヤーとして名を馳せる女優も数多い。そして今、若手のなかで注目が集まっているのが、主役も脇も見事にこなす女優である。ここに当てはまる松岡茉優、森川葵、川栄李奈の3人の特徴を考察しつつ、彼女たちの女優としてのポジショニングの柔軟さを考察したい。


■松岡茉優


 子役として活動を開始した松岡は、若くして長いキャリアを持ち、経験値に裏打ちされた確かな技術と存在感で、多くの監督たちから熱い支持を受けている女優のひとり。松岡が満を持して映画初主演を務めたのが、現在公開中でヒットを飛ばしている『勝手にふるえてろ』だ。松岡は“こじらせ女子”・江藤ヨシカを演じ、一瞬挟まれるミュージカルのようなシーンでは「ヨシカ・オンステージ」ともいえる圧巻のパフォーマンスを披露。彼女の一挙一動が、そのまま映画の力となっているほどである。


参考:松岡茉優が語る、初主演映画での挑戦 「自分だけには嘘をつかないように」


 彼女が2つの恋に悩む姿は、映画においても恋愛においても1番手の役どころであるが、これまでは『リトル・フォレスト』をはじめとするいくつもの作品で、2番手的ポジションとして脇から支える働きを見せてきた。話題となったドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では、石坂浩二をはじめとした昭和を代表する名優たちを相手に落ち着いた演技を見せ、対等に関係を築きあげていた。


■森川葵


 そんな松岡と印象が重なるのが、ファツション雑誌『Seventeen』でモデルとしてデビューし、ドラマと映画への出演をバランスよく重ね、実力だけでなく知名度も獲得してきた森川だ。公開中の『嘘八百』では、佐々木蔵之介や中井貴一といったベテランを相手に堂々たるパフォーマンスを見せる。放送中の『賭ケグルイ』(MBS/TBS)では振り切れた演技で女王様気質の高校生ギャンブラー早乙女芽亜里を演じ、『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系)では昼間は工事現場で働き、夜はガールズバーで働く、自身のセクシュアリティに悩む女性・丹野香を演じている。


 前者では怪演とも言えるハイテンションな“動”の演技で、後者では複雑な心情を繊細な“静”の演技で表現する。若いキャスト陣の中で際だった存在感を見せている彼女だが、あまりの振れ幅の大きさに、正直なところ同一人物とは思えない。そんな彼女もまた、主役でも脇でも見事にハマる女優だ。昨年は主演映画『恋と嘘』で、松岡と同じく2つの恋に悩む夢見がちな主人公の女子高生・仁坂葵を好演したものの、直後の『先生! 、、、好きになってもいいですか?』では、王道ヒロイン路線を歩む島田響(広瀬すず)のそばで、キラキラと恋に胸をときめかせる第2のヒロイン的役回りを演じた。


■川栄李奈


 彼女らと同じく2番手に抜群にハマるのが、元AKB48のメンバーでアイドル出身の川栄。新里今宵役を務めた『僕たちがやりました』(カンテレ、フジテレビ系)での好演が記憶に新しい川栄だが、現在公開中の映画『嘘を愛する女』では、長澤まさみを相手に、文字通りの“2番手”を買って出る。


 とはいえ、劇中の由加利(長澤まさみ)・桔平(高橋一生)カップルを脅かすような存在ではなく、桔平に対して一方的に想いを募らせ、果てはストーカーまがいの行動にまで出てしまう女子大生・心葉という役どころだ。桔平のことを想う瞬間に愛らしいはにかんだ笑顔を見せたかと思えば、由加利に対する鋭い物言いで真を突き、心を揺さぶりかける。単なる脇役なだけでなければ、恋愛において2番手なだけでもなく、映画における2番手的ポジションを全うし、物語が転がるきっかけをつくる役割を見事に果たすのである。『亜人』につづき、本作でも少しばかりアクションを披露しているが、アイドル経験の活きたキレある動きは観ていて爽快だった。


 スタート地点こそ違えど、いまや日本映画界になくてはならない存在の彼女たち。今後の松岡は『blank13』『ちはやふる -結び-』、そして是枝裕和監督の新作への参加も発表されたばかりで大きな期待がかかる。放送中のドラマを引き続き楽しみたい森川は『リバーズ・エッジ』『OVER DRIVE』と、いずれも話題の若手俳優たちが集う中で、作品の強度を高める働きとなるのは間違いないだろう。『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』でまたも“2番手”を演じる川栄は、『恋のしずく』でついに映画初主演を務める。


 それぞれ個性を放ちつつも、主役でも脇でも柔軟にやってのける彼女たちだが、つまりはそれぞれの作品においての自分の“立つべき位置”、あるいは“あるべき姿”を掴んでいるということ。松岡、森川、川栄は、奇しくも三者ともに1995年生まれの同世代。彼女たちがさらに切磋琢磨し、作品の中での彼女たち同様にいきいきと、日本映画を盛り上げる役割を担っていってほしい。


(折田侑駿)