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結婚後の転居が遅れ、社宅費「20万円」天引き…組合に相談したら会社に訴えられる

2018年01月26日 10:32  弁護士ドットコム

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クリエイトSDホールディングス(東証1部)の子会社で、神奈川県を中心にドラッグストアなどを展開するクリエイトエス・ディーで労使紛争が起きている。


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発端は、薬剤販売員の女性(30代)の給与明細。この女性、独身寮からの転居が遅れたことを理由に、会社から「社宅費」として約20万円を天引きされ、手取りが3万円になってしまったのだ。


驚いた女性は、労働基準監督署や労働組合に相談。無事に返金されたが、今度は会社から訴えられてしまった。


●組合側「嫌がらせとしか受け取りようがない」

女性を支援する労働組合「プレカリアートユニオン」は、経緯を次のように説明する。


この女性は新卒で同社に入社し、2016年11月に結婚した。本来であれば、独身寮を退去する必要があったが、長時間勤務やシフトの関係、結婚の準備などで予定が遅れ、2017年2月の退去になってしまったという。


すると、人事部から女性に対し、怒鳴りつけるような口調の電話がかかってきて、2017年3月分の給与から、結婚後の期間の社宅費として20万円が天引きされた。女性は結婚後もそれまで通り寮費を払っていたが、会社は実費(会社が部屋代として払っていた金額)負担を求めてきたのだ。



こうした天引きは、賃金の「全額払いの原則」に抵触する(労働基準法24条)。女性は、労働基準監督署に相談。労基署から会社に指導が入り、天引きされた20万円は返金された。


しかし、女性が労働組合に入り、未払い残業代(約130万円)などについて団体交渉を申し入れたところ、会社は女性本人と身元保証人の父・叔父を相手取り、この20万円の支払いを求めて2017年12月、神奈川簡裁に提訴した。


プレカリアートユニオン執行委員長の清水直子氏は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、次のように語る。


「訴訟費用の方がかかる可能性があり、損得勘定からして、嫌がらせとしか受け取りようがない。そもそも、女性が独身寮を退去していたら、(会社の規定で)家賃補助が出ていたはず。20万円から家賃補助を引いた差額は数万円でしかない」


一方、クリエイトエス・ディーは、「真摯に対応している。それ以上のことは、何も申し上げられません」。組合つぶし、嫌がらせではないのかとの問いには、「まったくございません。見解の相違はございますけど、ユニオンさんにもきっちり対応させてもらっています」と回答した。


(弁護士ドットコムニュース)