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片平里菜、『愛のせい』で開花したさらなる可能性 強いインパクト残したライブハウスツアー

2018年01月26日 10:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 片平里菜が1月20日、『ライブハウスツアー2017-2018』ファイナル公演をZepp DiverCity TOKYOにて開催した。


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 片平にとって2017年は、自身のさらなる可能性を開花させるような年だったのではないだろうか。渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)と武田玲奈がW主演を務めた映画『パパのお弁当は世界一』の主題歌「なまえ」やファッション通販「RyuRyu」CMソング「lucy」といった新曲のリリースをはじめ、チャラン・ポ・ランタンの楽曲「夢ばっかり」では共作・コーラスにも挑戦。さらに主催ライブでは、自身初となるホールツアーや2マンツアーを開催した。そのように積み重ねてきた経験や活動の成果は、12月20日に発売された3rdアルバム『愛のせい』の充実ぶりに表れていた。『愛のせい』はまさに、片平の今ある全てを出し尽くしたかのような濃いアルバムだった。


 片平が公演中に明かしていたように、10月から始まった『ライブハウスツアー』は当初アルバムリリースツアーとして予定されていたものだったという。しかし時間をかけてよい作品を作り出すことを優先した結果、今回は特別なテーマを設けないツアーとなった。並行してレコーディングを行い、リリース、プロモーション……と一気に駆け抜けた年末。迷い、悩み、喜び、苦しみ……感情の浮き沈みを見せながらまわったツアーだったと片平はMCで感慨深く振り返っていた。


 セットリストの序盤には、十人十色な女性像が描かれた人気曲やライブ定番曲が並ぶ。「Party」「BAD GIRL」のような強くて自立した女性、「カフェイン」「Love takes time」のようなキュートな声で表現されるかわいらしい女性、さらに「lucy」では買い物・ファッション好きな女の子も。まるでオムニバスのドラマを見ているかのように様々な姿が浮かんでくる。片平は会場にいる女性たちの思いを代弁するように、また男性たちにその思いを訴えかける・問いかけるように歌っていく。迫力すら感じさせる堂々たるパフォーマンスだ。


 この日のライブでは片平の歌声やギター演奏はもちろん、伊澤一葉(Key)、須藤優(Ba)、玉田豊夢(Dr)、戸高賢史(Gt)、通称・お嬢ズと名付けられたメンバーたちによる演奏も素晴らしかった。2017年のホールツアーにも帯同した盤石の布陣が集結し、片平のステージを支える。息のあったプレイとMC中に垣間見える5人のリラックスした関係性からは、片平の歌を中心に据えた“バンドのライブ”という趣が強く感じられた。重厚なグルーヴに包まれた演奏を率いる片平の歌はなんとも頼もしい。


 中盤からは『愛のせい』収録の新曲も交えた、より自身の内面と向き合った郷愁溢れるナンバーが続く。中でもアルバム表題曲「愛のせい」のインパクトは凄まじかった。日々の悩みや不条理な出来事、自分や世の中を取り巻くもやもやする気持ちはすべて“愛のせい”だと歌うこの曲は、とにかく気持ち良いほど潔く、そして切ない。片平の真骨頂とも言える一曲である。その後に歌われた「ラブソング」では、感情の昂りと比例したバンドのエモーショナルな演奏も相まり、間違いなくこの日のハイライトを迎えた。


 アルバムの発売に伴ったツアーではないとはいえ、やはり終盤~アンコールにかけて強く印象に残ったのも『愛のせい』に収録された新曲だった。「異例のひと」では、弾き語りで歌う片平の演奏にバンドメンバーたちが徐々に加わっていき、この日だけのアレンジで即興演奏を披露するといったうれしいサプライズも。さらに最後に弾き語りで披露された「からっぽ」で歌われる赤裸々な言葉の数々に胸を打たれ、強い余韻を残したままライブが終了した。


 2018年、デビュー5周年を迎える片平里菜。それを記念して、3月と5月には趣向を変えた2本のツアーを開催することも発表された。3月は「60分一本勝負弾き語りライブ」と題し、アルバム『愛のせい』を中心に過去曲も織り交ぜたライブを行う。5月は「『愛のせい』アルバム全曲再現ライブ&シングル全曲ライブ」と題した2部構成のスペシャルツアーだ。片平の渾身の思いがこめられた『愛のせい』は、長く愛され続ける作品となるだろう。そしてライブ会場で再現される各曲から放たれるパワーは、さらに想像を超えたものになるに違いない。シンガーソングライター片平里菜が、この先どのような歌を聞かせてくれるのか、ますます楽しみになるライブだった。(久蔵千恵)