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GT300に挑むCarGuy Racingと木村武史。まずは「きちんとレースを成立させていくことが大切」

2018年01月23日 23:11  AUTOSPORT web

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NSX GT3とともにスーパーGT300クラスに挑戦する木村武史。会社経営者でもあり、最速のジェントルマンドライバーを目指す。
1月21日、富士スピードウェイで注目のGT3カーの一台、ホンダNSX GT3がシェイクダウンテストを行った。走らせたのは、2018年からスーパーGT300クラスに参戦を表明したCarGuy Racingだ。チームはなぜNSX GT3をチョイスしたのか、そしてなぜスーパーGTに挑むのか。チーム代表で、ドライバーを務める木村武史代表に話を聞いた。

 CarGuyは、会社経営者でもある木村代表が『自動車冒険隊隊長』として「クルマのもつ、まったく新しい世界観を創出」するべく立ち上げたもの。フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンといったスーパースポーツを、非日常的なシチュエーションで走らせた動画を多数公開し話題となっった。また、2015年にはTOKYO MX系でテレビ番組も放映されている。

 一方で木村は、ドライビングの師でもあった織戸学の誘いもあり、2015年からランボルギーニ・スーパートロフェオに参戦を開始。それが「スリックタイヤでの初めてのレース」であり、本格的なレース参戦は「まだ2年少々、3年に入っていない感じですね」だという。それが、CarGuy立ち上げから4年、木村にとってはレースを始めて3年に満たない段階でのスーパーGT参戦となる。

 木村にまずスーパーGT参戦を決めた理由を聞いたが、実は「NSX GT3を先に買ったのがありきなんです」という。購入を決めた理由は「私はランボルギーニのイメージがありますが、別にメーカーにこだわっていたわけではないんです(笑)。NSXをオーダーしたのは、クルマのオーナーとして、今まわりで走っているクルマより、初めて出るものに乗りたい……という願望があったからなんです」というのが、スーパーカーによるエンターテイメント集団であるCarGuyの代表らしい。

「それに何より、カッコいいですからね」

■ル・マンを目指すために、どんどんレースに出よう
 NSX GT3を購入し、日本国内で出場できるのはGT300、スーパー耐久ST-Xクラス、ブランパンGTシリーズ・アジアがある。そこでスーパーGTを選んだのは、「チームから言われたのが大きい」と木村は理由を語ってくれた。木村は、将来的な目標としてル・マン24時間挑戦を掲げる。そのために、周囲に相談したところ、スーパーGTに出るのがいい……という結論に至ったのだ。

「正直に言ってしまうと、まわりに流されて……という感じですね(笑)。よもやスーパーGTに出るなんて思ってもみなかったです。本当はスーパー耐久や鈴鹿10時間に出るつもりだったんです」と木村は言う。

「私は練習では、ある程度プロと遜色ないタイムで走ることはできています。ただレースになるとそこまで行ききれない。でもそれを克服するために、どんどんレースに出ましょう、ということですね。なのでスーパーGTがすべてではなく、いろいろなレースに出て、シリーズで戦うことをやりましょうと」

「そこで織戸さんをはじめ、まわりに相談したり、最終的にホンダさんともお話をして、出ることになりました。スーパーGTは参戦枠の問題もあるので、簡単に出られるとも思っていなかったんです。そこで『エントリーを申し込むだけ申し込もうか』と。そうしたら、うまく参戦枠が空いたということですね」

 こうしてスーパーGT参戦が決まった今季の体制についてはCarGuy Racingは、ドライバーとして横溝直輝、木村、そしてマレーシア人ドライバーのアフィック・ヤジッドのリザーブとしての起用が決まった。昨年ブランパンGTアジアで横溝と組んでいたケイ・コッツォリーノは監督を務めることになる。

 この陣容については、「アフィックはすごく速いです。彼をスタンバイさせているのは、もし私が万が一、(スーパーGT300初参戦ドライバーに課せられる)ルーキーテストに受からなかった場合を想定しています」と木村は語った。

「ケイも速いドライバーですし、ブランパンGTシリーズ・アジアで勝利に貢献してくれましたが、彼はランボルギーニのジュニアドライバーなんです。彼が監督なのはそういう理由ですね。なので、ケイとはスーパー耐久にランボルギーニで出ます」

 木村とコンビを組む横溝も、「一年間乗っていないでまわりから見て、スーパーGTはこんなに魅力があるカテゴリーなんだ、と再確認できました。こうしてチームに雇っていただけることなったので、僕の経験を活かして貢献していきたいと思います」とひさびさのGT300復帰を楽しみにしているようだ。ちなみに横溝は意外かもしれないが、ホンダ車でのレース参戦は初となる。

■「勝ちにいくというよりも、まずは周囲に迷惑をかけないように」
「僕の役目は監督もやりますが、木村さんのコーチ役の方が大きいかもしれないですね。木村さんを“最速のジェントルマンドライバー”にすること」とコッツォリーノが語るように、今季CarGuy Racingの目標はスーパーGTというプロが戦う舞台で、木村がレースでの経験を積み、将来の夢に向けてステップアップさせることにある。

「私自身も初めての経験ですし、ジェントルマンドライバーであることも自覚しています。そのなかで参戦させていただくという気持ちでいます。なので、勝ちにいくというよりも、まずは周囲に迷惑をかけないように、きちんとレースを成立させていくことが大切です。その上でポイント獲得だったり、あわよくば成績が残ればいいとは思っています」と木村も語っている。

「いずれにしろ、スーパーGTに挑戦する……という意識はあまりなくて、スーパーGTという日本最高のGTレースに一緒に参戦させていただいて、CarGuyという知名度を一緒に高めていくような、シナジー効果が得られればと思っています」

「それにCarGuyはどちらかというと、自動車オーナーの方がファンとして多いので、レースに興味がない方も多いんです。そういった方々がレースに興味をもっていただき、スーパーGTのファンの方たちに支持してもらえるようなチームになれればと思っています」

 シェイクダウンの様子を端から見ていたが、昨年からスーパー耐久も戦っていること、富士を舞台にトレーニングで多数の周回をこなしていることからも、木村はとてもレース歴3年目とは思えぬ、しっかりとした速さやフィードバックをもっていると感じた。

 ただ、GT500との混走があり、世界的に活躍するプロがそろうスーパーGTのなかで走ることは、やはりハードルが高い。まずは木村の言うとおり、ルーキーテストをきちんとパスすることが重要だろう。その点では、「すごくフレンドリーで乗りやすい」と木村が評するNSX GT3の存在は心強いかもしれない。

 スタッフをはじめレースの経験は豊富ではあるものの、CarGuy Racingと木村の挑戦はある意味、昨今のスーパーGTでは少々異色。NSX GT3とともに、どんな存在になってくれるのか、今季のGT300で楽しみな存在なのは間違いないだろう。