トップへ

初登場1位は『ジオストーム』 ヒットの理由は超大作感を煽る予告編の完成度!?

2018年01月25日 13:52  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 先週末の映画動員ランキングはそれまで5週連続で1位だった『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が遂に陥落。昨年アメリカ本国の興行では不発だったものの中国で大ヒットを記録した『ジオストーム』が、日本でも土日2日間で動員17万1000人、興収2億4200万円をあげて初登場1位という好調なスタートをきった。1996年の『インデペンデンス・デイ』(興収113.1億円)、1998年の『アルマゲドン』(興収142億円)や『ディープ・インパクト』(興収80.2億円)、2004年の『デイ・アフター・トゥモロー』(興収52億円)と、隕石衝突系ディザスター・ムービーは日本人好みらしく、これまで数々の大ヒット作を生んできたジャンルだが、そのジャンルに久々に現れた大作として支持された(ちなみに『ジオストーム』のストーリーは厳密に言うと隕石衝突系ではないが、ディザスター描写はほぼそれらの作品と同じである)。


参考:予告編はこちらから


 『ジオストーム』で感心させられたのは、ドラマ・シーンは二の次でほぼ大災害シーンだけを見事に繋いで超大作感を前面に押し出した予告編の完成度の高さだった。外国映画の予告編には海外の予告編にそのまま日本語の文字やナレーションをのせただけのものも多いが(手抜きということではなく、本国からの指示でそうせざるを得ない場合もあるのだろう)、『ジオストーム』の予告編では、本編では一瞬でしかない東京の街がパニックに陥っているシーンをラストにもってくるなど、日本でのローカリゼーションの手際も見事。昨年自分も他作品の上映時にその予告編を観て「これはヤバい!」となって、慌てて最終試写に駆け込んだほど。この予告編が今週中にも興収70億円突破が確実な『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の上映館の多くでかかっていた宣伝効果は大きかったはずだ。


 「予告編に騙された」みたいな物言いは昔からよくあるが、本来、予告編は観客を騙してナンボのもの。予告編に気持ちよく騙された上で、実際に作品を観て別の楽しみや感動に出会うというのも映画本来のおもしろさ(最近たまにある、劇中に使われていないシーンや音楽をフィーチャーしているものはルール違反だと思うが)。そういう意味で、『ジオストーム』は一時代前のディザスター・ムービーとしての楽しさだけでなく、予告編の段階から洋画界全体に活気があった時代を思い出させてくれる作品だ。ちなみに中国で大ヒットした理由の一つは中国系アメリカ人俳優ダニエル・ウーの起用と言われているが、それほど大きな役ではないものの、中国版の予告編ではしっかりダニエル・ウーの登場シーンもフィーチャーされていた。


 初登場2位の『嘘を愛する女』は、土日2日間で動員11万7000人、興収1億6000万円。東宝配給作品としては珍しい完全なオリジナル脚本にして、同脚本を手がけたCMディレクター中江和仁にとって初の長編監督作品ということをふまえると、まずまずの出足と言えるだろう。水曜日のレディースデイには『ジオストーム』を超えて動員トップを記録した劇場も多く、女性層の高橋一生人気が興行を支えていることが伺える。SNSなどでは本作についても「予告編に騙された」という意見を目にするが、そんなに目くじらを立てないで、「嘘(予告編)を愛する」心の広さを持ち合わせることが、映画をより楽しむ秘訣だと思う。(宇野維正)