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デジタルに強いTWICEと巨大なファンドムを持つBTS (防弾少年団)  韓国での音楽消費を考える

2018年01月26日 10:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在音楽消費がほぼデジタル音源、特にストリーミングメインに移行しつつある韓国の音楽ランキングでは、音源と音盤(CD)の売れ方に明確な違いが存在する。韓国の大衆音楽チャートGAONの2017年度年間チャートで比較してみた。


■TWICE、WINNERらがランクインする“音源チャート”
1.初雪のように君に行く/Ailee
2.夜の手紙/IU
3.Like it/ユン・ジョンシン
4.Shape Of You/エド・シーラン
5.雨も降ってそれで(feat.シン・ヨンジェ)/Heize
6.Some/赤い頬の思春期
7.Palette(feat.G-DRAGON)/IU
8.KNOCK KNOCK/TWICE
9.長い日、長い夜/AKMU
10.REALLY REALLY/WINNER
(参考:GAON CHART/2017年 Digital Chart/http://www.gaonchart.co.kr/main/section/chart/online.gaon?nationGbn=T&serviceGbn=ALL&termGbn=year)


 音源チャート(DL+ストリーミング+BGM)の1位は人気ドラマ『トッケビ ~君がくれた愛しい日々~』のオリジナルサウンドトラック収録曲であるAilee「初雪のように君に行く」で、1億7000回以上ストリーミングされた。


 2位はドラマ等でも活躍中の“国民の妹”IUの「夜の手紙」。この先行シングルと7位にランクインした「Palette(feat. G-DRAGON)」を含むアルバム『Palette』、カバーアルバム『花しおり2』が共に大ヒットを記録した。人気バラエティで親しまれているシンガーソングライターで、SMエンターテインメントと提携中のMYSTICエンターテインメントのCEOでもあるユン・ジョンシンの「Like it」は、Facebook等でライブ動画が拡散されロングヒットを記録し年間3位になった。4位は世界的に大ヒットし、韓国では社会現象となったアイドルサバイバル番組『プロデュース101シーズン2』(プデュ2)の課題曲に使われチャートを上げたエド・シーランの「Shape Of You」。5位の「雨も降ってそれで(feat.シン・ヨンジェ)」のHeizeもサバイバル番組で注目されたラッパー&シンガーで、リリースごとに着実に人気を上げている。6位は口コミで1stアルバムがヒットした女性デュオ赤い頬の思春期の2枚目「Some」が引き続き支持を得てランクイン。


 8位は一昨年の音源年間1位TWICE。昨年も「KNOCK KNOCK」で女性アイドルグループ音源トップの貫禄を見せた。9位はYGエンターテイメント所属の人気兄妹デュオ・楽童ミュージシャンの「長い日、長い夜」。10位は男性アイドルグループからは唯一TOP10入りしたWINNERの「REALLY REALLY」で、メンバー脱退以降初リリースした再出発の曲が年間を通してランクインするヒットとなった。


 音源ランキングには音楽を音源のみで消費する一般層によく聞かれる曲が多く、一般的に流行したヒット曲のチャートと言える。近年は特にヒットドラマやバラエティ等TV番組発信やSNS等で話題になった曲、人気が大衆認知と概ね合致している女性アイドルの楽曲が強い傾向にある。対照的にファンドムがメインの消費層である男性アイドルはCD音盤の方が強い傾向にあるが、例外とも言えるのがBIGBANG・WINNER等のYGエンターテインメント所属のグループであり、一般認知度がファンドムの規模を超えているケースが多いということだろう。


■BTS (防弾少年団)、EXOらがランクインする“音盤チャート”


1. LOVE YOURSELF 承 `Her`/BTS (防弾少年団)/1,493,443枚
2. THE WAR (Korean Ver.)/EXO/949,827枚
3. YOU NEVER WALK ALONE(「WINGS」リパッケージ)/768,402枚
4. 1X1=1(TO BE ONE)/Wanna One/741,546枚
5. 1-1=0 (NOTHING WITHOUT YOU)(「1×1=1」リパッケージ))/Wanna One/ 614,072枚
6. Universe /EXO/516,062枚
7. The Power Of Music(「The War」リパッケージ)/EXO/455,269枚
8. 7 for 7/GOT7/368,589枚
9. TEEN, AGE/SEVENTEEN/357,296枚
10. FLIGHT LOG:ARRIVAL/GOT7/334,316枚
(参考:GAON CHART/2017年 Album Chart/http://www.gaonchart.co.kr/main/section/chart/album.gaon?%20nationGbn=T&serviceGbn=&termGbn=year)


 一方、CD音盤の年間TOP10は全て男性アイドルグループで、1位のBTS (防弾少年団)『LOVE YOURSELF 承’Her’』は149万枚を売り上げ、2位は94万枚のEXO『THE WAR(Korean Ver.)』だ。現状CDは主にファンが買うグッズの一部と化しており、売り上げがそのまま国内ファンドムの規模を示すと言ってもいいだろう。それを反映してTOP10のうち2枚が防弾少年団(1位・3位)、3枚がEXO(2位・6位・7位)だったが、そこに彗星の如く現れたのが前述の『プデュ2』から誕生したWanna Oneだ。デビューアルバムの『1×1=1』は74万枚を売り上げ、リパッケージと共に年間4位と5位に食い込んだ。Wanna Oneは2018年内までの活動期間限定グループではあるが、TV番組発祥ゆえにメンバー個人の一般認知度も高く、一般社会とアイドル業界に残したインパクトは絶大だ。


 ちなみに、韓国でもバージョン違いやトレカ封入、抽選サイン会等で複数買いを誘導する販売方法は頻繁に行われている。また、音楽ランキング番組やアワードが多く存在するため、ファンが応援の一環として共同購入やストリーミング操作を行うのは一般的である。


 以上のように、CD売上と一般的なヒット曲は必ずしも一致しないというのが韓国内での実情と言えるだろう。日本でもシングルCDランキングの上位をアイドルが占めることは珍しくないが、それがさらに極端な形で現れているのが、現在の韓国CDランキングとも言えるかもしれない。(文=DJ泡沫)