トップへ

デイトナ24時間決勝で魅せたアロンソの進化。トラブルに見舞われるも「来年以降も出る」と宣言

2018年01月29日 10:32  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

デイトナ24時間決勝レースへと挑むフェルナンド・アロンソ
IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ第1戦デイトナ24時間レースに参戦したフェルナンド・アロンソ擁する23号車リジェJS P217・ギブソンは、レース中盤でブレーキトラブルに見舞われ総合38位/クラス13位でレースを終えた。

 スポーツカーによる耐久レースにデイトナ24時間で初挑戦するフェルナンド・アロンソは、1月5~7日にデイトナで行われた合同テストで決勝でのピットとガレージの選択権をかけた“予選”が開催されたため、LMP2マシンにコンチネンタル製タイヤを履いてのタイムアタックをそこで初めて経験することができた。

 レースウイークエンドの木曜日に行われた公式予選は、彼にとっては2度目のトライだったが、昨年のインディ500初挑戦での彼が走行を重ねる毎に見せた大きな進歩がスポーツカーではあまり実現されず、予選結果は総合13番手と不本意なものになった。マシンのセッティングはまだベストを引き出せていなかったのだ。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップのルールでは、決勝レースでのスタートを予選を走ったドライバーが行う。ル・マン優勝を目指すアロンソは、デイトナには経験値を高めるために出場しており、予選アタックの担当とスタートドライバー、いずれも彼の望むところだった。

 今シーズンのレギュレーション下では、デイトナでのプロトタイプ(P)クラスの1スティントはおよそ24周=45分間ほど。アロンソは他のチームと同じように、まずはダブルスティントにトライした。

 彼は車載燃料の重さによるハンドリングの変化や、走行距離によるタイヤ・パフォーマンスの低下を体感しながら優勝、もしくは上位フィニッシュを目指す戦いを進めていった。

「賢い作戦を用い、スマートにクリーンに走ることで優勝を狙う」と彼は話していたが、スタート直後の接近戦で軽いコンタクトなどもあるバトルに加わり、習熟を重ねながら徐々にポジションを上げていく。予選まででアロンソの見せることのできなかった進歩が、決勝では現実のものとされていた。

 若いチームメイトたちも走りは好く、アロンソたちの23号車リジェは上位での争いに残り続け、燃費の良さを味方につけてトップに躍り出ることさえあった。マクラーレンがすでに囲い込んでいる18歳のランドー・ノリスが、夜8時前から1時間ほど降った雨の中で目覚ましいラップを重ねたことも影響していた。

■決勝で本領を発揮するアロンソ

 しかし、それよりもやはり圧巻だったのはアロンソのパフォーマンスだ。1回目の走行を終え、「プロトタイプ同士は性能が近いのでオーバーテイクは難しい。クルマ、タイヤ、そして燃料をセーブしながらの走りにも全力を投入しなければならない」

「序盤のバトルで体験したが、スピード差のあるGTカーたちが作るトラフィックを処理するのは難しい。驚くようなポジション採りをする相手とラインをクロスさせるようなことさえある。でもそれは全員にとって同じ条件だ」などと話していたアロンソは、その経験を活かして自分はどんな走りができるのか? それを試すべく夜間の4連続スティントに打って出た。

 フルコースコーションが出なければ3時間ほぼ走りっ放しというタフなチャレンジだ。スポーツカーの常連で体力のある者でもトリプルスティントまでというのが常識の世界だ。

 アロンソのル・マンに向けた自らの実戦テストは夜の10時過ぎにスタート。すぐ前に乗ったフィル・ハンソンがタイヤバーストに見舞われ、アロンソはトップから4ラップ遅れでコースに復帰。ここからの80周を超える走行でアロンソは驚くべきスピードと安定性を両立させていた。ラップタイムは1分40秒台でスタートしたが、トラフィックもある状況下で39秒、38秒台を何度も記録した。

 残念なことに、アロンソのデイトナ24時間はこの後にブレーキトラブルに見舞われた。マスターシリンダーまで多くの部品交換が必要になった作業で23号車リジェは、スタートから10時間の時点ではトップから2周ダウンの7番手まで挽回していたが、11時間経過時点では25周ダウンとポジションを大きく落としていた。

「僕らのレースはそこで終わった。そこからは完走を第一の目標とした。その後もスロットル、ブレーキ、タイヤとトラブルが幾つも出たのは残念だった。しかし、テストやプラクティス、予選まででは遅かった僕らが、レースではハイペースを保てていた。十分な競争力があったよ」

「ファステストラップも上位にランクされるものを記録できた。走っている間は楽しかったし、多くの貴重な経験ができたと感じている。次の耐久レースに向けて自信と勢いを手に入れることができた」とアロンソ。

「今年のル・マンへの出場の可能性は、レース前は50対50だってが、今は60対40で出る方向かな? もしル・マンに出ることになったら、その時の僕はプロトタイプによる耐久レースの経験がある。より準備のできたドライバーとなれるだろう。ほんの24時間前には知らなかったことを、たくさん経験することができたんだからね」と彼は続けた。

「ル・マン出場に対して、いつ決断しなければ……という日程の区切りなどは決めていない。ただし、2018年はF1を最優先するので、どこかのGPをスキップすることはない。そしてデイトナは来年以降も出ると思うよ。完全にオフのタイミングだし、自転車などのトレーニングなどよりも実際にクルマを走らせる方がずっと役に立つから」とF1チャンピオンは締めくくった。