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家族間バトル勃発へ 『隣の家族は青く見える』から学ぶ、“価値観を押し付けることの罪深さ”

2018年01月26日 12:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 人には必ず得手不得手があるし、好きと嫌いを選択する自由も与えられている。価値観や能力の“ものさし”はそれぞれで違うのにも関わらず、悲しいかな己を棚に上げて、自分だけの“ものさし”で測った価値観を押し付けてくる人も存在する。


参考:『隣の家族は青く見える』第2話【写真】


 木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)は、同じ敷地内で暮らす、「できない」を抱えた4家庭を描く物語。子供が“できない” 五十嵐奈々(深田恭子)&大器(松山ケンイチ)夫妻を中心に、家庭に快く子供を迎え入れることが“できない”事実婚カップル、ありのままの姿を見せることが“できない”冷え切った4人家族、同性愛を打ち明けることが“できない”カップルが登場する。


<“価値観の押しつけ”がバトルの原因に>


 コーポラティブハウスと呼ばれる集合住宅に住む4家族の火種となるのは、インスタ主婦の小宮山深雪(真飛聖)だ。小宮山家は、深雪の夫・真一郎(野間口徹)と2人の女の子で構成されているが、一家の舵取りをするのは深雪。真一郎は海外出張の多い仕事に嫌気が差し、家族といられる時間を増やすために早期退職したのだが、世間体をとてつもなく気にする深雪からは邪魔者扱いされている。


 深雪は、自分が良いと思うものは他人にとっても良いものだと考える厄介なタイプ。奈々にも、事実婚カップルの杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)にも子作りを厚かましく推奨してくるのだが、子供が欲しくないちひろから「自分のものさしだけで他人のものさしを測るなって言ってるのよ!」とみんなの前で大反論される。


 険悪なムードに包まれた深雪とちひろを仲裁するために奈々から出た言葉は、「どうしてみんな同じじゃなきゃいけないんですか? みんな、違ってていいじゃないですか」。さらっと出た言葉だったが、これこそが本作のテーマとなってくるのだろう。いくら家族であっても自分以外の人間は、あくまでも他人で、自分の中での正しさや好きが他人にとってもそうであるとは限らない。


 しかし、そんな言葉を口にした奈々も子供ができないという“みんなとの違い”に焦り、大器に不妊治療の一環として食事や飲酒の制限などを強要してきた。


<愛は義務化すると冷めてしまう>


 「子作り意識し始めてから、全然楽しくなくなっちゃったんだよなー……」と大器は、会社の後輩である矢野朋也(須賀健太)に漏らす。排卵日に合わせて性交渉するタイミング法や、ラジオ体操、マカドリンクを飲むことなど奈々の頑張りに対し、大器の気持ちが追いつかない。


 周囲の妊娠や奈々の年齢を配慮すれば、焦る彼女の気持ちも痛いほどに理解できるが、夫婦間の愛の延長線上にある性行為を義務化すると、気が乗らなくなってしまう大器の思いも当然だ。不妊治療は、夫婦ともに協力的な姿勢であることが重要になってくるが、結果が伴わないと精神的ダメージが大きいため、セックスレスの原因にもなってくるらしい。


 人並みに出来ないことがあっても、それを欠陥だと思って自分を攻める必要はない。逆に、自分が当たり前のようにできることは、他者にとって必ずしも当たり前ではないことも頭に入れておかなければならない。


 個々の中にある“ものさし”に違いがあるという点は、意外と気付かないもので、わかっていても忘れてしまいがち。無意識のうちに“価値観の押し付け”をしてしまっていないか、自分の心にも問いかけたくなる第2話だった。(阿部桜子)