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泉里香、芳根京子の強敵に? ドラマ『海月姫』映画版と違う演出にも注目

2018年01月23日 13:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 数字的には苦い出足となった『海月姫』ではあるが、スピード感あふれる展開と個性の強いキャラクター描写は、第1話だけで息切れすることなく、第2話でもしっかりと保たれている。やはり『リーガルハイ』などの人気作を生み出してきた石川淳一の演出の安定感は、こちらの期待を遥かに上回ってくるものがある。


参考:『海月姫』第2話フォトギャラリー


 「着るものひとつで人間これだけ変われるんだよ!」や、「おしゃれは強く生きるための武器」など、瀬戸康史演じる女装男子・蔵之介のココ・シャネルさながらの名台詞を受けても揺るがないほど強い個性を放つ「天水館」のメンバーたち。第1話で主要な登場人物紹介を済ませた本作は、再開発計画を阻止するために「天水館」を買い上げようとするメインストーリーに突入した。


 ふとしたきっかけで出店したフリーマーケットで、月海(芳根京子)が作ったクラゲのぬいぐるみが売れたことをきっかけに、引きこもりニートだった「天水館」のメンバーたちが、自らの手で収入を得るという大きな一歩。これがこの後のドラマの展開を大きく動かしていくのである。


 そんな第2話でひときわ異彩を放っていたのは、天水地区の開発のためにあの手この手で暗躍するデベロッパーの稲荷翔子を演じる泉里香だ。第1話では喫煙所で電話しているだけでその役柄のパワフルさを見せつけた彼女は、今回は住民説明会の場面から衝撃的ともいえる顔芸を繰り出す。


 「天水館」に乗り込んできたときの引きつった表情のわかりやすさに、工藤阿須加演じる蔵之介の弟・修を口説き落とそうと催眠術を駆使したりと、終始インパクトの強い芝居で見事なシーンスティーラーぶりを発揮していく。少なくとも現時点では、月海以外の「天水館」のメンバーを凌駕する存在感。これは本作でコメディエンヌとしての新境地を見出そうとしている芳根京子にとって、思いもよらぬ強敵の出現かもしれない。


 さて、その芳根演じる月海は、今回は喜劇的な演技よりも修への恋心に戸惑う、ぎこちなさすぎる乙女心にフォーカスが当てられた印象だ。住民説明会から逃げ出したあと、置き忘れた傘を取りに戻ると、修が稲荷と相合傘をしているのを目撃。スローモーションで大粒の雨ごしに見せる切ない表情に、ずぶ濡れのまま部屋で立ち尽くす姿。また、2人の関係を疑って、蔵之介に泣きつく場面での水槽越しのシーンは実にセンチメンタルに切り取られている。


 しかしながら、クライマックスで彼女がクラゲのようなドレスを着る姿を蔵之介に見つかる場面は、今後の展開を左右させる重要な場面だけに、もう少しじっくりと溜めた見せ方をしてもよかったのではないだろうかと思えてしまう。映画版では2階の部屋の窓辺に立つ月海(そもそもドラマ版では月海の部屋は1階になっているのだが)を、蔵之介が下から見上げるという構図の巧妙さと蔵之介の目線を使うことで、すごく神秘的に映し出していた。


 それとは対照的に今回のドラマ版では、女装をせずにふらりと天水館を訪れた蔵之介が、他のメンバーに見つかりそうになり月海の部屋に逃げ込むことで、突発的な雰囲気が漂う。とはいえ、ここまでの流れを踏まえると、あえて象徴的な映し方を避けて、物語の勢いを絶対に緩めようとしない狙いがあるのかもしれない。この勢いを維持したままラストまで駆け抜けたら相当密度の濃い作品になるのではないだろうか。(久保田和馬)