『マツダRT24-P DPi』の2シーズン目となる2018年、マツダは昨年、55号車と77号車マツダの両マシンがリタイアを喫したデイトナ24時間にマツダチーム・ヨーストとして新体制でカムバックを果たした。約半年間の車両開発の末、自信を持って今季のレースに臨んだチームだったが、迎えた24時間レースでは次々に発生する想定外のトラブルに悩まされることとなった。
2018年のIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップに55号車と77号車の2台のマツダRT24-P DPiを投入するマツダは、1月25日に開幕した第1戦デイトナ24時間の公式予選において55号車マツダが総合9番手を獲得。一方で僚友の77号車マツダは、エンジントラブルの影響で予選未出走となったことから総合19番手から決勝のスタートを迎えることとなった。
現地27日(土)14時40分を前にローリングラップが開始されるが、9番手グリッドに並んだ55号車マツダにシフトアクチュエーターの不具合が発生しダミーグリッドから動けなくなってしまう。幸いこのトラブルはすぐに解消し、ジョナサン・ボマリート駆る55号車マツダは本来のポジションに戻ることに成功。グリーンフラッグが振られると先行するマシンを相次いで交わし総合7番手に浮上してみせた。
しかし、スタートから1時間が経過した頃、55号車マツダは左フロントタイヤが外れるアクシデントに見舞われ大きくタイムをロス。総合18番手にポジションを下げる。
また、総合19番手からスタートを切った僚友77号車マツダは、オリバー・ジャービスのドライブで総合11番手まで順位を上げるが、スタートから2時間10分を迎えたところでこの日多くのマシンに頻発した右リヤタイヤのバーストに見舞われる。4時間を迎える直前にも同じアクシデントに襲われた77号車マツダはその後、55号車マツダとともに16~18番手で周回を重ねていった。
先行車とのギャップを詰めていきたい2台のマツダRT24-P DPiだが、レースが進むにつれてクラッチトラブルやバイブレーションの発生など、これまで経験したことのないトラブルが起きはじめる。2台に発生した車体のバイブレーションは、やがて電気系統やインタークーラーにも不具合を与えはじめ最終的にはインタークーラーにクラックが入る事態となった。
そんな数々のトラブルに対処しながら走行を続けていた55号車マツダだったが、スタートから17時間15分後にエキゾーストから突如出火。ドライブしていたボマリートは無事に車外に逃れたものの走行続行は不可能な状況に陥った。
また、55号車マツダのリタイアからわずか数十分後、今度は77号車マツダが電気系トラブルに見舞われ、ガレージでの修復作業を余儀なくされた。チームはこのトラブルを解決しなんとか77号車マツダを完走させようと手を尽くすものの、電気信号を介するパワーステアリングなどの操舵系システムにトラブルが再発することを懸念し、22時間過ぎにリタイアを決断している。
■オリバー・ジャービス「今年のマシンは3~4秒速くなった」
「2013年以降このデイトナで思う存分レースを戦えていなかったので新体制となった今年はなんとかしたいと思っていた」と語るのはマツダ・モータースポーツのジョン・ドゥーナン代表。
「しかし、今季のデイトナは期待通りの結果が出せないばかりか、これまでにないようなあらゆる種類のトラブルが次々に発生した。ここデイトナで9日間、セブリングで3日間、ヨーロッパで2日間テストを実施したにも関わらず駆動系、電気系、タイヤとさまざまトラブルが起きてしまったんだ」
一方、ポジティプな要素もたくさんあったというドゥーナンは「2018年型のマシンは明らかに速くなり、我々が築いたレースペースはトップレベルのものだった」と改良型マシンのレースペースに自信を覗かせた。
2018年からチームに加わることとなったジャービスもまた進化したマシンのポテンシャルについて「去年のマシンから3~4秒もラップタイムが速くなるなんて、驚いたよ」とその進化の度合いに感銘を受けている。
リタイアという結果に終わったマツダでの初陣は「とてもタフなレースだった」と振り返ったジャービス。
「僕たちのクルマは確かにスピードを手に入れたが、残念ながら信頼性が完璧ではなかったんだ。これから改善するため実施しなければならないことはたくさんあると思う。しかし、このチームならそれをやってくれると信じているよ」と語った。
2年連続で2台のマシンがリタイアするという厳しい結果に終わったマツダ。約2カ月後の3月14~17日にセブリングで行われる12時間レースでは今季初の完走を目指すとともにドゥーナン氏が掲げる“勝利”“ポディウム”の獲得を狙う。