アメリカでジェルボール型洗濯洗剤を食べる遊び「Tide pods challenge」が流行っている。10代など若い世代に人気で、食べる様子を動画で撮影し、ユーチューブやインスタグラムに投稿するケースが相次いでいる。
米CBSなどの報道によれば、米国消費者製品安全委員会が注意喚起の声明を発表したほか、動画で使われたジェルボール型洗剤「Tide」が、食べないよう訴える動画を作成したという。
ユーチューブで「洗剤 飲んでみた」などと検索すると、日本のユーチューバーが同様の動画をアップしているのが目に付く。
若い男性が「これグミじゃね?食えんじゃね?」とジェルボール型洗剤を口に含み吐き出していたり、液体洗剤や柔軟剤、消毒用アルコールなどを飲む動画が複数確認できる。小学生くらいの男の子が罰ゲームとして消毒用の液体を飲む動画もあった。
ユーチューバーはなぜこうした危険な行為に及ぶのか。ITジャーナリストの井上トシユキさんによると「単なる悪ふざけがエスカレートした結果」だと言う。
新しい悪ふざけを実行すると「神だ」と囃し立てられる快感求めエスカレート
「悪ふざけ動画」はユーチューブが出てきた2000年代初め頃から、投稿動画の主流の1つだった。かつてはロケット花火1000本を人に向けて発射したり、人通りの多いところで、大量のコーラにメントスを入れて噴水のようにして通行人を驚かせるなどの悪ふざけが行われていた。
「新しい悪ふざけを一早く実行して動画を撮ると『神だ』と囃し立ててもらえます。こういうのを見て、自分も褒められたいという気持ちがエスカレートし、危険な行為に繋がっているのだと思います」
洗剤を食べる行為は単なる悪ふざけと言うには危険だが、注目を浴びたいという気持ちが先行し、手を出す人が多いようだ。
視聴者のあり方も問われている。先ほど紹介した日本の洗剤飲食動画には、「くだんな笑」「絶対まずいでしょw」など、ネタとして消費されていると伺えるコメントが付いている。
「危険な行為に対して『いかんでしょ』と諫めても、他のコメント投稿者らから『余計なことを言うな』と叩かれたり、『さすがです』『いつも楽しみにしています』と投稿者を持ちあげるコメントが大量に書きこまれたりするため、注意するコメントは見えなくなってしまいます。動画投稿者には届いていないでしょう」
もし子供が真似をして死んでしまったら、ユーチューバーは責任を取れるのか
ユーチューバーは近年、将来の夢ランキングで上位に入るなど、子どもからの人気が高い。動画を見た子どもが、保護者の目が届かないところで真似して洗剤を食べる危険もある。井上さんは
「もしそれで死んでしまったりなんかしたら、ユーチューバーは責任を取れるのか。もちろん取れない。再生回数が増えたら儲かる、有名人になれる、と、安易に考えている人が多すぎる」
と警鐘を鳴らす。海外では、鉄塔などで危険なポーズを取る様子を撮影していたところ、足を踏み外して死亡した例なども出ている。この影響か「アウトドアで危険な行為をする動画は減ってきている」というが、「その分、屋内で危険な行為をする動画は増えている」と指摘する。井上さんは
「そろそろユーチューバーは子供に悪い影響を与えていることを自覚したほうがいい。大人も、動画を投稿している人たちに注意する必要がある」
と、ユーチューバーのあり方について苦言を呈していた。