2018年01月24日 11:02 弁護士ドットコム
2017年の流行語大賞の年間大賞にもなった「インスタ映え」。SNSの「インスタグラム」で「いいね!」を獲得するため、写真のビジュアルがより重視されるようになり、企業や飲食店は「インスタ映え」を狙った派手でカラフルな商品を販売することもある。
【関連記事:サービスエリア「女子トイレ」に大行列・・・女性が「男子トイレ」に入ったらダメ?】
このインスタグラムで数千人から数万人単位のフォロワーを獲得しているユーザーを「インスタグラマー」という。その影響力には企業も注目しており、広告費は1フォロワーあたり2~4円が相場だとも報じられている。一般人であっても月に数万~数十万円を稼ぐことも夢ではなさそうだ。
しかし、社員の副業を解禁する企業も増えているとは言え、禁止している企業も多い。インスタグラマーが会社員として働いている場合、インスタグラムでのPR投稿などで収入を得ることは、「副業」に該当するのだろうか。畠山洋二弁護士に聞いた。(ライター・岡安早和)
・民間企業社員の「副業」を禁じる法律はない
・収入が少なくても、継続して収入を得れば「副業」
・「秘密保持義務違反」や「職務専念義務違反」に該当する恐れも
「まず、法律は、私企業に務める会社員の『副業』を禁止していません(ただし、公務員の副業は、国家公務員法や地方公務員法で禁止されています)。
しかし、多くの企業は、社員に自社の業務に専念してほしいとの考えから、就業規則に副業禁止規定を設けています。
そのため、自分が勤める会社が『副業』を禁止しているのか、またどのような内容の『副業』を禁止しているのかは、その会社の就業規則を見なければ分かりません。また、政府が進める『働き方改革』の1つとして、今後、副業を認める方向に舵が切られようとしています。禁止されている企業でも、今後、認められる可能性もあるでしょう。
ただ、一般的には、就業規則に『許可なく他の会社等の業務に従事しないこと』といった内容の副業禁止規定を定めている企業が多いです」
ここでいう『他の会社等の業務に従事する』とは、具体的に何を指すのだろうか。
「『他の会社等の業務に従事している』とは、アルバイトやダブルワークをしている場合に限らず、反復的かつ継続的な行為により収入を得ているケースも含みます。
したがって、収入の多い少ないにかかわらず、インスタグラムでのPR投稿などで継続的な収入を得ることは『他の会社等の業務に従事している』と言えるので、会社の『許可』を得るのが無難ではあるでしょう」
畠山弁護士によれば、インスタグラマーとしての収入も副業に該当するということだが、すぐに懲戒処分になるかというと少々違うらしい。
「本来、会社員は勤務時間外をどのように過ごそうと自由です。そのため、副業が会社での勤務に悪影響を与えないことが明らかであれば、会社の許可なく副業を行ったとしても、副業禁止違反による懲戒処分は認められないでしょう。
実際、裁判例においても、副業禁止違反による懲戒処分を認めたのは、会社での勤務に悪影響を与えた場合や、会社の対外的信用を失わせた場合に限ります。
したがって、勤務時間外にインスタグラムのPR投稿を行い、それによって継続的な収入を得ているような場合でも、副業禁止違反による懲戒処分は認められないでしょう」
畠山弁護士は、あくまでも、会社員の勤務時間外の過ごし方は自由だというが、次のようにも述べる。
「最近では、インスタグラマーによっては、『いいね!』の数や、高額の収入を得るためインスタグラム中心の生活を送っている方もいるということです。そのようなインスタグラム中心の生活を送ることで、会社での勤務に悪影響を与えている恐れがある場合には、会社の許可を得る必要はあると思います。
また、企業秘密の漏えいになるような投稿や、勤務時間内の投稿については、副業禁止違反というよりも従業員の秘密保持義務違反や職務専念義務違反等に当たりますので、注意してください」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
畠山 洋二(はたけやま・ようじ)弁護士
東京弁護士会所属。2009年弁護士登録。企業法務・事業再生案件を中心に弁護士業務を行う。趣味は将棋で、振り飛車派であるが穴熊に弱い。
事務所名:ときわ法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-law.jp/