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ユニゾン、People In The Box、fox capture plan…トリオバンドの魅力を再確認できる新作

2018年01月23日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ギター・ベース・ドラム、もしくはピアノ・ドラム・ベース。必要最小限の楽器で構成されるトリオバンドの音楽は、音数が制限されるからこそ生まれるアイデア、そして、演奏者のセンスとテクニックをダイレクトに感じることができる。今回は現在のロック、ジャズのシーンを代表するトリオバンドの新作を紹介。それぞれの作品に息づく独創的なアンサンブルをじっくりと楽しんでほしい。


(関連:UNISON SQUARE GARDENが追求する、3ピースバンドの可能性ーー最新曲から考察


■UNISON SQUARE GARDEN『MODE MOOD MODE』
 配信シングル「Silent Libre Mirage」、シングル「10% roll, 10% romance」「Invisible Sensation」「fake town baby」以外の収録曲は、“楽曲のタイトル、曲順を発売日まで伏せる”という仕掛けが施されたUNISON SQUARE GARDENの7thアルバム『MODE MOOD MODE』。思い切りポップに振り切ったナンバー、スカ、ロカビリーのテイストを反映させた楽曲まで、このバンドの幅広い音楽性がたっぷりに体感できる作品に仕上がっているが、その中軸を担っているのはメンバー3人の高度なアンサンブル。“そんな難しいリフを弾きながらよく歌えるね!”と言いたくなる斎藤宏介のギターとボーカル、緻密に組み立てられたコード構成をド派手なフレーズで体現する田淵智也(Ba)、そして、フュージョン的テクニックとロックのダイナミズムを併せ持った鈴木貴雄(Dr)。トリオバンドとしてのさらなる充実ぶりが感じられるのも、本作の大きな魅力だ。


■the peggies『super boy! super girl!!』
 メジャーデビュー以降にリリースしたシングル曲「ドリーミージャーニー」「BABY!」はthe peggiesのポップサイドを強調した楽曲だった。J-POPリスナーにもアピールできるポップな曲はもちろんこのバンドの武器だが、ライブにおけるロックバンド然とした姿とのギャップがあったのも事実。その距離を埋めてくれるのが本作『super boy!super girl!!』だ。特にロック的なパワー感を打ち出した1曲目の「GLORY」、2曲目の「ネバーランド」には、北澤ゆうほ(Vo / Gt)、石渡マキコ(Ba)、大貫みく(Dr)の音がぶつかり合うことで生まれる強靭なグルーヴが渦巻いている。中高生の頃からライブハウスに通い、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、BLANKEY JET CITYなどを敬愛する3人のルーツが感じられる意欲作と言えるだろう。そう、ロックとポップの絶妙なバランス感覚こそが、彼女たちの本質なのだと思う。


■People In The Box『Kodomo Rengou』
 変拍子(ときどきポリリズム)を交えたリズム構成、転調と不協和音を効果的に取り入れたコード進行、トリッキーかつドラマティックなメロディライン、そして、ストーリー性に頼らず、刺激的なイメージをカットアップするような歌詞。デビュー10周年のアニバーサリーイヤーを締めくくる約3年半ぶりのオリジナルアルバム『Kodomo Rengou』は、People In The Boxの独創性を徹底的に突き詰めた作品となった。「Kodomo Rengou」というタイトルは言い得て妙、子供たちが自由に遊びまくっているようなアイデアが散りばめられた本作は“バンド”“ロック”“音楽”という概念を揺さぶる圧倒的な刺激に満ちている。


■Schroeder-Headz『HALSHURA』
 ここからはジャズを軸にしたトリオバンド2組の新譜を紹介。まずは佐野元春、柴咲コウ、Coccoなどのサポートでも知られる鍵盤奏者、渡辺シュンスケによるプロジェクト“Schroeder-Headz”の約2年ぶりの新作『HALSHURA』。人力ドラムンベース的なビート、エフェクティブな音像のトランペットをフィーチャーした「n°33」、80年代後半のパット・メセニーを想起させるメロディが印象的な「ハルシュラ」など、様々な時代のジャズのエッセンスを自由に取り込んだ楽曲が楽しめる。映画『ハローグッバイ』の主題曲に坂本美雨が歌詞を付け、歌唱を担当した「手紙が届けてくれたもの feat. 坂本美雨」、『深層NEWS』(BS日テレ)2016オープニングテーマで、プラネタリウムライブにて「全天周」映像とのコラボレーションした楽曲「HORIZON」も、アルバムに彩りを与えている。


■fox capture plan『KOTODAMA -この声をきみに Soundtrack-』『SEPT』
 続いてはfox capture planの新作『KOTODAMA -この声をきみに Soundtrack-』『SEPT』。ドラマ『カルテット』(TBS系)の劇伴を担当したことで注目を集めた彼らはここ数年、堰を切ったような多作ぶりを発揮しているが(2013年から2017年の間にフルアルバム6作を発表)、今回は新たに手掛けたTVドラマの音楽集を2枚同時リリース。NHKドラマ『この声をきみに』楽曲集『KOTODAMA -この声をきみに Soundtrack-』には、エモーショナルな旋律とクラシカルなストリングスが調和した「Talk Me Tender」、レゲエ系のビートとディストーションギターが絡み合う「CAPITAL CHILD」などを収録。そして、オトナの土ドラ『オーファン・ブラック~七つの遺伝子~』(フジテレビ系)の楽曲を集めた『SEPT』には、ノイジーなデジタルサウンドとジャズ、ロックを組み合わせたナンバー、静謐なピアノのフレーズを軸にしたバラードなどが収められている。あらゆるジャンルを取り入れながら、ピアノトリオの可能性を大きく広げる作品と言えるだろう。(森朋之)